りぅの風森

第56話

第56話 異変

ライ達はヴァーレスの町に戻ってきた、
ルイとサラ、そして二人を助けに行ったガリシィルの帰りを待つ
「あつらはまだ帰って来ないのか」
ライは光雷剣を手に取った
「大丈夫だ、あいつらならきっと無事に帰ってくるはずだ」とリュカ
「でもよ・・・・やはり何かあったんじゃないのか?」チョロが言った
「かもしれないな」
ライが光雷剣を腰に掛けて言った
するとここでルゥが立ち上がった
「どうしたルゥ?」とチョロ
「・・・・すまない、悪いが私はここで別れる」
ルゥはフードを被った
「どうしてだ」
「私は賞金稼ぎ、セレスティを倒した今、もうここに長居する必要がないのだ」
「・・・・そうか、まぁ気をつけてな」
チョロがルゥを見送る
「あぁ、お前らもだがな、お前たちの仲間・・・無事だといいな」
そういうとルゥは宿屋を出て行った
出て行く途中に誰かとぶつかったが謝るとその場を後にした
そしてそのぶつかった相手がチョロの前で立ち止まった
見るからに海竜のようだ、背中には翼ではなくヒレが生えている
そしてそいつはチョロにこう言った
「ガシエル!! こんなところにいたのか!」
そいつはそう言った
そこにいた皆は「はぁ!?」と口にだしそうになって驚いている
「な、何だ、お前誰だ!?」
チョロは誰のことかわかっていない
「僕だよ、アドウィン=ウェーバー、昔は君と旅していたじゃないか」
だがチョロは首を振ってこう答えた
「すまない、俺は今、過去の記憶を失っているんだ、俺はお前を誰なのかさえわからない」
「・・・・そうか残念だ」
「お前は俺の過去を知っているのか?」
チョロはアドウィンの目を見ながら言う
「僕は知っている、君の過去を・・・・」
「そうか、だが俺はお前を思い出せねぇ・・・・・すまねぇ」
そういうチョロはこの場を離れて宿を出て行った
「・・・・・ガシエル」

「チョロの過去・・・・・」
ライは気になっていた、

『チョロの過去って一体・・・・・』

「まぁいいじゃないか?」
ラクはどうでもよさそうに言った
「ところで皆はここで何を?」
アドウィンは訊いた、それにライはこう答えた
「仲間の帰りを待っているのだ」
「仲間?」
「待っていれば分かる」そういうとライは側にあったイスに腰をかけた

一方僕達は・・・・

弱っているガリシィルを担いでルイはなんとか遺跡を出ていた
遺跡の周りは木や草が果てし無く生い茂っている
ここからの帰り道はガリシィルしか知らないのだ、だが肝心のガリシィルはまだ意識が戻ってはいない
「困ったな・・・・サラ、ここからどの辺の位置に町があるか確認してくれないかい?」
「はぁ~いわかりましたぁ」
そういうとサラは翼を広げて空へと舞い上がった
「う~んっと、あそこに川があって、太陽の位置があそこにあるから・・・・・」
サラは一人で呟いて、空から景色を覗いた
サラの視線には町など見当たらなかった、ただ広く広がる森林だけだ
「サラ、何か見つかった?」
地面から僕の声が聞こえた
「ううん、何もないですぅ、というかどうやらここは森林のど真ん中みたいですぅ」
「な、なんだって!?」
それを聞いた僕は驚いた
サラは地面に降りるとこう言った
「どうしましょう?このままだといずれ野生の魔物に襲われてしまいますよぉ、私達のマナもあんまり残ってないですし・・・」
「確かに・・・・魔物に襲われるのは今はまずいかも」
僕がガリシィルの様子を見て言った
その声をきいてガリシィルは意識を取り戻したのかどうかは知らないが口を開いた
「俺ならもう平気だ、降ろせ・・・・・」
「ガリシィル!?」
僕は驚いた、さっきまで死にかけていたとは思えないくらいの気力がガリシィルから放たれているのだ
僕は担いでいるガリシィルを降ろして、様子を窺う
「すまない、迷惑をかけたな・・・・・・」
ガリシィルは目を開くと続けてこう言った
「町へはここから西へ進み、ケヤキの木の見つけたらそこから北に進めばお前が黒竜と戦った場所があるそこからはお前の記憶で十分分かるだろう」
「分かった、ところでガリシィル・・・・傷は大丈夫?」
「・・・・・いつの間にか胸の傷が塞がっている、どういうことだ?」
「実はあの後・・・・・。」
僕は説明した、僕たちの前にバハムートがやってきたことを
するとガリシィルは驚いた
「馬鹿な・・・バハムートが俺を助けただと!?」
「本当ですよぉ、塞がらなかった傷が治ってしまったんですから」
「・・・・確かに胸の傷は治ったみたいだが」

