りぅの風森

第12話

完全版 DragonStory

第12話 -火の精霊-

前回、水の精霊ウンディーネと無事に契約をかわしたレスクはアルカティス地方に眠る他の精霊と契約を交わすため
次は東にある火山、アルカティス火山へ目指そうとしていた。
しかし、そこへ行くにはまだ砂漠化していない森を抜けなければいけなかった。
その森の名は『迷いの砂森』砂漠地方で有名なアルカティスだが、まだ緑がある場所があったのだ
地面は土ではなくほとんど砂で埋め尽くされており、どうして森が生い茂ってるのかよくわかっていない。
しかも迷いの砂森と呼ばれるだけはあって入ったら最後、無事に出てこれるかは怪しい。
だが、レスクは次の精霊に会うためにこの森を通り抜けなければいけなかった。
その前に森の抜け道を知っている人がいるかもしれないと森から少し離れたところにある町サンディスへと足を運ばせた。
砂漠の町とあって、どこもかしこもおなじに見える
レスクは迷わず酒場へと足を向けた
酒場には客が2人しかなかった、繁盛してないのだろうか
1人は人の目を気にしているのか全身をローブで包み、もう一人はターバンを巻いた薄着の男性がいた
ターバンの男は店主から料理を渡され、がっつくように食べているが
ローブの男は酒を片手になにか思いつめている様子だった。
レスクはターバンの男に話しかける
「おい、食事中済まないがこの先にある砂森の抜け道を知らないか?」
ターバンの男は食事する手を止めたかと思うと無言で向こうに行けと手を振って相手にしなかった
レスクは仕方なくローブの男の隣に座る
「お客さん、何か飲んでいくかい?」
同時に店主が話しかけてきた、特に喉が乾いていたわけではなかったがとりあえず水を頼む
すると隣にいたローブの男がいきなり話しかけてきた。
「おやぁ、レスクの旦那じゃないですかぁ、どうしたんですかこんなところで?」
やけにテンションの高いローブの男、話し方から察するにレスクのことを知ってる様子だ
しかし、レスクはそいつのことを知らない
「誰だ、お前は・・・・どうして俺の名を?」
「あちゃー 忘れちゃいました? トゥーイですよ トゥーイ、この名前に聞き覚えがあるでしょう?」
ローブの男はトゥーイというらしい、ローブで素顔を隠していたがレスクを前にしてその素顔を露わにする
片目を眼帯で隠しもう片方は紫色の瞳でレスクを捉えている
とはいえレスクは彼を知らなかった
「そんな名前聞いたことがないぞ、それに俺は旦那と呼ばれる年ではないしな 人違いじゃねーのか?」
レスクの反応にハッとするトゥーイ
「・・・・どうやら私としたことが 時間軸を間違えてしまったようですね、通りで旦那が私を知らないわけだ」
「何をわけのわからないことを言ってる?」
「これは失礼、私は未来からやってきたハンター、時の勇者トゥーイです」
「は? 時の勇者? 未来からきたハンターだと? 砂漠の暑さで頭がいかれちまったのか」
「・・・・。『この時代の旦那は聞き分けが悪いですねぇ』」
「そんなことより森の抜け道を知りたい、お前知ってるか?」
「分かりました教えましょう、まずは・・・・」
トゥーイはレスクに森の抜け道を教えた。
「それは本当だな?」
「信じないなら最初から聞かないでくださいよー」
「それもそうだな、ありがとう、ぇっと・・・トゥーイだったかな?」
「では私はこれで失礼しますよレスクの旦那」
「まて、お前は本当に未来から来たのか?」
「・・・・・あなたは国王になられる方だ、その時また私はお伺いするでしょう、なので詳しい話はその時まで内緒ですよ」
そういうとトゥーイの姿は突然消えた
リワープの魔法だろうか、しかしレスクはトゥーイの存在に何かを感じ取っていた
俺が国王になるだと・・・・そんな馬鹿な、そんなことより今は精霊との契約が重要だ
レスクはそう思い、迷いの砂森へと足を運ばせた
2週間が経っただろうか
スルリクの町を目指して船旅を続けていたガリシィルは
ようやくスルリクの港町が肉眼で見えるとこまで航海を続けていた
船の乗組員は俺達に襲いかかる様子もなく、何事も無く港へ辿り着けそうだ。

