りぅの風森

第89話

第89話 激闘・魔王ヴァリ そして動き出す黒竜

前回、僕達は魔王のいるザメス神殿に向かって
大砂漠『ティーラルカーティエ』を横断していた
その途中、魔王の手下・・・・いや、正確にはアルジェスによって
大量生産された黒竜のコピー達に行く手を塞がれる
その数はおよそ1万、どう考えたって 切り抜けるのは難しかった
そこでガリシィルは僕を通して禁断魔法を使ったのだ
その場の敵を殲滅させる威力、敵は一瞬にして消え去った
当然その魔法は副作用の影響が大きくて、ガリシィルも僕も瀕死の重傷を負った
そこにやってきたのはリュカとアウルだ。
リュカがヒリュティスから預かってきた魔法書『最終回復魔法(リカヴァライズ・ファイナル)』によって
どうにか一命を取り留めた僕達は、いよいよ魔王のいるザメス神殿にやってきた
そこは地下に広がる不気味な神殿だった
そして、王座に座る 黒い影が姿を現した

物語はここから始まる・・・・。

「キタナ、ワレワレノジャマヲスルヤツラメ」
竜とは違った生物だが、翼があり、尻尾があった
悪魔のような角を生やして、鋭い牙がむき出している
目が3つあり、額から蛇のような目がギラリとこちらを見ている
腕が6本あって、まるで観音様のようだ
「・・・・お前が魔王、ヴァリ」
「イカニモ、コノ私ガ、魔王ダ」
ヴァリは王座からゆっくりと歩み降りてきた
同時にヴァリの左右から、ドロッとした 気味の悪い 生物が2匹現れる
「ヨクモ私ノ計画ヲ邪魔シテクレタナ、聖戦竜ノ子孫ドモ」
「お前なんかにこの世界を渡すわけにはいかない」
「・・・・マアイイ、お前達ヲ殺セバイイ話ダ」
魔王は動いた
「来るぞ、皆油断するんじゃないぞっ!」
リュカが指示だした
「僕が先に仕掛けるよ」
僕は素早く魔法の詠唱を始めた
「雑魚は任せろっ!」
レイウェルとラジェスが影のモンスターに目掛けて走り出した

一方こちらはバハムートがいる国『ドラグレッサ』
城の中はやけに騒がし、何があったのだろうか

「大変ですバハムート様!!」
バハムートがいる王座の間に駆けつける1匹の竜
「何かあったのかしら?」
「そ、それが、北の大陸から黒竜の群れがこちらに向かってきているとの連絡が・・・」
「そう、分かったわ、下がりなさい」
平然とした様子でバハムートは煙管を咥えた
しばらくするとバハムートは指を鳴らす
パチンッと鳴った その瞬間 バハムートの側近達がその場に集まる
「お呼びですかバハムート様」
その場に集まったのは 風竜のシェイラス 黒竜のディルタ ハイドラゴンのレグラ
邪竜のルイリヒト この四天竜王達だった
「ルイリヒト、彼方はもう知ってるわよねぇ、この件のことを」
「・・・・まさか倅が言っておったことが 本当じゃったのか!?」
ルイリヒトは大声を上げた
すると横にいたディルタが口を開く
「どういうことだ爺さん」
「いや・・・・実はのぉ、今回の魔王出現はやはりアルジェスによるものじゃったのだ」
ルイリヒトはゆっくりと喋り始めた
その話を聞いたディルタは目を大きく見開いた

『今まで姿を現さなかった奴が、ここで動きを見せるということか』

そんな様子に気づいたバハムートがディルタに話しかけた
「そんな顔をするなんて、どうしたのかしら?」
「いや、あいつの狙いはおそらく貴女だ、バハムート」
「ど、どういうことだバカディルタ!」
「バカは余計だシェイラス!、あいつはバハムート様に恨みを持ってるんだ」
「なるほど、打倒バハムートを企む黒竜ですね」
レグラは呆れた様子でため息をついた
「それで、どうして我々が呼ばれるのです? 黒竜1匹、バハムート様の敵ではないでしょう」
「レグラ、お前はアルジェスの怖さを知らないのかっ、あいつは・・・・」
「よい、ディルタ、確かに黒竜1匹、私の敵ではないわ、でもねぇ この国に向かって黒竜の群れが着てるらしいの、その数は億単位」
「はぃ?」
それを聞いた4匹は耳を疑った
「ちょ、ちょっとまってください、億単位の黒竜がこの国に向かってるのですか?」
「そうよ?」
「・・・・・・馬鹿な、億もいる種族じゃないはずですが」
「おそらく黒竜のコピーだ」
ディルタが言った

『姿を見せないのは黒竜の生産のためか、いや・・・きっと何か別な理由が』

「とにかくだわ、お前達に黒竜の討伐をお願いしたい」
「しかし、我々4人では 億単位なんて・・・流石に」
「そうねぇ、おそらく他国にも この件のことが伝わってるので 協力してもらいなさい」
そういうとバハムートは立ち上がった
王座を下りて部屋を出て行く
「こ、こんな時にどこへ行くのですか? バハムート様」
「ちょいとねぇ、古き戦友に会ってくるのよ 城のことは任せるわ」
「バハムート、おぬしまさか・・・・」
「あなたの予想通りよルイリヒト、では行って来るわ」
そう言ってバハムートは姿を消した
おそらく瞬間移動魔法を使ったのだろう
王座の間に取り残された四天竜王の4匹は互いに顔を見合わせた
「で?バハムートはどこに行ったんだ」
「おそらく、シィルスのところじゃろう」
「・・・・・『アカルディア』か」

