りぅの風森

第58話

第58話 -戦-
物語は
僕とデュック達の3匹がアルスティのお城へと帰還したところから始まる

「ただいまみんな」
そう言ったのはアルスティの国王であるデュックだ
王と王妃が不在の中、懸命に守り抜いて見せた兵士達も喜びの声を上げる
「デュック様だ、デュック様達がお戻りになられたぞーーーっ」
「どうやら、まだ敵は攻めてきてないみたいだね」
周りの様子から僕は察した
デュックとエリーにも安堵の表情を見せ
外はすっかりと夜だった

ちょう度 その頃・・・・・

「遅れをとるなっ! 今夜中にアルスター城を奪還しアルスティへの進撃を阻止する」
先頭を飛ぶのはガリシィル、彼が群をまとめて指揮をすることは今回が初めてであろう
その後ろにはシアルフィアにわずかに残る凄腕の竜兵士達、さらに後ろにはラクとライの姿も見える
「今回は簡単に終わりそうに無いな」
ライが遥か上空を飛んでガリシィルの後を追う
「・・・・・そのようだな」
ラクは平然としている
よく見ると彼は飛んでいるのではない、大きな竜の背中の上で胡座をかいているだけだ
ラクを載せて空を駆ける竜の名はレヴァ、年齢はもう何千も生きていてかなりのお爺さんだ
「すまん、何せ俺には翼が無くてな・・・・」
ラクはそういった
それを聴いたのかレヴァは大きな口を開いてこういった
「なぁに、わしゃまだ現役じゃ、これぐらい容易いものよ、フォッフォッフォッ」
なんとも気楽な竜だろう、その様子に飽きれたのかライは更に加速して群の前衛まで移動した

一方、後から出撃し始めたアシュラが指揮するメンバーはかなりの少数だ
その中にアドウィンとチョロがいる、彼らのメンバーに翼を生やしている者は数少いない
地面を駆け、そのままアルスターやアルスティには向かわず、アルデシア大陸からやって来る人間共を足止めするため
海岸へと向かっていた、行く途中何度も野生のモンスターと遭遇するが
先頭に立つアシュラの攻撃が敵に攻撃する暇を与えず一瞬で葬っていく

やがて一行は海岸にたどり着く
そこにはアルデシア大陸の人間共が乗っていたであろう船が大量に岸に着いていた
また、海の向こうからはさらに多くの船がこちらへ目指している
すでに岸に着いている船からは人気が感じられず、すでにこの場にはいない様子だった
だが、海の向こうからは人間軍の援軍と思しき船がずらりと並んでいる

「・・・まだあんなに来るというのか、一体どれほどの人間がこの戦いに便乗したというのだ」
アシュラが率いる隊は海岸沿いで敵を待ち構えることにする

その様子に気付いた先頭を行く船では船員が望遠鏡を片手に驚く
「大変だ、どうやら敵が待ち構えているぞっ」
「慌てるな、アルスターは落ちたと聞いた、先行隊はすでに大陸に上がれているはずだ」
船員の後ろでは1匹の竜が腕を組んでいた
その竜はなぜか今回の戦を起こした人間側に肩入れしているようだ
「し、しかし、すでに先行隊が全滅しているという可能性もあるのでは・・・・?」
「十六夜のことだ、そんなはずないだろう、奴は四大天竜だった奴だぞ」
「ではあれは一体」
「ふふ、安心しろ、そのためにこの俺がいる」
その竜は鞘から輝かしい剣を引き抜いた
その瞬間、その竜からすさまじい魔力が解き放たれた