「いよいよ北の大陸ですね」港町の方を眺めるシヴァ
「ところでアルカディアの洞窟ってどこにあるか知ってるか?」
ガリシィルは兄、シリュウから北の大陸にあるとしか聞いておらず正確な場所は聞いていなかったのだ
「さぁ?、初めて来るからわからないよ」とカイ
「俺達は東大陸の人間だ、知るはずがないだろう」
イチピモ達も首を振る
当然周りの奴も知るはずもなかった
「ガリシィルさんは北の大陸へ来たことはないのですか?」
「確かに俺は一度来たことがあるが、洞窟については知らないんだ」
「それなら港に着いたら酒場に行ってみましょう、何か聞けるかもしれません」とシャルル
「それもそうだな」

しばらくすると港に着き
無事に船旅を終えたガリシィル一行、町の方へ向かうとなんだか賑わっている
それはまるでバハムートの侵略とは無縁のような賑わい方だった
町には人と竜、獣人の姿も目に止まり 異種族の交流も盛んな様子である
そんな光景を目の当たりにしたイチピモ達は驚いた
「嘘だろ、俺達の大陸ではありえない光景だぜ」
「東大陸には獣人はいないですからね」
「そんなことより酒場に行こ・・・・・ん?」
ガリシィルの視線に映ったのは1匹の竜だ
緑色の髪をしており、ガリシィルと比べるとなんだか胸があるように見える
ガリシィルがその竜を見つめているとカイが茶化した
「おいどうしたシィル、もしかしてあの竜に惚れちまったのか?」
「バカ言え、そんなんじゃないあいつは・・・・・」
すると向こうもガリシィルの存在に気がついたらしい
いきなり大声で声をかけてきた
「ガリシィルッ!! ガリシィルじゃない!?」
「り、リュリカっ・・・・・」
最悪だ、今はバハムートよりも最も会いたくない人物だ
こいつはリュリカ、火竜族の1人で幼い頃の友達・・・・と言うべきなのだろうか
俺がバハムートの元を離れてからは一切会っていなかったのだが
向こうは成長した俺を一目見て分かったらしい
「あんた、今までどこにいたのよ、私の約束をすっぽかして居なくなっちゃうだもの、何かあったんじゃないかって心配だったのよ?」
「これにはいろいろと訳があってだな・・・・・」
「シィル、約束って?」
「お前たちには関係ないことだ」
「ま、いいわ、無事に生きていたみたいだし、それよりなぁにあなた、人間なんかとつるんじゃって、それにその傷は?」
いろいろ聞いてくるリュリカ
俺は頭を抱えた
「これはバハムートに・・・・」
「バハムート!? あんた本当にバハムート逆らったわけ? 馬鹿じゃないのっ 自分の親でしょ?」
「うるせーっ、俺の勝手だろうがっ」
「とにかく、その傷を私に見せなさい、まだ治ってないみたいだし」
リュリカの発言に驚く皆
「え、ガリシィル、その傷はまだ治ってなかったのかい!?」
「・・・・・」
そっぽを向いて黙るガリシィル
「ほら、どうしたのよ 早く見せなさいよっ」
ガリシィルの腕を引っ張るリュリカ
「ほっといてくれ」
「ダメよ、私はあれから医学の道に進んだの、放ってはおけないわ!、それも何か?、私の聖戦魔法で焼かれたいわけ?」
リュリカの右手で突然炎が浮き上がり、今にもガリシィルに向けて放ちそうだ
そうだ 思い出した、彼女は聖戦竜フレアの子孫なのだ
しかも幼い頃から聖戦魔法を継承しており、何かある度に辺り構わずすべてを焼きつくしてきた。
そんな彼女だからこそ、ガリシィルは一番会いたくなかったのだ。
とはいえそれは昔の話だ、心身共に成長したのはお互い様 向こうもなりふり構わず魔法で燃やし尽くす気はなさそうだ
昔のままなら今のやりとりでとっくに町ごと燃やされていただろう。
「見るだけ無駄だ、この傷はお前の治療でも治らないさ」
「いいから見せなさいよっ!」