『ドラグレッサ』から遠く離れた場所
大陸を越えて、北の大陸の真西に位置する洞窟『アカルディア』

ここにバハムートはやってきた
この洞窟に人気はない、 それもそのはずだ
この洞窟は樹海の中に存在し、ここ数千年間誰も訪れなかったのだから
いや、正確には数十年前にガリシィルと数人が訪れていたかな・・・・・。
その洞窟の中へと入っていくバハムート
煙管を杖代わりにして、入り組んだ細い通路を歩む
「・・・・さて、どうしたものか」

そのころ・・・・・

白銀の道標っ!!

僕の人差し指から解き放たれた魔法は眩い光を放ち
閃光が魔王の身体を貫いた
「グォォォォッ!」

稲妻の惨劇っ!

双覇・瞬神撃っ!

そしてレイウェルが気味の悪いモンスターの1匹を一瞬にして切り裂く
同時にラジェスがもう1匹のモンスターを仕留めた
「バカナ・・・一撃デ ワガシモベガ・・・・」
「下部がこの程度の雑魚なら、お前も倒せそうだな」
「同感だ、さぁ、行くぞっ!」
「調子ニノルナァァァァァ」
魔王はいきなり走り出すと僕の腕をつかんだ
「なっ」「ルイっ!?」
「危なぁぁぁぃっ!」
アウルが叫んだその時には僕は宙を舞っていた
「しまっ・・・」
「オワリダッ!」
そこへ魔王が放った魔法(ファイヤーアロー)が直撃する
ドッドッドッドンッ
僕は壁まで吹っ飛んで地面に崩れ落ちる
「大丈夫か、ルイっ!」
「・・・が、ガリシィル? だ、大丈夫だよ」
ゆっくり立ち上がる僕
「甘ク見ルナヨ、私ハ魔王ダ」
「させるか、私に続けっ!」
「OK-っ!」「任せろっ」
連続攻撃を仕掛ける魔王を止めようとリュカが先頭へ出て攻撃に入る
その後ろからチョロとラクが続く

魔双・剣牙っ!

先に攻撃を仕掛けたのはリュカ達よりも遥か後方にいたアウルだった
ミスリルの剣から放たれた衝撃波は〆の字を描いて魔王を捕らえる
「グォッッ」

ウインドッ!
後方でレスクが放った風の魔法は魔王を捕らえるとその身体を引き裂いた
魔王の動きが止まる
「チッィ」

漆黒の爪跡っ!

そしてリュカの攻撃が炸裂した
一瞬で魔王の身体を切り刻む
「グぁっ グフゥ・・・オ、オノレ」
「くらぇ、閃空裂ざ・・・・うわぁっ」
チョロが空中回転斬りで魔王に目掛けて突っ込んだが 魔王はそれを回避してみせた
そのままチョロは壁際まで突っ込んで行った
「くらっぇ! 爆裂竜天衝っ!」
「ヌルイワっ!!」
ラクが放った爆炎の闘気を6本の腕で受け止めるとそれを粉砕した
そのまま魔王は魔法は放つ

新星樹海!

地響きを立てながら僕たちの足元から巨大な植物が現れ
体勢を崩す、辺りは一面 大樹海に変わった
「な、なんやこの魔法は」
ラッシュは勢いよく生えてくる植物を回避すると体勢を立て直した
「く、これでは思うように動けない」
ライがクレアフィングで植物を手当たり次第に切り裂いていく
「フッハハハハ、皆 焼キ殺シテヤロウ」
ガリシィルは生い茂る植物が次第に枯れていくのを目にすると叫んだ
「この植物は囮だ、奴はこの空間ごと焼き尽くすつもりだぞ!」
「なんだと!?」
「オソイハッ!!」

業火の火炎!

魔王から放たれた魔法はルイ達がいる場所を一瞬で焼き尽した
しかし、ルイ達は動じなかった
サラの魔法がそれを防いでいるのだ
「バ、バカナ!」
「負けるわけにはいかないですよぅっ!」
「腹が減ったぜ・・・お前の腸、貰うぞ・・・・」
ラグゥは突如、魔王に向かって走り出した
「貴様ハ・・・確カ」
「うるせぇっ! ガタガタ言うんじゃねぇ、奥義っ!!」

味見っ!!

「グヲァァァァァァァァ」
次の瞬間、魔王の腕が一本もげた
その瞬間に血をぶちまける
「ラグゥっ な、何してんだよ!?」
「あぁ、魔王の腕もそこそこ美味いぜ お前も食うか?」
もぎ取った魔王の腕を頬張りながら僕に言った
その直後 痛みに苦しむ魔王がラグゥに襲い掛かる
「貴様ァァァァァ」
「ラグゥっ! 後ろだっ!」
「っんなことは分かってる」
素早く反応したラグゥは後ろ回し蹴りで魔王の攻撃を受け止めた
「ナンダト?」
「もう一本、腕をもぎ取られたいのか?」
「五月蝿イ、死ネイッ!」

爆裂する波動っ!