『どういうつもりだバハムート』

「まぁいい、そんなことより町に戻りたいのだろう、お前の話は後でゆっくり聞いてやる」
「そうだね、サラ、行くよ」
「あ、はい」
サラは慌てて僕とガリシィルの後をついて行く

やがてガリシィル言ったとおりに僕と黒竜が戦った場所が見えた
その場を通ろうとした時、突然サラが何かに感じた
「待って、何か気配がするですぅ」
サラはそういうと周りを見わたす
「・・・・・・上だっ!」
いち早く何者かの位置を知ったガリシィルが叫ぶ
そいつは僕達の前に降りた、どうやら危害を加えるつもりは無いらしい
そいつの容姿はサングラスをかけて、古代的な紋章が描かれた衣服を着ていてる
よく見ると彼は鳥のような黒い翼を生やしていていた
「ok~ok~、大丈夫だお前らには危害を与えるつもりはない」
そういうと彼は袋から何かを手紙をとりだした
「お前の衣服に描かれた紋章は確かシアルフィアの・・・・」
ガリシィルがそいつの衣服に描かれた紋章を見て言った
「私は銀髪の竜に手紙を届けにきたものです、お前がガリシィルだな」
「そうだ、してその手紙の内容は?」
ガリシィルは話を進める、僕とサラには何を話しているのか理解できていない
「内容は知りません、ですからこの手紙を読んでくれればいいかと」
そいつは手紙をガリシィルに渡した
「お前の名はなんという?」
「私の名はバルザ、シアルフィアのアシュラ様に仕える伝言係です」
「伝言係と言ったな、リアンはどうした? アシュラの双子の弟であるリアンが伝言係だったはず」
ガリシィルは手紙を受け取るとそう言った
「詳しくはその手紙を読めば分かるはずです、では私は持ち場に戻らなければならないので失敬」
そういうとバルザは魔法を唱えて姿を消した、おそらく瞬間移動魔法リワープだろう
ガリシィルとバルザのやり取りを見ていた僕は不思議そうにガリシィルに聞いた
「何かあったの?」
「分からない、この手紙を見ないとな・・・・だが先に町に戻る事が先決だ」
そういうとガリシィルは再び歩き出す
しばらくして小さな川が流れるところに出た、町まではこの川を渡ればすぐだ
しかし、よく見るとその川は水が流れているというより凍っているのだ
「どうしたんだろう、こんな季節に川が凍るはずはないのにな」
僕が川の凍り方から見て言った
「恐らくだれかの魔法による影響だろう、すくなくとも自然のものではない」
ガリシィルが冷静に考えて言った
「そうだね、早く行こう」
そういうと僕達は町に向かった
そして今から丁度、数時間前のことだ