リュリカはガリシィルを強く引っ張り宿屋まで連れて行った
その様子を見ていたイチピモ達は
「なるほど、約束ってもしかして・・・」
「兄さん言わずとも分かるぜ、いいねー青春だねぇー」とジェイド
「ガリシィルは彼女を嫌がってるように見えたけど?」
「イチピモ様、ここはスルーしましょう」
「そんなことより私達も後を追おう」とハボナ
イチピモ達もすぐにガリシィルとリュリカが入っていった宿屋へ向かった
ベットに寝かせつけられ傷をじっくりとリュリカに診られたガリシィル
するとリュリカの口からはとんでもない言葉が出てきた
「ガリシィル、あなた・・・・・体がもう・・・・・」
「・・・・だからほっといてくれと」
「どういうことだい?」
カイがリュリカに尋ねる
「彼の傷はかなり昔のものなんだけどロクに治療してなかったみたいだわ、内臓にも深刻なダメージがあるみたい 本来なら激痛で立てないはずよ」
「なんだって!?」
リュリカの言うとおりだ、自分がなぜこの状態で生きているのかも不思議である
とはいえラジェスのもとに拾われた時にはすでに分かっていたことだ。
「俺は平気だ、自分のことは自分がよくわかっている」
「あなた痛みは感じないの?」
「お前が言うほど大げさな痛みはないさ」
「ほんとかしら、魔法でも治らないなんて致命傷でしか起こりえないことよ? 残念だけど私の力でも治せないわ」
「これはバハムートが付けた傷だからな、自分でも何故生きているのか不思議なくらいだ、それよりリュリカ・・・・・」
「何?」
「アルカディアの洞窟を知らないか?」
ベットから起き上がりリュリカに尋ねるガリシィル
するとリュリカは口を開いた
「アルカディアの洞窟? あそこは誰も立ち入ることが出来ない洞窟よ、なんでも強力な結界が張られているらしいわ」
「場所は? 場所は知っているのか? 教えてくれそれはどこにあるんだっ」
リュリカの肩を思わず掴むガリシィル
いきなりで驚くリュリカだったがすぐに口を開いた
「場所までは知らないわ、何か用があるの?」
「あぁ、なんでもそこにアリュギオスの聖戦器が眠ってるらしいんだ、俺はそれを手に入れるためにこの大陸にやってきた」
「・・・・そう、もしかしたらオードさんなら知ってるかも、彼は聖戦時代の数少ない生き残りよ」
「そいつはどこにいるんだ?」
「まだドラゴンズスピークにいると思うわ、今頃、海鳴りの洞窟で何やら修行してるんじゃないかしら」
「なら次の目的地はそこだな」
「ちょっとまってください、聖戦時代の生き残りって・・・・一体その人は何歳なんです?」
黙って聞いていたシヴァが割って入る
すると他のメンバーも聞きたそうな顔をしている
「そうだぞ、聖戦時代といえば今から数千・・・いや数万年、下手すれば数億年前だとも言われてる そんな時代の生き残りって一体」
「イチピモ、オードってやつはおそらく人ではないのだろう、そうだろリュリカ」
「えぇ、あなたの言う通り竜族よ」
「竜族の寿命って一体・・・・・」考えこむカイ
「俺達人間の寿命はせいぜい長くて100年ってとこだっていうのに次元が違いすぎるぜ」とジェイド
「人間でも寿命は伸ばせますよジェイドさん、魔導を学べばそれだけ長く生きられる世界ですから」シヴァは言った
「とは言っても本人の所有するマナにも限界があります、魔導を学んでも素質のない人は本来の寿命で一生を終えるでしょう」
「シャルル、それだと俺は一番早く死ぬことになるんだな」
「イチピモ様、気を落とさないでください、モフィリス様も魔導の素質はありませんでしたが竜の血を飲んで長生きはしましたし」
「はっ、そうだガリシィル、お前の血を飲ませてくれないかっ」