ラグゥの間近で放たれた魔法は物凄い爆発を引きおこした
「ラグゥ!」
「俺は大丈夫だ」
ラグゥは魔王の攻撃を至近距離で受けたのにダメージを受けていなかった
「ナ、ナゼダ」
「さぁ、行くぜっ!! お前ら、俺に続けっ!」
ラグゥの合図でライとラジェスが動いた
どうやら3人で同時に攻撃を仕掛けるようだ
ラグゥは瞬時に魔王の背後に回り込むと素早い攻撃を仕掛ける

爪牙・墜連刃っ!

勢いよく蹴り上げ、鋭い爪で切り裂く
そこへライが雷破斬を仕掛けた
空中でクリティカルヒットした魔王はそのまま地面にたたきつけられ感電した
「ウガガガガガガガッ」
そして最後にラジェスの攻撃が炸裂する

魔竜・連牙斬!

ドラグレアバスターを振り回しながら前進し
右上から左下へ、左から右へ、上から下へ、右から左へ、左上から右下へと連続に5回斬り付け
魔王の喉元に目掛けて渾身の突きを繰り出した
最後の最後で魔王は立ち直り喉元の攻撃を回避する
「ち、はずしたか」
「ナカナカ、タノシマセテクレル」
魔王の身体はすでにぼろぼろだった
それに対して僕達はそれほどダメージをうけていない
魔王があまりにも弱すぎる、そんな気がしてならなかった
そんな時、魔王の後ろからチョロが切りかかる
「今度は逃がさないぜっ!」

空牙・閃光斬っ!

魔王はすかさず腕2本で防御した
しかし、チョロの攻撃はその腕をも断ち切った
「グワァァァァァッ」
痛さの激しさから暴れまわる魔王
ラグゥが魔王の攻撃を受け止めた
「いまだルイっ! 仕掛けろっ!」
胸を押さえながらガリシィルが支持を出す
「分かった!」
僕は魔王に向かって走り出した
「くらえっ! 烈風の爪跡っ!!」
同時に魔王の攻撃を受け止めていたラグゥは横へ跳んだ
僕の攻撃は魔王ただ一人を対象にすると
風の如くその身体に巨大な爪跡を残した
ズァァァァンッ
「ガハッ、マ、マサカ・・・コレホド・・・トハ」
魔王は地面に倒れた。
場面が切り替わり

「久しぶりだな、バハムート」
「あぁ、数十年ぶり・・・かしら?」
『アカルディア』の洞窟にやってきたバハムートを迎えたのは1匹の竜だ
ガリシィルと同じ銀髪でバハムートにもガリシィルにも容姿は全く異なるが確かに竜族だ
その竜はバハムートの隣に瞬時に移動すると再び口を開く
「にしてもお前がここ来たということは非常事態のようだな、何があった?」
「とある黒竜族が私を狙ってるようでね、そのついでかしら、億ともいえる群れでドラグレア大陸を攻めに来てるらしい」
「・・・・・まさか」
「分かっていただけたかしら?」
「分かった、私が守ろう、だがな・・・・お前はどうするつもりだ」
「私かい? 私は死なないさ 終わり無き命を持つ古代竜だからねぇ」
「・・・・フッ、まぁ、せいぜい殺されないように気をつけるんだな」
そういうとシィルスは姿を消した
「これでドラグレアは救われるわ、そろそろあの子達も魔王を倒してる頃かしら」

バハムートがそうつぶやくと
再び僕たちの場面に戻ってくる

「やったのか?」
僕は倒れる魔王に背を向けた
「ルイはんっ!! 危ないっ!」
ラッシュが魔王の異変に気づいて咄嗟に言った
「ぇ?」
その時だった僕の胸を閃光が貫いたのだ
「っ・・・・」
「ルイ!?」「ルイさん!?」
僕の胸に出来た風穴からは大量に血が噴出す
僕は震えながら倒れている魔王の方へとゆっくりと振り向く
「・・・ウフフフ、ワタ・・・シガ・・・タダデ・・・死ヌト・・・思ッ・・タノ・・カ?」
うつ伏せに倒れている魔王はそう言った
僕は何も言わずにその場で倒れた
床には血がみるみる広がっていく
「ルイさんっ! しっかりしてください! ルイさんっ!」
サラがすぐさま駆け寄った
回復魔法を唱えるが、傷口がふさがらない
その様態を見たリュカは突然叫び声をあげた
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
リュカから物凄い殺気が溢れる、雷撃の闘気がバチバチと音を立てた
「私ハ・・・タダデハ・・シネヌ・・・」
魔王はほとんど力尽きていた、おそらく僕を仕留めた魔法が最後の力だったようだ
だが、リュカは魔王に容赦なく攻撃をしかける