ここは西大陸の中心にある中立国家『アヴヴド』
その国に西大陸の国王達が集められていた
大規模な国通しの会議だ
「よく聞け西大陸の国王ども、今一度みんなで手を取り竜族を滅ぼそうではないかっ」
そう演説するのはハンター組織『リジェル』の創始者クリスだった
クリスの呼びかけで集まった西大陸の王達
はるか昔、竜族との戦いに敗れこの大陸へと追いやられた彼らは少なくとも竜族に好感を持ってはいなかったのだ
そんな中ただ一人だけその話に反対する者がいた
「なんの話かと思えば・・・・竜族が支配する中央大陸を我々で一丸で攻めようって話か」
異様に長い揉み上げが特徴的な人間がそういうと席をはずし立ち上がる
そして彼の付き人である側近も立ち上がった
「どこへ行くのだイチピモ国王っ!!」
「くだらない、俺は国に帰る、この件には参加しないしお前達で勝手にやってろ」
すると向かいの席に座っていた禿の人間が口を開く
「見損ないましたぞイチピモ陛下、お前もバハムートに恨みを持つ者の一人なはず」
「・・・・・黙れマルガーデ、お前の親父がバハムートと手を組み俺の国を滅ぼしたことを忘れたとは言わさねぇぞ」
「・・・・ですから、父の件は何度も謝ってるではないですか、それに今回ここに集まったのはバハムートの国を滅ぼすためですぞ?」
「お前たちは何もわかっていない、行くぞシャルル」
「はっ、イチピモ様」
そういうとイチピモとその側近であるシャルルは会議を抜け出した
その様子に周りは騒めくがクリスは別に驚きもしなかった
「まぁまぁ皆さん落ち着いて、彼らの国はまだ復興作業にあると聞きます、まだ余裕がないのでしょう」
「だがクリス、あいつらは唯一バハムートと戦った経験者だっていう噂だぜ、ほっとくのか?」
「所詮噂でしょう、彼らの国は事実バハムートの力に対抗できなくて一度滅んだのですから」
「それでクリス、この戦いに勝算はあるのかっ」
「もちろんですとも、御覧なさい」
するとその場に一人の人間と1匹の竜がやってくる
その途端に周りが再び騒めき始める
「まさかクリス、そいつらが今回の勝算に?」
「彼らはバハムートの裏切者、それも腕の立つ者です」
「人間の方は分かる、でも竜族を滅ぼすのに竜の力を借りるっていうのかっ」
「お忘れですか皆さん、今回はただ竜族を滅ぼす戦争ではありません、バハムートを殺すための戦争、そのためには竜の力を借りなくてはね」
「なるほど、確かに・・・・・」
「では皆さん、私の呼びかけに賛成ということでよろしいですね?」
「おぉーーーー」
人間たちは歓声とともに立ち上がった

一方でアヴヴド王国から帰国途中のイチピモ
会議を途中で抜け出した彼はモミー王国の国王だ
かつてガリシィルと共にバハムートと戦った人間の一人である
「イチピモ様、この件どうするですか?」
「俺には関係ねぇ、あいつらはバハムートの強さが分かってねぇんだ」
「ですが、彼らは本当に竜族を滅ぼすかもしれませんよ?、クリスという男、過去に雷竜の国を滅ぼしたそうです」
「なんだと・・・・」
「バハムートが敗れるということはなさそうですが、一応かつての仲間には知らせた方がよろしいのでは?」
「どういう意味だシャルル」
「彼らは竜族を滅ぼすといっています、それはすなわちガリシィルさんの身にも危険が及ぶかもしれません」
「・・・・・・そうだな、確かあいつの親友は今、中央大陸のシアルフィア王国の国王だったな」
「ではやはり?」
「あぁ、知らせといた方がいいだろう、あの国王もかつてはバハムートの側近だしな」
「わかりましたではすぐにでも、知らせてまいります」
「頼んだぞシャルル」
「はっ」
そういうとシャルルはその場から姿を消した
「何かあれば俺を頼ってくれガリシィル・・・・・」
イチピモはそう呟きながら自国へと向かうのである
姿を消したシャルルはシアルフィア王国の城へと瞬間移動していた
城の前にいきなり現れた人間に驚く門番の竜達
「な、何者だっ」
「待て、私はモミー王国のシャルルだ、アシュラ殿に話がある」
「モミー王国? どこの国だそいつは? アシュラ様に知り合いの人間が十六夜様以外にいるわけがねぇ」
「モミー王国は十六夜の祖国だと言えば分かるか?、とにかくアシュラ殿と話がしたい」
「待て・・・・・・十六夜様の知り合いなのか? それなら通してやらんでもないぜ」
「・・・・・確かに知り合いではあるが」
「よし、ならば通れ」