「バカ言え、竜族の血で長生き出来るって言っても それはエイシェントドラゴンの血だけだ、俺やリュリカの血を飲んでも何も変化は起きないぞ」
「そ、そうなのか?」
「ガリシィルの言うとおりね、そのため多くのエイシェントドラゴンが命を落としたわ、人間たちの手によってね」
「・・・・・なんかごめんよ」謝るイチピモ
「構わないさ、狩られる方も悪いし俺達には関係のないことだ、それより次はドラゴンズスピークに向かうぞ」
「で、それはどこに?」
「ここから東にある山脈地帯よ、それよりガリシィル」
「・・・なんだ?」
「私も貴方達に付いて行くわ」
「はぁ?」
「あんた、バハムートを倒すつもりなんでしょ? それなら私も協力するわ」
「お前、本気で言ってるのか?」
「忘れたの? 私は聖戦竜フレアの子孫、バハムートの時代は終わりだってことを私の聖戦魔法で思い知らせてあげるのよ」
「・・・・それは頼もしいが、味方ごと攻撃する気か? お前の聖戦魔法はすべてを焼きつくす流星の魔法だっただろ」
「何よそれ、私が昔のままだと思ったら大間違いよ、確かにこの魔法は流星を降らせるけど、ようやくコントロールできるようになったのよ」
「ほんとかよ・・・・頼むからできるだけ使うなよ」
「なんですってー!?」
「こりゃあすぐに破局だな」
ジェイドはガリシィルとリュリカのやりとりを見て言った
そうしてガリシィル達に新たな仲間リュリカが加わり、2匹と7人の不思議なパーティが出来上がった
彼らがこれから目指すのはここから西にあるドラゴンズスピーク
竜族達が住む山脈地帯である
そして、迷いの砂森にやってきたレスクは
サンディスの町で聞いた通りに森の中を突き進んでいく
その途中、今まで姿を消していたリルが傷を完全に癒やして姿を現した
「レスク、本当に大丈夫なの?」
「何がだ?」
「その・・・さっきから同じ場所を通っている気がするんだけど?」
「そんなはずはない、俺は町で聞いた通りに進んでいるつもりだ」
レスクは町で会ったトゥーイという謎の男から森の抜け道を教えてもらっていた
その通りに森の中を進んでいるのだ。
でもリルはおかしいと感じてる様子、現にレスクは同じ道を何度も通っていた。
「ほんとにそのルートでこの森を抜けれるのかなぁ?」
「どういうことだ」
「この世界には迷いの森と呼ばれる地名はもう一箇所あるんだ、もしかしたらそっちの抜け道を教えてもらったのかも」
「・・・・・・ソ、ソ、ソ、そんなっ そんなっ そんな・・・ばかなっ」
うろたえるレスク
するとリルは思い出したかのように森の泉のことを話し始めた
「そういえばこの森にはガルーダっていう鳥の賢者さんがいるんだ、もしかしたらこの森の抜け道を知ってるかも」
「鳥の賢者? なんだそいつは精霊なのか?」
「ううん、文字通りの鳥だよ、でも僕と同じリジェルで生み出された鳥なんだ、彼の場合は動物に知能を与える実験でどうとか」
「そのガルーダってやつはなんでこの森にいるんだ? リジェルに作られたならリジェルのアジトにいるんじゃないのか?」
「彼も僕と同じ脱走者だからだよ、僕は召喚石という重石があったから逃げれなかったけど彼には縛りはないからね」
「そうか、それでそいつはどこに?」
「たしか湖がある場所だよ、この森のどこかにあるから探してみよう」
「湖を探している間に森を抜けれたらいいんだがな・・・・・。」
「その時は喜んでいいんじゃないかなぁ」
「やれやれ、日が暮れる前には森を抜けたいぜ」
レスクは額の汗を拭うと再び森のなかをさ迷った
結局、トゥーイが教えてくれた森の抜け道はこの森の抜け道ではなかったのだ。
今度あったら一発どついてやる と決心するのもつかの間、レスクは唐突に契約した精霊ウンディーネを呼び出す