10分が過ぎた頃

魔王は見るも無残な姿に変わっていた
もはや言葉では表せないほどに・・・・
「はぁ・・・はぁ・・・・」
「もういいだろう、リュカ、ヴァリはすでに死んでいる」
リュカの肩をつかむガリシィル
「だが、ルイは・・・私の息子は・・・」
「・・・・」
僕はサラの魔法で癒されていた
だが、傷は深く完治する様子を見せない
「だ、ダメです・・・私の魔法では・・・・こ、このままじゃ、ルイさんが死んじゃうですっ!」
「ふざけやがって、ここで死ぬのかルイっ!」
チョロが呼びかける
だが僕はぴくりとも動かない
「なんとかならないのかよ!」
そんな様子に黙ってみていたレイウェルが僕の傷口を左手で押さえた
「何をする気だレイウェル」
「俺のマナを、時のマナを与える 前にもやっただろう」
「そうか、確か以前も死にかけのルイにやった時の奴か」
「・・・・・とにかく黙ってろ」
レイウェルの身体から羽毛が飛び散った
バサァッ・・・・
そして僕の身体に右手の人差し指を乗せた
その瞬間、先ほどレイウェルから抜けた羽毛が自我を持っているかのように
の真上で円を描いた
レイウェルの指先からは蒼い光が発し、僕の傷を一瞬で回復させていく
「ぐ・・・・」
僕の傷を癒すと同時にこの魔法を使ったレイウェルは再び床にへばってしまった
「大丈夫か?」
「・・・・この魔法は体内のマナを半分以上使うからな、まぁ大丈夫だ」
レイウェルは仰向けになるとタバコを咥えた
するとラジェスがドラグレアバスターを鞘に収めて神殿の辺りを見渡した
「おかしいな」
「どうしたのラジェス?」
ヒョウがラジェスの隣にやってきた
「いや、ラジェスがいないことが気になってな」
「黒竜の群れを倒しちゃったから 尻尾を巻いて逃げたとか?」
「ヒョウ、・・・・それはない」
「どうしてさ?」
「あいつは聖戦竜と同等の力を持っているはずだ、それも邪悪なる力」
「だったら何で魔王を?」
「それがわからんのだ、奴の狙いは何だ・・・」
ラジェスは首をかしげた
するとガリシィルが口を開いた
「ここにいても仕方がない、ひとまずハウグリアに戻るぞ」
「ルイはんはどうするんや?」
「心配するな、一度立ち寄った場所なら俺の瞬間移動魔法ですぐに戻れる」
ガリシィルは何やら杖で魔方陣を描き出す、やがて魔方陣から不思議な光が発した
「おぃ、お前ら早く魔方陣の中に入れ、置いていくぞ」
「ちょ、ちょっと待て、そんなに急ぐ必要はあるのか?」とライ
「嫌な予感がする、それだけだ・・・・魔方陣よ、我の名において結界を解除する、開け異空への扉っ!!」
ガリシィルはそういうと杖を地面に突き刺した
ズカッ・・・・
すると魔方陣から光の帯が出現し、僕達を包む
やがて光は大空の彼方に消え、それと同時に僕達はこの場所から消えていった
ガリシィルの魔法でハウグリアへ移動する僕達
僕達を運ぶ光はハウグリア城下町の広場へと天空から降り立った
それと同時に僕達が姿を現す
辺りを見渡したガリシィル
「どうやら広場のようだ、一先ず魔王を倒したことをハルージェに伝えるぞ」
「ルイはどうするんだ?」
気を失ったままの僕を担ぐライが言った
「町に着いたのに起きないのか? 叩き起こせ」
「わ、わかった・・・」
ライは僕を地面に下ろすと肩を叩いた
「ルイ、町に着いたぞ、起きろっ!」
「・・・・・」
僕は起きなかった
「まさか、死んだのか?」とアウル
「馬鹿を言うな、俺が回復させてやっただろう ましてや死んでたとしてもあの魔法なら生き返っているはずだ」
レイウェルが死んでいることを否定する
「とりあえずギルドへ向かうぞ、ここで立ち止まっていても意味がないからな」とガリシィル
「あんたの傷は大丈夫なのか」とライ
「俺のことは・・・・・ほっといてくれ」
そういうとガリシィルはギルドの方へと向かった
「ライ、ほうっておけ、」
レイウェルがタバコを咥えながら言った
「しかしだな・・・・」
「兎に角、後を追おうぜ」
「・・・・そうだな」
アウルに言われてライ達はガリシィルの後を追う