それを海岸側を感じ取ったアシュラは驚いた
「ば、馬鹿なっ・・・・海の向こうから巨大な力を感じるっ」
「どうしたんだアシュラ」とチョロ
「人間が持つような魔力ではない、お前たちは感じないのか?」
「いや全然? お前はどうだよアドウィン?」
チョロに聞かれてアドウィンも首を振る
「すまない、僕も魔法が得意ってわけじゃないから、よくわからない」
「・・・・バハムートの話を鵜呑みにするなら、これは間違いなく竜族の力だ」
「というと?」
「あの船のどれかにバハムートを裏切った奴がいる、なんとしても上陸を阻止するんだっ」
「しかし、アシュラ様、我々の中に遠距離魔法が使える者は・・・・・」と兵士の一人
「わかった、俺がどうにかして先手を打つ、チョロ、アドウィン、お前達も協力してくれるな?」
「それなら僕に任せてくれ、泳ぎも得意じゃないけど、僕に考えある」
そういうとアドウィンは海へと飛び込んだ
「どうする気だアドウィンっ!!」
「まぁ見ててくれ」

そういうとアドウィンは海中の中へと消えていった

しばらくすると海に異変が起きる

海面に無数の渦潮が発生したのだ、海から飛び出したアドウィンは合図を送る
「これで船は簡単に陸へはこれないはずだ」
「すごい、一体何をしたんだ!?」
「へへ、それは秘密だぜ」
「よし、よくやったアドウィン、ここからは俺の仕事だ」
そういうとアシュラは腰から不気味に光る剣を手に取った

「雷鳴よ轟けっ! サンダーボルトっ!!」

その瞬間、海の向こう側へ落雷が落ちる
「そうか、先に攻撃して やつらを上陸させないんだなっ」とチョロ

しかしアシュラただ一人の魔法では多くの船を攻撃することはできなかった
途中から落雷の軌道がそれては海面へ落ちる
「おい、船に当たらなくなったぞ、どうしたんだアシュラっ」
「・・・・どうやら対策されたらしい、おそらくあの中に魔法を防ぐ者がいるみたいだ」
船の上では
「やはり魔法で仕掛けてきたな、俺の読み通りだ」
「す、すごい、一体何をしたんですか?」
「人間達に教える気はない、それより岸側の海面を見ろ」
「え、ぁぁっ!? あれは渦潮!? これじゃあ岸に上がれないじゃないですかっ」
「俺たちを足止めするには十分な対策だ、これは一杯食わされたな」
「どうするんですか、これでは我々も身動きができません」
「だから俺に任せな」
そういうとその竜は翼を広げて船を飛び出した

その様子は海岸側にいるアシュラ達にも見えた
「何をするつもりだ?」

船を飛び出した竜は剣を掲げた
その瞬間、あたりの空気がその剣に吸い寄せられていく

「ここら一帯の海を平地に変えてやる」

そいういうとその竜は剣を振り払った
その瞬間、目の前の海が間欠泉のように舞い上がる

「な、なんだ!? 海が・・・海が消えていく」
驚く人間達
海岸沿いで待機するアシュラ達も仰天した
「馬鹿な!? 海の底から陸地が見えてきただと・・・」
あろうことか先ほどまでは水に覆われていた海が消え
あたり一面が陸地へと変わっていた
いや、部分的に海底が姿を見せているのだ
切れ端では海の断面図が見える

「海岸までは遠いが我慢しろよ、ここから全力でいけ」
そうして陸地を作った竜は降りてくる
船からは多くの人間が飛び降りた

「くそ、あいつらあそこから攻めてくる気かっ」
そうしてアシュラ率いる軍は人間達と衝突した

「手を抜くなっ!! 奴らを今この場で数を減らすんだっ!!」
アシュラはそういうと剣で人間達を切り倒す
彼が持つ魔剣ミィルグラス・・・・アシュラの持つこの武器は
聖戦時代に活躍した暗黒竜士レアルの血筋の者しか扱えない魔剣で、
命ある者を斬るとその体力を奪いとり魔剣を扱える者に力を与える効果をもっているのだ
アシュラが何人か人間を切り捨てた時だった
海を一時的にとはいえ陸地に変えてみせた竜がアシュラの前に立ちふさがる
「やはりお前だったかアシュラ」
その口ぶりからはアシュラのことを知っているみたいだった
アシュラも相手の姿を見て、やはりなという表情を見せる
「やはりお前だったか、フォルオシャンッ」
人間側の味方をする竜の正体はフォルオシャン
バハムートを裏切った竜だ、彼もまた聖戦竜の子孫であり神器を手にしている
その神器はティルフィング、彼は聖戦竜・バルージオの子孫なのだ