「我が呼びかけに答えよ、ウンディーネ」

水気のない場所なのに地面から突然水柱が突き上げウンディーネは姿を現す

「精霊をこんなところで呼び出してどうするの?」
「ウンディーネは水の精霊だ、この辺の湖を探知できるはずだ、俺としたことがすっかり忘れていたぜ」
「レスクよ、我に何を命ずる?」
「ウンディーネ、この辺に湖があると思うだが、その場所を把握できるか?」
「なんだ、戦いのために呼び出したのではないのか?」
「悪いがそうだ、で、見つけれるか?」
「造作も無い、ここからあっちの方へ進めば湖がある」
「流石は水の精霊様、ありがとう、もう消えていいぞ」
「・・・・・フンッ」
機嫌の悪そうな返事をするとウンディーネは消えてしまった
「やったねレスク、これで湖まで一直線だよ」
「リル、喜ぶのはまだ早い、俺達は森の中で迷っているんだ、湖の場所を把握しただけで森を抜けれるわけじゃない」
「まぁ、そうだけど、とりあえず湖に行ってみようよ、ガルーダにあわなきゃ」
「そうだな」
リルとレスクは湖を目指して足を歩める
ウンディーネの言った通りだ、言われた場所の方へただひたすら歩くだけで湖が姿を現したのだ
湖の前に巨大な大木が生えていたが、すでに枯れている様子
そこに俺達が会おうとしていた奴が羽休めをしている
「お前がガルーダか?」
いきなり話しかけたせいか、そいつは翼をばたつかせた
「人間か?私のことを知っているとは、リジェルの手の者か?」
「違う、俺はリジェルの手の者でもなければ人でもない、神子だっ」
「神子族か、私が喋っても驚きもせんとはな」
「ガルーダさんお久しぶりです」
「リルか、久しいな、神子族と一緒ってことは・・・・拾われたか」
「リジェルの者に襲われているところを助けてもらいました」
「それよりガルーダ、お前に頼みがある」
「私に頼みとはどうした神子」
「実はこの森で迷ってしまって抜け道を教えてもらいたいのです」
リルが代わりに説明する
するとガルーダは片方の翼を広げた
「この先をまっすぐに行くといい、しばらくすればサンドアーヌの町が見えてくるだろう」
「ありがとうガルーダ、行こうレスク、この森を抜けれるよ」
「あぁ、休んでいるとこを邪魔したなガルーダ」
「気にすることはない、それより神子よ、近いうちにアルカティスは危機にさらされる、早く戻るといい」
「どういうことだ?」
「竜族が神子と手を組んだのは知っているな?」
「あぁ、国王のセイファがバハムートに力を貸すとは聞いた」
「竜族の狙いは神子と手を組むことではないのだ、精霊兵器を手に入れた後は裏切るつもりだ」
「なんだと? どうしてそんなことが分かる」
「鳥達から聞いたからだ」
「・・・・・だが俺はこの地方の精霊と契約を交わすまでは帰る気はない」
「ということはアルカティス火山やスノーキャッスルに向うのだな?」
「まずはイフリートに会いに行く、セルシウスはその後だ」
「ならば私が直接火山に送ろう」
「どうしてそこまでする? 俺とあんたは今さっき会ったばかりだ」
「リルを助けてくれたお礼・・・っとでも言っておこうか、時間はないすぐに送る」
するとガルーダは翼を広げた と同時に 羽毛が辺りに散らばる
その羽毛はレスク達の周りを回り始め、天へと駆け上がった
「これは!?」
「私が人語を話せるだけだと思っていたのか神子よ、私は賢者・・・・これぐらいの芸当は容易い」