ライ達がギルドに着いた時にはすでにガリシィルとハルージェが会話をしていた

「何?、アルジェスが黒幕だったのか?」
あまり驚きを見せないハルージェ、どうやら薄々気づいていたようだ
「あぁ、魔王を倒しても 量産型黒竜が大量発生してるからしてほぼ間違いないな」
「やはりか・・・・しかし、その黒竜達はドラグリア大陸に向かってるそうだ」
「俺の予想だと、バハムートが狙いだろうな」
「なるほどな、我々も力を貸したいところだが今は国の復興が重要でな・・・・すまん」
「分かっている、それよりルイが目を覚まさないんだ、ローゼスを呼んでくれるか?」
ガリシィルは遅れてきたライ達の方へ指を指した
するとハルージェは顎に手を当てた
「ローゼスか、アイツなら今、城の研究室にいるはずだ、すまないがそっちの方を尋ねてみてくれ」
「・・・・わかった、あぁ、それと頼みがあるんだが」
「私の出来ることなら」
ガリシィルは魔法で書簡を取り出すとそれをハルージェに手渡した
「この国にフォンがまだいるだろう、あいつにドラゴンズスピークにいるリュリカにこれを渡すよう頼んでくれ」
「分かった、これは私が渡しておこう」
「あぁ、頼む」
そしてハルージェはギルドにある奥室に行った
ガリシィルはライ達の方へ振り返ると口を開いた
「大方話は聞いていただろう、城へ向かうぞ。ルイが起きないと話しにならん」
「また、あの方法で起きるんじゃないですぅ?」とサラ
「・・・・鼻と口を塞ぐあれか? そこまで言うなら試してみろ」
ガリシィルはそういうとライが担いでいた僕を地面に降ろした
サラがルイの鼻と口を塞ぐ
数分が経過したが僕は目を覚まさなかった

「お、おかしですねぇ」
「やめるんだサラ、それ以上はルイが死んでしまうっ!」
黙ってみていたリュカがサラの手を退けた
サラの手をどけると息を再びしはじめた僕、だが目は覚めなかった
「だから言っただろう、俺もあまりこの手は使いたくなかったがローゼスの発明品に頼るしかない、城に向かうぞ」
ガリシィルはそういうとギルドをさっさと出て行ってしまった
「あいつ、焦ってるな・・・・」とラグゥ
「兎に角、私達も城へ向かおう」
リュカがそう言うとガリシィルの後を再び追った

先にハウグリア城へ着いたガリシィルは城門を開けるやすぐに城の研究室へと向かった
研究室ではローゼスがメガネを光らせながら、不気味な薬品を作っている
研究室に入り込んだガリシィルに背を向けながら黙々と作業をしていた
そこへガリシィルはローゼスの肩を掴む

トッ・・・

「う、うわぁっ!!!」

その瞬間、ローゼスは悲鳴を上げて手に持っていたフラスコを地面へと落下させた
ガシャァンッ!
それは見事に木っ端微塵になってしまった
「悪い、邪魔をしたようだ」
「な、な、なんですかっ、いきなり驚かさないでくださいよっ! おかげで新薬の研究がパーになったじゃないか」
「また作ればいいだろう、それよりローゼス、お前に頼みがあるんだ」
ガリシィルはローゼスの顔を見つめて言った
ローゼスはため息をつくと口を開く
「なんですか、頼みって?」
そこへライ達もぞろぞろと研究室に入ってきた
「ガリシィル、お前・・・はやすぎ・・・・」
「おや、皆さんどうしたんですか? 魔王退治に行ったはずじゃ?」
ライ達の姿を見てローゼスは目を丸くした
「それは後で説明する、それより俺の話を聞け」
「あぁ、そうでしたね、で?」
「あの馬鹿が、目を覚まさなくなったんだ」
ガリシィルがぐったりしてる僕に指を指した
それを見たローゼスは真剣な顔をすると、薬品を置いてる棚を漁り始める
その様子から僕が深刻な状況に陥っていることが分かった
「・・・・ローゼス」
「一体何があったんですか? ルイさんは竜性意識障害に陥っていますよ、このままでは危険だ」
「なんだそれは?」
「死んだ者を生き返らせた時にたまに起こってしまう症状です、不完全な蘇生法をするとこうなりやすいんですよ」
それを聞いたレイウェルが大声を上げた
「馬鹿なっ! 俺の魔法がミスったとでも言うのか!?」
「レイウェルさんが蘇生をしたんですか?」
「あぁ、時の魔法でな、ハルージェに時の魔法を習ったお前なら知ってるだろう」
「私はそんな魔法習ってませんよ・・・・。兎に角すぐに治療薬を作ります、皆さん邪魔ですから2階の客室で待っててください」
「・・・・あぁ」
ガリシィル達はその場に置いて研究室を後にした
ローゼスはあたふたしながら、治療薬を作る準備をはじめる

客室に移動したガリシィル達は各々寛ぎ始めた
レイウェルとガリシィルの姿は見当たらない、どうやら違うところへ行ったようだ
「ルイの奴、大丈夫かな?」とチョロ
「だ、大丈夫ですよぉ! ルイさんが死ぬわけないですって!」
サラは人一倍に心配していた
「そうだチョロ、あいつは大丈夫だ、それより今後のことを考えようぜ」
レスクはそう言ってソファーに腰掛けた