『ここで十六夜との関係が役に立つとはな』

シャルルは門番の許可を得て城の中へと入った
そして・・・・

「何、その話は本当か!?」
シャルルから話を聞いたアシュラは驚いた
「間違いないと思います、近々西大陸の人間たちがこの大陸を侵略してくるでしょう」
「こうしてはおれんな、今はリアンが不在・・・・・バルザ、バルザはいるか?」
「お呼びですかアシュラ様」
「リアンに代わり、お前が伝言を伝えろガリシィルのところへ急げ」
「しかし、銀髪の竜は今どこにおられるのか、ご存じなので?」
「・・・・・仕方ない、一度バハムートのところに行くぞ、シャルル、お前も付いてきてくれるな?」
「ぇっ、私もですか!?」
「そうだ、今回の件、全容を知るお前からバハムートに直接話してもらう」
「そんな・・・私はガリシィルを助けるつもりで、別にバハムートを助けようとは思ってないのですが」
「・・・・・ガリシィルの居場所が分からない以上仕方ないだろう、それに今のうちにバハムートに恩を売るのはお前にとっても悪いことじゃないと思うぞ」
「それはどういう意味ですか?」
「お前たちの国は今回の件に関与しないのだろう、それならお前達の国も危険になるということだ」
「・・・・・それはつまり、情報を手供することでバハムートの保護下に入れということですか?」
「お前もバハムートの恐ろしさを味わっただろう? 歯向かうよりは幾分マシだ」
「…分かりました、ようやく復興しつつある国を滅ぼされるのもごめんです、行きましょうバハムートのところへ」

そんなことがあったのだった。

そして物語は再び現在に戻る。
僕達はなんとか無事にヴァーレスの町へ戻る事が出来た
宿ではライ達が帰りを待っていた
「遅かったな、無事で何よりだルイ、サラ」
ライが僕の肩を叩く
「ご心配をおけしましたぁ~」とサラ
「お前たちこそ無事でよかった、セレスティは倒せたのか?」とガリシィル
「それなら心配はない、セレスティは私が無事に倒した」
「父さんが!?そうか・・・それでシュアラースのことは何か言ってた?」
「すまないルイ、セレスティはもはや別の生き物になっていて、まともな話は特に何も・・・・・」
「そうか・・・・・ところでルゥは?」
「ルゥならもう旅立ってしまったよ、セレスティを倒して私たちと共に行動する理由がなくなったそうだ」
「なるほど・・・・ところで後ろにいるのは?」
僕の視線がアドウィンの方に向けられた
「僕はアドウィン=ウェーバー、チョロの知り合いとでも言おう、といっても本人は記憶をなくしているらしいが・・・・」
「そうか、仲間は大勢いた方がいいし、よかったらついてくるかい?」
僕の誘いにアドウィンは承諾した
「僕でよかったら」
「期待するよ・・・・それよりガリシィル、話があるから部屋まできてくれないか、サラもね」
「あぁ・・・」
「はぁ~い」
ガリシィルとサラはそういうと僕と一緒に宿の部屋に入っていった
するとアドウィンはガリシィルの様子を見て口を開いた
「彼に関わるのはやめといた方がいい」
「・・・・何を根拠にいきなり」
ライが取り出していた光雷剣を鞘に収めて言った
「彼は何かとてつもない物を背負っている、僕には分かる」とアドウィン
ライはそんなことを聞いても眉一つ動かさず返事した
「ガリシィルはバハムートの血縁者だからな、そうかも」
「バハムート!?」
その言葉を聞いてアドウィンが驚く
「バハムートといえば、聖戦時代から現在にいたって生存してる伝説のあの竜か?」
「そうだとも、信じられないと思うがこれは事実だ」
ライはそういうと宿を後にした
「あいつがバハムートの血縁者・・・・・・」
「アドウィンとやら、彼には彼の事情があるに違いない、俺らは気にしないでおこう」とラク
「・・・・・そうだな」

一方、宿を出ていったチョロは空を眺めていた

「俺はここで何をしているのだろう」
彼はそう呟くと瞳を閉じて何かを思っている

『俺は過去を知るために旅をしていたんじゃなかったのか』

ここはチョロの精神の中、最近彼は考え込むと別の世界である自分の思考空間に行ってしまうのであった
この世界には彼の精神がいるところ、たまに誰かの声が聞こえるだけである
そして今回もまた誰かの声は聞こえた
「ガシエル、また考え事?」
「あぁ・・・またお前か、お前は誰なんだ?何故声だけ聞こえてくる?」
「私は貴方の・・・・分かるでしょガシエル?」
「そうだったなアサナ・・・・」