「なぜだ、なぜおまえが今回の騒動に加担しているっ!?」
「守り竜は人々を守るための役職だ 別に構わないだろ?」

ガキィィンッ!

激しく剣がぶつかり合う

「分かってるのか、そいつらは竜族を滅ぼす戦争をやってるんだぞ!?」
「何か勘違いをしてないかアシュラ?」
「なに?」
「今回の戦争は竜族を滅ぼすためじゃない、バハムートを消すための戦争だ」
「なんだと!?」
アシュラはフォルオシャンの攻撃を受け止めて言った
「簡単な事だ、もうバハムートはいてはいけない存在だ・・・・・これから世界は人の手で作られていくのだ」
「何を分からない事を言っている・・・ぐうっ」
やがてフォルオシャンの方が圧し始めた

『駄目だ、悔しいがフォルオシャンのほうが俺より強い・・・・このままやり合えば確実に負ける』

アシュラは力の差を知り、一端距離をとることにした
その様子に攻撃をやめるフォルオシャン

「逃げるのか、アシュラ!」
「俺のミィルグラスは闇の剣、対するお前のティルフィングは光の剣、どう考えても相性が悪い・・・・」
「言い訳にしてはよく考えたものだ、好きにするがいい、その間に俺はアルスティへと進撃するがな」
そういうとフォルオシャンはティルフィングを鞘に収めて翼を広げた
「人間共よ、ここは任せるぞ」
その様子を見ていたチョロがアシュラに加勢しにきた
「大丈夫かっ!、いくらなんでも人数が桁違いだ、こっちが不利すぎる」
「チョロとやら、すまない人に手を貸す竜を止められなかった、だがここで出来るだけ兵力を削らなければ・・・・・アルスティは落ちる」
アシュラはまた1人2人と人間を倒していく
「待てよアシュラ、さっきの奴はほっといていいのか!?」
「俺たちの役目はここで多くの人間達を足止めすることだ、全員を止めれるとは最初から考えていない」
「なんだって!?」
「それよりも気を付けろっ」
「なっ!?」

「よそ見するなよチョロっ」
アドウィンがジェイドブレスと呼ばれるどんな形にも変形できる腕輪を剣に変形させ人間を切り裂く
「すまねぇアドウィン」
「あいつはガリシィル達に任せよう、俺達はここで人間たちを減らすのが仕事だ」
それに続いてアシュラが率いてる兵士が攻撃を仕掛けた

連槍っ!