ハウグリア城の屋上

ここにガリシィルとレイウェルがいた
レイウェルは相変わらずタバコを吸っている
「シィル、今後どうするんだ?」
「・・・あいつはどうせしばらく起きないからな、場合によっては俺達だけでドラグリア大陸に戻ろうと思っている」
ガリシィルは南の空を眺めて言った
「ローゼスのことを信用してないのか?」
「・・・・あいつの作る薬は完璧じゃないからな、どうも信用は出来ない」
「ならなんでローゼスに?、他にも宛てはあっただろう?」
「あぁ、俺の妻であるリュリカに見せればすぐに済む話だった」
「何故そこに行かなかったんだ!?」
「・・・・行けば、俺はお前達に着いていけなくなる」
「どういうことだ?」
「アイツは完璧主義でな、俺の傷を完全に癒せないことに酷く悩んでいる、それ故に今の状態があいつに知れたら・・・・・」
「なるほど、嫌でも安静にさせられるわけだな、だが、それは俺も同意するぞ お前の様態ははっきり言ってルイよりヤバイはずだからな」
「それなら大丈夫だ、フォンにリュリカ宛てに完全回復の秘薬を渡すよう手紙を渡してある、おそらくこの国を出るころにはフォンが俺に薬を寄越してくるだろう」
ガリシィルはそう言うと屋上から去ろうとした
「もう下に行くのか?」
「お前と一緒にいるとそのきついタバコの煙が俺の身体を蝕むんでな」
「わ、悪かったなっ!」
レイウェルは後ろを向くとタバコの煙を吐いた
「別に悪くは無いさ、俺もたまに吸うからな・・・・ただしちゃんとした奴のな」
そう言ってガリシィルは屋上を去った
「・・・・・・・こっちの方がウマイのだから仕方ないだろう」
レイウェルの吸ってるタバコはグァラムと呼ばれる物である。
人間が吸っている中でも一番きついやつで、人間達の間では究極のタバコの呼ばれているらしい
ちなみにレイウェルはこれを、時空間の中に大量に保管してるのだから凄い
入手先は不明、有力な情報だと人間だけが住む西大陸にある【ヴィルディド】という国で販売されているらしい
一方 ドラグリア大陸では

~ドラグリア統一国【ドラグレッサ】~

「大変です!、ドラグリア最北の町【ボーネリス】で黒竜の群れが通過するのを確認されました!」
ドラグレッサ城の王座の前に世界各国と通信を行っていた兵が慌てて走ってきた
しかし、その王座にバハムートは座ってなかった
代わりにその場に居た四天竜王達が反応する
「くっ、もうこの大陸にやってきやがったのか」
「これはぐずぐずしてられんぞい!」
すぐさまルイリヒトが支持を出す
「ディルタ、おぬしは【シアルフィア】国に、シェイラスは【アルスティ】国に援軍の要請に向かってくれ」
するとシェイラスが首を振った
「ま、まってください!【アルスティ】は、この間の対フォルオシャンとの戦いで、跡形もなく消滅しました。彼らは復興作業でそれどころではないかと思います」
「しかし、他に頼れるところはないぞい、今や兵の少ない【アルスター】や【アルカティス】に頼むわけにはいかんしのぉ」
ルイリヒトは考え込んだ
「ルイリヒト、それなら【オルフランデ】国や【ユグリス】国に頼ってみてはどうでしょうか」
レグラが言った
するとディルタはそれに猛反対した
「【オルフランデ】はまだしも、【ユグリス】は絶対にだめだ! あいつらはここと中立しているとはいえ敵対意識を持ってるんだぞ? 以前の竜狩り事件の時も我々に加勢してはくれなかった!」
「しかし、敵対意識があるとはいえ、このドラグレア大陸全土を支配しているのはバハムート様じゃないか?」
「それがのぉレグラ、バハムートは【ユグリス】国だけは手を出していないんじゃ、大陸を支配する前に互いに関わらないことを条約とし今まで平行線を保っておる」
「な、なんだと?」
「それ故に【ユグリス】国は我々に手を貸そうともせず、以前の事件の時も、のうのうと眺めておったのよ、もしバハムート様がフォルオシャンに敗れておったら間違いなく奴らはここに戦争を仕掛けたじゃろう」
「くっ、ならば【オルフランデ】に頼りましょう、あそこにはバハムート様の妹様がいらしたはず」
「ヒリュティス殿か、出来れば頼りたいが・・・・バハムート様とは仲がよくないからのぅ」
「今はそんなことを言ってる場合じゃないぜ!相手は億という数だ、この際頼らなければこの国は終わるんだからな」
そういうとディルタはその場を去った
「ディルタの言うとおりだ、私は【オルフランデ】に行ってみます、では」
そうしてシェイラスもその場を後にした
「どうするんだルイリヒト?」
「我々は黒竜達を食い止めなければならん、北に向かうぞ」
「俺達2匹で食い止めれるかわかんねぇけど、いいのか?」
「援軍が来るまでの辛抱じゃよ」
そういってルイリヒトとレグラはその場を後にしようとした
するとそのとき彼らの足を止めるように2匹の前に1匹の竜が現れた
「待つんだルイリヒト、彼方はもう歳だ、彼方はこの国に残って城をお守りした方がいい」
「誰だっ!」
レグラがその竜に向かって言った
ルイリヒトはそいつを見ると驚いた
「おぬしは、シリュウ! シリュウなのか!」
なんとそこに現れたのはシリュウだった
シリュウは、バハムートの息子で長男にあたり、3歳にしてバハムートに次ぐ能力を開花させた天才だ
「ルイリヒト、悪いことは言わない、彼方ではあの数を食い止めることは出来ない、ここは僕に任せてくれ」
「しかし、おぬしはバハムートに関わることには手を出さなかったのではないのか?」
「僕は確かに母さんとは縁を切った、そして母さんに関わる件も一切関与しないと言った」
「だったら何故お主が・・・・」
「僕は弟の力になりたいだけだ! それに今回はヒリュティス様の頼みでもある」
シリュウはそう言った
「ということはこの件にガリシィルも関わっとるのか!?」
「あぁ、近いうちに彼らもこの大陸にくるだろうね、間に合えばいいけど・・・・兎に角、彼方はここに残った方がいいだろう」
「分かった、レグラ、後はシリュウに着いていくのじゃ、おそらくお前では足手まといになるかもしれんがのぉ」
「なに?」
「そんなことはないさレグラ、それより早く行こう、大分時間をロスした」
「分かった」
そうしてシリュウはレグラを引き連れて、黒竜達が来る北の方へと向かった
その場に取り残されたルイリヒトは城にいる兵に各地の傭兵を集める用に指示を出した