テレポーテーションッ!

レスクとリルは光となりどこかへ飛ばされた
「神子よ、この先辛いことがあるだろう、だがそれは避けることの出来ない運命だ」

レスク達が飛ばされた先はアルカティス火山、それも山頂付近の火口の手前だ、目の前には石碑が置いてある
「転送魔法か、鳥のくせにスゴイ芸当だ」
「そんなことよりレスク、早く済ませよう、すごく・・・・暑い」
「そうだな、これじゃ麓から登ってたんじゃ死ぬぜ、丁寧にも石碑の前に送ってくれたみたいだしガルーダには感謝しなきゃな」
レスクは石碑に歩み寄ると手をかざした

我が呼びかけに答えよ!
我が力、解放せよ! 灼熱と業火の意思よ!

すると火口から火柱が立ち上がった
それと同時に大地が揺れた
「噴火ぁ!?」
「違う、イフリートが姿を現したんだ」
火柱の中から火の玉が飛び出してレスクの前で止まる
「あん? 火の玉だと?」
「俺の名はイフリート、俺を呼び出したのはお前か?」
火の玉の状態でレスクに話しかけるのはイフリート
「俺は神子族のレスクっ!!お前と契約をしたい・・・・。イフリート、真の姿を現せっ!」
「よかろう、・・・・・お前の力、俺に見せてみろ、資格があるかどうか確かめさせてもらう」
すると火の玉は形を変え、ガーゴイルのような形へと姿を変える
背中から炎の翼を生やし、燃える手足、そして口からはみ出る鋭い牙は灼熱の赤みを帯びている
「リル、火口に落ちたらシャレにならねぇ気をつけろよ」
「大丈夫、僕は死にそうになったら勝手に消えるから、それよりレスクの方が心配だよ」
「なぁに大丈夫さ、行くぞ」
レスクは腕をクロスに振るうと閃光を放つ

-グランドクロス-

X字の光がイフリートにめがけて襲うが
イフリート火柱を上げてそれをかき消す

『焼き尽くす、紅蓮の炎』

イフリートが手をかざした
すると手足の炎が一箇所に集まり、それが分散する火炎の雨を降らした
フレイルを振るいそれらを弾くレスク
「熱っ・・・・」
だが、しばらくすると熱を帯びたフレイルは持ち手も高温になってしまった
金属類特有の伝導熱でもはや使いものにならない
「レスクっ」
「気にするな武器が使えなくなっただけだ」
ここからは魔法合戦、リルに攻撃のチャンスは訪れない
それどころか攻撃手段がない、リルには遠距離攻撃がないのだ
「ダメだレスク、僕は力になれない」
「だろうな、お前は一旦消えていろ、俺が一人で何とかする」
「分かったよごめん」
リルは姿を消した
レスクはイフリートの攻撃を軽々と避け、魔法で反撃する

-エルファイヤー-

それはイフリートに直撃したが
イフリートには無効、というか逆に力を与えた 手足の炎に勢いが増す
「俺には火属性の魔法は効かぬぞ」
「やっぱりダメか、ならば・・・・」

レスクは右手の人差し指と中指をクロスさせ額に当て目を閉じた

-ダークシェメシュクァマル-

レスクは目を開けた
その瞬間、レスクに黒いオーラが身にまとう
「闇の衣か、神子にそんな力があるとはな」
「俺には何故か女神と悪魔が憑いている、気は進まないが悪魔の力でお前を倒す」
「ならば地獄の炎で焼きつくしてやろう、悪魔の力とやらどれほどのものか」