素早い身のこなしで4回にわたる突きを繰り出し留めに喉を貫いた

「お前・・・・・・なかなかやるな」
アドウィンの声に反応したのか兵士は振り向いた
「お互い様だろ」

一方シアルフィアに残ったサラは医療室でアシュラの弟リアンと会話をしていた

「そうなんですか、ふわぁ~・・・大変ですねぇ」
サラは大きな欠伸をして言った
「何せ回復魔法が唱えられるのは僕しかいませんので」
リアンはそういうと宙に浮いた
「ありゃ、リアンさんは空を飛べるのですか? 翼が無いように見えるんですが」
「確かに兄とは違って翼はありません、ですが僕は風を操ることができるのでこうして宙を舞うことはできるんですよ」
リアンはふわっと浮いている
そこへシュラとラシルが入ってきた
「た、大変ですリアン様っ!」
「どうしたのですかそんなに慌てて」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・じ、実は人間どもがここに攻めてきているのです」
ラシルは息を切らしていた、恐らく全速力で走ってきたのだろう
「・・・・兄さんの考えがはずれたようですね」
リアンはそういうと医療室にあるタンスから何を取り出した
「そ、それは・・・・光白竜様の」
「ラシル、今この城にいる兵はどれくらいいるのだい?」
リアンは表情を変えずに城の内部を書き記した地図を広げた
「あ、はい、私達を含めて20人足らずだと思います、ほとんどはアルスティの援軍として行ってしまわれましたし」
「そうか、シュラはどう思う?」
リアンはそういとシュラの目を見た
「僕は戦いたい、だけど・・・・父さんならこの現状を把握して退却すると思う」
シュラは目を光らせて頷いた
「・・・・サラ、ここは予定を変更して逃げましょう」
「えぇ、城はどうするんですか!?」
「この人数で籠城はできません、城は捨てて近くの国を頼りましょう」
「わ、わかりました」
サラ頷いた

「・・・・外が騒がしいな、そう思わないかグレイ」

シアルフィアの城下町にある 大きな豪邸にその声主はいた
金色の髪を生やし、何処にでもいそうなケモ竜だ、彼は死神の持つ鎌のような武器を背中に背負っている
「騒がしいだとラティス? そりゃそうだ、どうも人間が攻めてきたらしいしな」
無表情で答えたのはグレイ、容姿は天使のような黒い羽に黒い鬣
おまけに体色は紫と一見悪者のように思える、
が、しかし、彼は傭兵として活躍したこともあるのだ
「人間ねぇ・・・・でもこの国にも人間がいるだろ?」
ラティスが窓の外をみようとカーテンを開けると村人達が夥しい血をぶちまけて倒れているのが見えた
「お、おいっグレイ、大変だっ 外が・・・・」
ラティスは慌てた
そんな様子にグレイは
「もう戦いが始まってるのか?」
これも無表情で言った

ドンドンドンッ

扉を叩く音が聞こえる

「ラティス、戦闘準備だ!もしかしたら敵かもしれん」
グレイはそういうと扉をゆっくり開け始めた
「馬鹿かっ! 敵ならノックする必要ねえって」
ラティスがそういうと扉の向こうにいたのはまぎれもなく人間?・・・・のように見えた
「・・・・ほら、言っただろう?」
グレイは相変らず無表情だ
「誰が人間ですかっ!!」

ぼごぉぉぉんっ

鈍い音が部屋に鳴り響いた
人間のような容姿をした者がグレイを殴り飛ばしたのだ
「がはっ」
「ったく、外はハンターが攻めてきてるっていうのにあんたらは何してるんですかっ!!」
そしてそいつは怒鳴り散らす
その様子を見てラティスは首を振った
「コリー、何を怒っているんだ」
人間のような姿をしている彼女はコリーというらしい
フードを被っていて人間に見えるがフードを取ればその顔はまぎれもなく竜
尻尾もちゃんとついている、彼女はどうやら人竜らしい
「見ての通りよ、西大陸の人間がここに攻め込んで来たの、城の方はまだ安全だけどね」
「ふむ、で・・・グレイが死にかけているようだが」
床で倒れているグレイは足をピクピクさせている
「本気で殴ったからかしら? まぁいいわ早くお城の方に向かってシュラ王子の護衛をするのよ」
コリーはそういうと急いでこの場を後にした
「グレイ、何時までくたばっているつもりだ、早く城に向かうぞ」
「うるせぇっ! あの野郎・・・・思いっきり殴りやがって」
グレイは頭を抱えてふらふらと立ち上がったが無事のようだ
彼らこの場を後にし、ひとまず城の方へと向かった
一方アルスティでは

「そういえば援軍はまだだろうか?」
デュックは王座の前でふと思い出す
その横で僕が不思議そうに首をかしげている
「おかしいな、ガリシィル達はとっくにシアルフィアにはついてると思うんだけど・・・・」
僕の声を聞いてデュックは王室を飛び出し外の様子を覗きに行った
その様子に僕とエリーも思わず駆け出す