北の大陸【ヴァリオル】

~竜達が住む町【ドラゴンズスピーク】~

ここではドラグリア大陸に向かってる黒竜達の件ですでに慌しい状態になっていた
ギルドでは各国から援軍の要請が相次ぎ、ほとんどの部隊はこの町から出て行っている
大抵のギルドには大体1~5種の部隊しかないのだが、この町のギルドには合計48種にもおよぶ部隊があり
世界で最もな勢力をもっている町である、この町を国にしてもいいぐらいだが
王と呼ばれる者がいなく、表向きには町と称されている
本来はただの高山地帯で、好き勝手に屯してる竜族の巣窟となっている、 それ故、村長もいない・・・という
屯してた1匹の竜が金儲けのためにギルドを立ち上げたら、そこに竜達がゾロゾロと集まったためにこうなったらしい
結果的に ギルドを立ち上げた奴が村長の役割をもっているみたいだ。 だが、結局集会とかもないので 各々自己責任で適当に暮らしている

そこへガリシィルがリュリカ宛てに書いた手紙を持った竜が姿を現した
彼は実体を持たない竜で、風となり自由に移動できるフォンだ
もともとは風竜族で、とある事件を切っ掛けに風そのものになってしまった竜である。
「やれやれ、リュリカさんは一体何処にいるのやら・・・」
フォンは実体のない風から竜になると、その大地に降り立った
辺りを見回すフォン、ここに着たのは2回目だが、相変わらずここの地域がよく分からない
旅してきた竜達が好き勝手に家を建てたりしているのだから仕方が無いが・・・・
そこへ、一人の竜がやってきた。彼はフォンとは一度あったことのある奴だった
「フォンじゃないか、どうしんだこんなところで?」
「あぁ、君は確かミゲルかい」
そう、そこにやってきたのはミゲルだ
ミゲルはガリシィルのたった一人の息子だ、大量の汗を流しながら、大剣を担いでいた。
どうやら修行でもしていたらしい
「実は、リュリカっていう方を探しているんだが 知らないかい?」
「それは母さんのことだ、よかったら案内しますよ」
「あ、いや、実はこの手紙を渡すように言われているんだ」
そういうとフォンはミゲルにその手紙を渡した
ガリシィルが書いた手紙を見たミゲルは慌ててはじめた
「た、大変だ・・・・これはすぐに渡さないと、後は俺が渡しますよ」
そういうとミゲルはすぐさま消えていった
「・・・・なんて書いてたんだろうか、まぁいいか」
フォンはそういうと姿を消し、風となって【ハウグリア】に向かった

ドラグリア大陸最北の町『ボーネリア』では
アルジェスによって大量に生産された黒竜のコピー達が次々とドラグレッサに向かって通過していくのが見えていた
それはルイ達と少しの間だが 仲間になっていたファバルの目にも映っていた
「ファバル様っ!、大変です・・・次から次へと黒竜の群れが北の方角から・・・」
「く、数が多すぎる・・・俺だけではこの群れを食い止めるのは無理だ」
黒竜の次々に倒していたファバル
黒竜の群れは一向に減ることはなく、ついにはファバルを無視してドラグレッサへと黒竜達は通過していく

『ルイ達は無事なのか』

一方、僕達がいる【ハウグリア】では

研究室の扉を開けてローゼスが中から出てきた
安堵のため息をつくとライ達が待つ客室へ向かった
「ローゼス! ルイの様態は?」とチョロ
「まだ目を覚ましません、ですがこれを飲ませれば 多分、目が覚めるでしょう」
ローゼスは右手に持っていた 危ない薬品を見せた
赤色の錠剤が見える
「なんだそれは」
ガリシィルが目を細めて尋ねた
するとローゼスは眼鏡を掛け直してニヤリと笑った
「ふっ、よくぞ聞いてくれました。これはその名も・・・・」