-ヘルファイヤー-

火口からどす黒い炎が湧き上がり、それがレスクへ襲いかかる
レスクはそれをもろに直撃した
「灰になったか神子よっ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
黒い炎の中でレスクが叫ぶ
すぐにその炎をかき消し地面に手をつくレスク
その途端に地面に亀裂が入り、炎が舞い上がった
「ハァハァ・・・」
「やるな、しかし息が荒いぞ、大丈夫か?」
「なに悪魔の力は体力をかなり消耗するんでな・・・・今だっ」

-ダークバインド-

イフリートの足元から黒い帯が伸びてイフリートを捕らえる
レスクの身に纏っていた闇のオーラの一部が地面を伝ってその帯を形勢していた
「なっ、いつの間に」
「闇に飲まれろっ」

-リジェントゴースト-

捕らえる黒い帯から死者の魂が無数に現れイフリートを襲った
生気を削る闇の魔法、無論レスクの体にもその負担はのしかかる
「ハァハァ・・・」
レスクの黒いオーラは消えた、地面に両膝を落とし這いつくばるレスク
イフリートもまた火口の中へと沈んだ
しばらくすると再び火口から火柱が上がる

「ダメだ、これ以上は俺の体が保たない・・・・・」
「勘違いするな合格だ。神子よ、私をここまで熱くさせた者はお前が初めてだ」
「そりゃ・・・どうも」
「レスクよ、お前を契約者と認め、俺の力を分け与える。」
すると火柱から光が発せられレスクの体内へと消えていった
レスクの傷は癒え・・・なかったが、イフリートの力が新たに加わる。
「ウンディーネの時は回復したのに、なんでだ・・・・」
「それは俺に治癒する能力がないからだ、精霊と契約したからといって毎度回復できるとは思うな」
そう言ってイフリートは消えた
「・・・・なんてこった、これじゃあ下山する前に死んでしまう」
するとリルが姿を現す
「レスク、ウンディーネの力を使うんだ、ウンディーネの力なら傷が癒せるはずだよ」
「そうかっ、よく気がついた、水の精霊よ・・・・水の癒やしを」
ウンディーネが現れレスクの傷を癒やした
「レスクよ、イフリートの試練に私を出さなかったのはなぜだ」
「そりゃ、初めはお前の力を使うつもりだった、火は水に弱いのも知っているしな、だが精霊の試練に精霊の力に頼るわけにはいかない」
「僕も一応精霊なんですけど・・・・」
「リル、お前は本当の精霊じゃないだろ」
そう指摘されしょぼくれるリル
「はは、流石はルクセアの子孫だ、だが精霊の試練に精霊を使ってはならないという規定はない、次からは私達の力を頼るがいい」
「あぁ、そうさせてもらう、俺は回復魔法が使えないんでな」
「ではまた会おうレスク」
ウンディーネも姿を消す
「いつまでしょぼくれてるつもりだリル、早く下山しよう」
「ぅっ、そうだね、それよりレスク」
「なんだ」
「光魔法が使えるのに回復魔法は使えないの?」
「俺が光魔法を使えるのは体内に眠る女神のおかけだからな」
「女神の力でも回復魔法は使えないのかい?」
「その気になれば使えるだろうが今は脈が無いって感じだ、ま、ウンディーネと契約したし回復はそっちでなんとかすればいいさ」
「それでこれからどうするの?」
「スノーキャッスルに行く、がその前に町に寄る、新しい武器が必要だ」
レスクが使っていたフレイルはイフリート戦で使い物にならなくなっていた
サブウエポンの杖が残っているが、これをメイン武器にするには少し物足りない
レスク達は下山するとサンポスの町を目指した

続く