「クーアッ! その望遠鏡を僕に見せてっ!」

外に出たデュックはクーアという見張りの兵士を押しのけて望遠鏡を覗いた
アルスティに置いてある見張り用の望遠鏡はここから2km先まで覗く事ができるすぐれものである
そこへ遅れて僕たちもやってくる
「え、エリー様、デュック様はどうなされたのですか?」
見張りの番をしていたクーアが聞いた
「多分、シアルフィアに頼んだ援軍が来るのが遅くて心配しているのよ」
「そうですか、そういえばもうずいぶん経つみたいですね」

「デュック、どうだい? 何か見えた?」
僕がデュックの肩を叩く
「た、大変だ・・・・すぐに兵を出撃させなきゃ、シアルフィアの援軍がここに来る前に人間達がこっちに向かってきているっ」
「な、なんですって!! クーア、全兵士に伝令を頼んだわ、ただちに兵を出撃させてちょーだいっ」
「分かりましたエリー様」
クーアは慌てて城内へと入り全兵士に出撃するように伝令を伝えに言った

アルスティから4km離れたところでガリシィル率いる軍は人間達と戦闘を開始していた
とはいえ、完全に後れを取った形である
多くの人間はアルスティを目指し、一部の敵がガリシィル達を食い止めている
「くっ、馬鹿な・・・・・奴らの行動が早すぎる」
ガリシィルは人間を切り捨てると一端、空へと舞い上がった
「珍しくアシュラの予想が外れたのぉ」
巨体で人間の攻撃をまともに受けるレヴァが言った
「おぃおぃ、痛くないのかよ・・・・」
ラクがレヴァの背中の上でバランスを取りながら立ち上がった
「わしゃ、硬い体が自慢でなぁ、ドラゴンキラーでも切れんぞ」
平然とするレヴァ
その様子にガリシィルも飽きれている
「・・・・なんとしてでもアルスティ侵略を阻止するぞ」
「任せろっ!」
ラクはレヴァの背中から飛び降りると大技を繰り出す

竜炎火砲陣!

地面に魔方陣が浮き上がりそこから火炎が吹き出て人間を飲み込む

ドォォォォッン

「くっ、人竜のくせに調子に乗りやがって」
人間はドラゴンキラーを手にしてラクの身体に切りかかった

ガキィィッン

鈍い音が聞こえた、武器と武器が弾きあう音ではない
攻撃を受けたのはレヴァの腕だった
「な、なんだとっ!?」
人間は驚いている、それもそのはず・・・・竜の皮膚をも切るといわれているドラゴンキラーで斬りかかっているのに
レヴァが受け止めた腕は無傷だ、しかも逆にドラゴンキラーの刃が欠けているのだ
「その程度かのぉ、では次はわしの番じゃっ!」
レヴァは剣を振り払うと人間の頭を鷲掴んだ
「ぐっ、やめろ・・・・うわぁぁぁぁぁ」

ゴキィィィッ メキッ・・・

なんと片手で人間の頭蓋を砕いたのだ、そしてそのまま地面に叩きつけた

ドサッ

「人間ってもろいのぉ、フォフォフォ」
レヴァは笑って敵陣に突っ込む なんとも元気な爺さんだ

だが、彼らは足止めされてた
敵の本隊はすでにアルスティ城を包囲しようと詰め寄っている
アルスティの兵士達が城の外で懸命に戦っているが、人間の数が尋常じゃない
次々と兵士たちは倒れていく
このままでは場内へ進入を許しかねない

「どうしましょうデュック」
城の上からその様子を眺めるデュックとエリー、そして僕の姿があった
「いざとなったら僕達も戦うしかないよ、デュックだって聖戦魔法を手に入れたんだから」
「ルイの言う通りだ、けど、魔法書を手に入れただけでまだ聖戦魔法を習得したわけじゃないんだ、かなりきついかもしれない」
「それなら早く覚えなきゃっ」