そうだ、俺の中に出てくる声の正体はアサナだ
俺とは幼馴染だったアサナ、今から8年前に死んだ俺の恋人
「待てよ・・・・8年前?・・・・・」

チョロは胸が苦しくなった、見覚えのある風景が彼の脳裏に映る
8年前のあの風景が映し出されたのだ
————————-チョロの回想————————————————————-
「ガシエル、お願いだから待って・・・・・お願い」
そう言ったのはアサナだ
「放せアドウィン、俺は親父の仇を」
「よせ、ガシエルっ!! あいつは僕達じゃ適わない」
ガシエルを抑えているのはアドウィンだ
「だ、だが・・・・」
「ガシエル危ないっ!!」
ガシエルの後ろから何者かが攻撃を仕掛けるのを見たアサナが飛び出したのだ
ズシャッ
勢いよく切り裂かれる身体、だがそれはガシエルの身体ではなかった
「おいっ、しかっりしろアサナっ!」
アドウィンが血まみれになったアサナを揺すっている
どうやらガシエルを庇ったらしい
「あ、アサナっ!!!!!」
ガシエルは地面に崩れ落ちる

ここで8年前の風景は途切れた
———————————回想終わり—————————————————————-
「今のは俺の過去の記憶の一部・・・・か?」
「そうよ・・・・」
「アサナは結局あの日以来この世から去ってしまったのだな」
「そう、そして今は貴方の思考に精神を留めているの」
「アサナ、俺はこのままあいつらについて行っていいのだろうか」
「それは貴方が決めるのですよ、私はそのために貴方の思考の中にいるわけじゃないの」
「そうか、俺が決めなければいけないのか」

しばらく黙り込むチョロ
そして何かを決意した彼は再び口を開く

「アサナ、俺は少しだけ記憶を思い出せた気がする、そしてこれからのやることも検討がついた」
「そう、よかったわ、じゃぁ行って来なさい元の世界に」
そういうとアサナは思考から消え去り、チョロも別世界から現実世界に戻った

気がつけばヴァーレスの町の真ん中にある広場のベンチで横たわっていた
「・・・・アサナ」
チョロは立ち上がると宿へと向かって歩き出した
宿に向かう途中、様子が変だということにチョロは気づいた
夏だというのに異常な寒さ、噴水の水は凍っていたのだ
「馬鹿なっ、さっきまで気温は暖かかったのに急に寒くなってきやがった」
そういうとチョロは急いで宿に向かって走り出した