目覚ましすっきり君スペシャルEXっ!! だ。

そう言い切ったローゼス、その場の空気が一瞬で凍りつく
「あ、あれ? 皆さんどうしたんですか?」
「・・・相変わらずやなローゼスはん」
「ぇ、何がです?」
「それより早くルイを起こそうぜ」
レスクがローゼスの持っていた薬を手に取った
「あぁ、そうだな」
ガリシィル達はローゼスをその場に取り残して、すぐさま研究室で寝てる僕を起こしに向かった
研究室のソファーで横たわっている僕を見つけるとすぐさま錠剤を飲ませる
耳がピクピクと動き、ゆっくりと僕は起き上がる
「ここは・・・何処、僕は一体・・・・」
「お前は魔王の攻撃で気絶しちゃったんだよ! ここはハウグリア城だ」
「そうなの?、ガリシィル」
「あぁ、アウルの言うとおりだ、それで起きてすぐで悪いんだがドラグリア大陸にすぐ戻るぞ」
その言葉聞いた僕は飛び起きた
「な、なんだって!?」
「アルジェスが大量の黒竜をつれて【ドラグレッサ】へ向かっているのだ」
ラジェスが言った
「そうか、やっぱり黒幕はアルジェスだったのか・・・・」
「ルイさん、もう大丈夫なんですか?」
「ごめんサラ、心配かけちゃったね。もう大丈夫だよ。」
苦笑する僕
その様子に安心したのかサラの表情も緩んだ
「よし、すぐに向かうぞ、俺の魔方陣の中に入れ」
ガリシィルが瞬間移動の魔法を唱えようとした時だった
ラッシュが首を振ったのだ
「すまんへん、ガリシィル、わしはここまでや」
「なに?どういうことだラッシュ!」
「わしは黒き殺し屋と呼ばれるあのアルジェスに立ち向かう勇気はあらへんねん、だから・・・」
「なに・・・貴様ぁっ!」
「落ち着けライ」
ラクがライを抑えた
するとガリシィルはラッシュにこう言った
「まぁ、これは俺達の国の問題だ。ここの大陸を脅かしていた魔王は倒したしな・・・・」
「すまへん、わしが出来ることと言えばこの大陸を案内することぐらいやったな」
「そんなことないよラッシュ」
僕はラッシュを励ました
するとそこにレイウェルが屋上から戻ってきた
「おぃぉぃシィル、ラッシュはともかく俺を置いて行くつもりだったのか?」
「・・・・・・五月蝿い、忘れていたわけじゃねぇっ!」
「な、何を怒ってるんだ?」
「ふんっ、兎に角行くぞ!、ラッシュ、お前はローゼスに礼を言っておいてくれ」
「わかった、あんたらも頑張ってくれ」
ガリシィルは魔法を唱えた
瞬間移動するリワープの魔法だ
その場にいたラッシュを残して、僕達はドラグレア大陸へ移動した
ドラグレア大陸はすでに北4分の1が黒竜の群れで埋め尽くされていた
統一国【ドラグレッサ】を目指して飛んでいる
それを食い止めるかのように先刻【ドラグレッサ】から向かった シリュウとレグラが黒竜の群れと激突し戦っていた

閃光の灼熱炎!!

宙に円を描いた光がすさまじい爆発音を鳴らし、あたり一面を炎で埋め尽くした
黒竜の群れはその炎に焼かれて消えていく、実体を残さないことからコピー竜であることが分かった
「なんて威力だ・・・黒竜の群れを一瞬で・・・・」
シリュウの横にいたレグラがつぶやいた
シリュウは閉じた瞳を開くと口を開く
「どうやら、まだまだ敵は来るみたいだね」
「くっ、数が多すぎるっ!」
一向に数を減らさない黒竜、次から次へと来てはシリュウの魔法で一掃されていく
するとシリュウはあることに気づいた
「しまった、これは囮だっ!」
「な、なにっ!」
黒竜を倒しながらシリュウはしゃべり始めた
「おそらく、アルジェスはすでにドラグレッサに向かっているはずだ、いくら黒竜の群れを倒しても姿が見えない」
「確かに、黒竜を引き連れているなら そろそろ姿を見せてもいいな・・・」
そんな中、そこへ援軍が到着した

氷雪風の射心っ!

あたり一面を氷雪風が吹き荒れる
黒竜達を捕らえると、一瞬で氷付けにした
「レグラっ! 無事かっ!」
シェイラスと【オルフランデ】からの援軍兵が駆けつけたのだ
「シェイラス、これは罠だっ!」
「どういうこと?」
そこへ【シアルフィア】から援軍を引き連れてディルタも合流する
「おぃおぃ、そんなに苦戦してなさそうじゃねぇか」
「・・・・・なんてことだ、皆ここにきたらドラグレッサが危ない」
シリュウが言った
「それはどういうことだ、俺達はお前ら四天竜王達に言われて援軍としてきたんだぞ」
シアルフィアから援軍としてきていたアシュラがシリュウに言った
「おそらくここにアルジェスはもういないんだ」
「なんだとっ!」

『ルイリヒト・・・無事でいてくれ・・・』

一方、ハウグリアから魔法で瞬間移動してきた僕達は【ドラグレッサ】にたどり着いていた
瞬間移動した場所はドラグレッサ城の王座の目の前だった
するとその場の後景は凄いことになっていた
ドラグレッサにいた兵達があちらこちらで倒れていて
黒竜1匹がルイリヒトの首を掴んで上に持ち上げていたのだ
それを見たリュカが思わず声を上げる
「親父っ!!」
するとその黒竜はにやりと笑うとこちらへ振り向いたのだ

続く