その間にアルスティの城門前では一匹の竜が傷つきながらも腕を広げていた
「はぁ・・・はぁ・・・ここから先は通さないぞっ」
彼の周りには多くの人間が倒れていた
すべて彼が倒したのだ
だが、そんな彼の前にはまだ人間達が山ほどいる
「あきらめろセリル、アルスティの竜将軍であるお前でも勝ち目はない」
城門を守る竜の名はセリルというらしい
そのセリル前に二人の人間が立ちはだかりその後ろにはアルスティの兵士たちを倒した人間達が武器を手に待ち構えている
「お、お前は十六夜・・・・なんで?」
そう、セリル前にいるのはバハムートの元側近であった唯一の人間 十六夜の姿があった。

「悪いなセリル、この戦はバハムートの支配を終わらせるためだからよ」
「なんだって!? バハムートの世界征服はとっくの昔にやめたじゃないかっ」
「・・・・それもそうだな」

「おいおい、本当にこんなことして大丈夫なのか十六夜」
十六夜の隣で心配そうにする人間
「お前だって協力すると誓ったはずだぞヨウスケ」
十六夜の隣にるは ガリシィルとの闘いで死んだと思われた洋介の姿があった。
「いっとくが俺はガリシィルを倒すために協力してるだけだ、竜族の国を滅ぼすことには興味はねぇ」
「・・・・はぁ、ほんとお前はガリシィルが大好きだな」
「あれは俺だけの賞金首、ガリシィルを倒せば俺は億万長者になれるんだっ」
「・・・・・もうガリシィルには懸賞金はついてないはずだぞヨウスケ、一体どこの手配書だ」
「忘れもしねぇ・・・そうあれはオルフランに傭兵として行った時だった、オルフランの国王は言ったんだ銀髪の竜を倒せば倍額払うってな」
「・・・そうかよ」
『そのオルフランはガリシィルによって滅んだはずだが何も知らないのかこいつは』

「ま、なんだ・・・名残惜しいがそこをどいてもらうぞセリル」
十六夜は剣を握り城門を守るセリルに向かって走り出す

「く、ここは死んでも通さんっ!!」

ギガフレアッ!!

セリルは両手を前に掲げて魔法を放つ
間一髪でよけた十六夜と洋介

だが後ろに待機していた人間達は火炎に飲み込まれてしまう
「ぐわぁぁぁぁ」
叫び声をあげて瞬く間に倒れる人間達
「マジカヨ!? 今の攻撃で俺達の兵が全滅しただと!?」
その様子に驚く洋介
一方で十六夜はセリルに攻撃を仕掛ける
「さすがは竜将軍だ、だが・・・・俺には勝てんっ!」

十六夜連舞!

十六夜の攻撃がセリルに決まる
瞬時に切り刻まれ、膝を落とすセリル
「デュック、エリー・・・・すまない」ドサッ
「ふん・・・死んだか」
「それよりどうする十六夜、俺たち二人で場内に攻め入るつもりか、俺は後衛の兵と合流したほうがいいと思うんだが」
「そういえば後衛の兵が全く追いついてこないな・・・・」
十六夜はこの城へ攻めてきた道の方へ視線を変えて望遠鏡を覗く
するとガリシィル達が戦っている姿が見えた

「なるほど、どおりで後衛が遅れてるわけだ」
「どうした?敵の援軍かっ」
「あぁ、お前の会いたがってる奴もいる」
「ガリシィルか、ガリシィルがすぐそこまできてるっていうのか!!」
「だが、まだ後衛兵が相手をしている、俺たちは城へ攻め入り制圧するぞ」
「何言ってんだ十六夜、ガリシィルは俺の獲物だ、他の奴らには殺させないっ 引き返すぞっ」
そういうと洋介は来た道を帰っていく
その様子に呆れる十六夜
「・・・・俺たちの仕事は城を攻め落とすことなんだぞ、洋介の奴好き勝手しやがって」
しばらくその場に足をとどめる十六夜だったが
一人で場内に攻め込むのを躊躇ったのか、洋介の後を追うことにした