一方そのころ宿の部屋では僕とガリシィルが会話をしていた、
サラは窓から外の風景を覗きながら何かを書きとめている

「で、お前の話とはなんだ?」
最初に言い出したのはガリシィルだ
「あぁ、お前の病気のことだよ」
「・・・・・。」
ガリシィルは胸の傷跡を抑えた
「隠さないでよガリシィル、みんな気づいてるんだよ!!、お前本当はもう・・・・・」
「心配するなルイ」
「まさかガリシィルさん・・・」
「何も言うなサラ、俺はまだ死なないから心配するな、俺は使命を終えてから朽ち果てるつもりだ」
「使命?、一体なんだよそれはっ」と僕
「・・・・・俺の父、アリュギオスと交わした約束、ラハヴァの子孫を守るという使命だ」
「言ってる意味がわからないよ」
「そうだな、今のお前にはわかるはずはない、それよりアシュラからの手紙を読まなきゃな」
そういうとガリシィルは森で渡された手紙を見始めた
彼がその手紙を黙読し終えるとガリシィルは突然手紙を丸めてゴミ箱に棄てた
「ルイ、悪いが俺の事情に付き合ってもらうぞ」
「ちょっとまってよ僕の話はまだ・・・・・っ」
「心配するな、俺を信じろ」
「・・・・・・ガリシィル、せめて病気の名前ぐらい教えてよ」
「竜死病、お前も聞いたことがあるだろ? どうしもないんだ分かってくれ」
「そんな・・・・・嘘だろ?」
「あぁ、やっぱりそうなんですねぇ・・・・・」
「そんなことより、今からアルスティ王国に行く、とても深刻のようだ、今回ばかりは俺だけでは済みそうにない」
「アルスティだって? 前から思ってたけどドラグリア大陸はどうなっているんだ? セレスティの件だって何か裏があるんじゃ」
「説明している暇はない、皆を呼べ」
そういうとガリシィルは部屋を出ていった
「ルイさん、ガリシィルの病気・・・・・」
「やっぱりだったね、・・・・バハムートは病気までは治せなかったということかな」
少し前にガリシィルの胸の傷を癒して見せたバハムートを思い出す僕
「とにかく僕達にはどうするこもできないし、今はみんなのところに行こう」
「そうですねぇ、では早速行きましょうルイさん」
サラは部屋を出て行った
「・・・・その元気を僕もくれよサラ」
僕はそういうと部屋を後にした
宿のロビーでは何やら騒がしい、一体何があったのだろうか
「どうしたんだ皆」
僕がロビーにおりてくるとチョロが話を始めた
「見てくれ、こんな時期に雪が降り始めたんだ」
それを見て僕は目を擦った
「これは一体・・・・」
「異常気象だな、おそらく何かが天候を操っているに違いない」
ガリシィルが呟くと宿を出た
「お、おぃ、寒くないのか?」
その行為を見てラクは言った
「・・・・・これくれいどうってことない」
ガリシィルはそう言い放つと頭に掛かる雪を払った
「そうだ、皆聞いてくれ、次の行き先が決まったんだ」
僕は地図を開いて指で指した
「そこは何処だ?」
みんなの反応からすると知っているのはリュカとガリシィル以外いないみたいだ
「アルスティという国だ」口を開くリュカ
「あるすてぃ?」首をかしげるチョロ
「ここから南西に離れた場所にある王国だよ、ガリシィルの事情で僕たちも行く事になったんだ」
「それはいいのだがどうやって行くつもりだ?」
ライが口を開いて外に出る
「外は見ての通り時期はずれの大雪だ、こんな中を飛んで行けると思っているのか?」
「そんな野蛮な移動はしないよ、ガリシィルの魔法で目的地にワープするんだ」
「そういうことだ、お前ら早く外に出ろ」
ガリシィルは何やら杖で魔方陣を描き出す
するとリュカはルイ達とは離れていく
「父さん? どこに行くの?」
「・・・・・・・ルイ、何があっても死ぬなよ」
「なんだよ父さん、いきなりどうしたの?」
「いやなんでもない、それより私はお前達とは共にいけない」
「そんなリュカさん、どうしてですかぁっ」とサラ
「私には別にやることがあるからだ、セレスティの件もまだ片付いたわけではないからね」
「それってどういうこと?」
「たしかにセレスティは倒した、だがセレスティが守り竜をやめた理由はまだ分かっていない」
「確かに・・・・セレスティから事情は聞けなかったんだよね?」
「そうだ、そんな余裕もなかった・・・・だから私はそれを調べる」
「どうしてそこまでするんですぅ?」
「サラ、言わなかったかい? セレスティは私と同じ竜騎士団にいたからだよ、かつての戦友がああなった理由が知りたい」
「・・・・わかったよ父さん」
僕とリュカが話ている間に
やがてガリシィルが描いた魔方陣から不思議な光が発した
「何をしてるんだルイサラ、置いてくぞっ」
「待ってよガリシィルーーー」
「気を付けろよルイ」
「うん、父さんもね」
「リュカさんも気を付けてくださーい」
リュカと別れをつげた僕とサラはみんなと同じように魔法陣の上に立った
するとガリシィルは口を開く
「魔方陣よ、我の名において結界を解除する、開け異空への扉っ!!」
ガリシィルはそういうと杖を地面に突き刺した
ズカッ・・・・
すると魔方陣から光の帯が出現し、僕達を包む
やがて光は大空の彼方に消え、それと同時に僕達はこの場所から消えていった

続く