「ふぅ、これで全部か?」
辺りの人間たちを倒したガリシィル
そこへアルスティ側からものすごい勢いでこちらに向かってくる人間が見える

「がりしぃるぅううぅぅうぅぅぅぅっ」

そう叫ぶ洋介
後ろからは十六夜も向かってきていた

その様子に驚くガリシィル
無理もない、死んだと思われた洋介が生きていて 襲い掛かってくるのだから
「馬鹿な・・・あいつ、まだ生きていたのか」
「どうしたガリシィル」
そこへライ達も駆けつける
「いやなんでもない、それより厄介な奴がくるぞ、気を付けろよ」

やがて彼らは対峙する

「っち、まさか後衛の兵がやってこないのがお前たちのせいだとはな」
「十六夜、久しぶりの再会だが、ずいぶんと派手にやってくれたな」
ガリシィルは身構えて戦闘態勢に入る
「なぁに安心しろよ、まだアルスティは落としてねぇからよ」
「ガリシィルぅぅううぅっ 俺を無視するんじゃねぇえぇぇっ」
洋介は叫んだ
耳を押さえるガリシィル
「・・・あいつらは何者なんだ? どうやらお前のことをよく知っているようだが」とライ
「腐れ縁って奴だな、金髪の男は十六夜、元バハムートの右腕だ、うるさい方が洋介、俺をしつこく付け回っているいわゆるストーカーだ」
「・・・・・なんだ、ただの粘着か」とラク
「ストーカーじゃねぇっ! 粘着でもねぇっ! 俺は賞金稼ぎだっ ガリシィルは俺の賞金首なんだっ!」
「洋介っ、今は私情をはさむんじゃねぇ俺達はあの城を落とすために来たんだ、お前一人でガリシィルと闘う真似はさせんぞ」
「もう遅いぜ十六夜、ここのまで引き返したんだ、俺は行くぞっ」

洋介が大胆にも一人でガリシィルに突っ込んでくる
その様子に十六夜は声をかける
「馬鹿、一人で行くんじゃねぇっ!!」

「なんだかわからないが、お前たちは許さない」
ライはクレアフィングを手に取った
「・・・・・十六夜。俺は今、無性に機嫌が悪くなった。俺達に殺されても文句は言うなよ」
「文句は言わねぇよ」

『くそ、よりによって銀髪の竜が相手では分が悪いぞ・・・・』

「くらいなっ」

ブルーサンダーっ!!

ガリシィルの横にいたライが青い稲妻を放つ
それを見て十六夜は立ち留まるが、洋介は構わず突っ込んでくる

その稲妻は真っ先に向かってくる洋介をとらえたように見えた
が、洋介はその稲妻を瞬時によけて見せる

驚くライ
「馬鹿な、私の魔法が人間ごときにかわされた!?」
「ライ、あいつらを甘く見るなっ」
そういうとガリシィルと洋介の剣劇が始まった
洋介の剣とガリシィルの爪器がなんどもぶつかり合う
「くそ、これでは魔法で援護できない」
ガリシィルの後ろで待機するライ達
だが彼らの後ろからは 新たな敵軍がやってくる
「おいおい、後ろから大勢の人間が向かってくるぞ」
それに気づいたラクが槍を握りしめ、ライ達にも知らせる
「どういうことじゃ、アシュラ達が食い止めてるはずじゃなかったのか?」
「レヴァ、どうやらアシュラ達には荷が重すぎたみたいだ、ここは任せるぞ行ってくるっ」
ラクはそういうと人間の群れに向かっていく
ガリシィルが率いてきた他の兵士も人間の援軍に対応するため後方へ下がっていった

続く