りぅの風森

第57話

第57話 戦の準備

僕達はリュカと別れ
ガリシィルの魔法でアルスティ王国へと行くこととなった

そして魔法で瞬間移動したところから物語は始まる

しばらくして僕達はアルスティ国の目の前に出現した
「結局リュカはついてこなかったな」とライ
「父さんには別のやることがあるみたいだよ」
「そうか」
「ところでここは?」
チョロが目の前に立っている大きな城を見て言った
「アルスティ城の門前だ、驚く必要はない」
ガリシィルはそう言って門番に軽くあいさつをした
「シアルフィアのアシュラに頼まれてやって来たガリシィルだここを通してもらおう」
「おぉ、貴方様があのお方の・・・・するとこちらは?」
門番はすぐに僕達を通してくれたどうやらガリシィルの連れだと分かったらしい
「ところでガリシィル、この国に来て何をするっていうのさ?」
「分からん、兎に角あいつに会ってみないと」
ガリシィルは城の中に入った
「待っていたよ、ガリシィル」
その声には僕にも聞き覚えがあった 蒼い鬣に水玉模様の斑点が身体にいくつもある竜
「でゅ、デュック!?」
僕は彼を見て声を出した
「おや、久しぶりだねルイーっ」
「なんだお前、ルイを知っているのか?」
ガリシィルの問いにデュックは答えた
「あぁ僕が通っていた竜成学院で同級生だったんだよ」
「・・・あぁ、そういえばあの時いたな」
ガリシィルは昔の出来事を思い出した
僕が幼い体で禁断魔法を放った場面だ、
竜成学院は仔竜が集まって教育を受ける場所
人間で言う学校だな、ただ違うことは自宅通いではなく寮生活だということ
ここでは卒業というものはなく、やる事がなくなったものは勝手にでって行っていいという
僕はここで2年間ほど魔法を習ったんだよ まぁ正確には授業でじゃなくて図書館で独学したんだけどね

詳しくは第1話を読み返してみよう。

「それで?なんでルイがここに?」
「俺が連れてきた」
ガリシィルがわけをすべて話した
それを聞いてデュックは口を開いた
「そうだったのか、じゃぁ用件を言うよ、実は・・・・ドラグリア大陸自体を征服しようと企む組織があらわれてね」
「・・・・・その組織っていうのは?」
「どうも信じがたいことなんだが、人間が僕達竜族をこの世から消そうとしているらしい」
「な、なんだと?どういうことだ」
それを聞いたライが突然話に割って入ってきた
「落ち着けライ、まだ話は終わっていないぞ」
チョロがライを抑えた
「・・・・すべての人間が竜を狙っているわけではないだろう?」とガリシィル
「そうだけど、西の大陸である・アルデシア大陸の人間は打倒竜族の軍隊を結成したらしい」とデュック
「・・・・・どうして、このドラグリア大陸とどういう関係が?」
僕は首を傾げた
「一見関係ない話だけど、アルデシア大陸の人間はもともとこの中央大陸にいたんだよ」とデュック
「いつの時代の話だよ、そんな大昔の恨みを持つ人間が何処にいるんだっ、それに今はアルデシア大陸で人間だけが住んでて平和だったんじゃ?」
「そのことなんだけど、バハムートの部下であった奴が裏切り、アルデシア大陸で打倒バハムートと呼びかけたらしいんだ」
「バハムートを裏切った奴が? まず裏切った時点で瞬殺されるのがオチだろ、どうしてそんな奴らが生きてるんだ?」とガリシィル
「それが分からないんだ、そこでバハムートの血縁者である君がバハムートに会って確かめてほしい」
「難しいことを言うな・・・・。俺はあいつとはあまり会いたくないんだ」
ガリシィルは視線をそらした。
「頼むよガリシィル、これは君の親友でもあるアシュラさんの頼みでもあるんだ」
「しかし・・・」
「その必要はないわ」
いきなりガリシィルとデュックの会話のやり取りは中断されガリシィルは振り向いた
その言葉を聞いて、見ていた僕達も後ろの方を振りむく
声の主を見たガリシィルは目の色を変えた
その声は僕もサラも知っている
「あんたには直接、私に会う度胸はないもの・・・・仕方ないことねぇ」
堂々と城の中に入ってきたのはまぎれもなくバハムート本人だ
「バハムートッ!!」誰もがこう言った
彼女こそドラグリア大陸全土を一度は統一し聖戦竜とも言われた終わり無き命を持つエンドレスバハムートラグーン
「で、貴様は何のためにここにきた」
ガリシィルの態度が一変した、彼は未だに母であるバハムートに恨みを持っているのだ
「なんだいその目は、仮にもお前の傷を治してやったというのに」
「五月蝿い黙れっ!!」
「まぁいいわ、そこをお退き」
バハムートはガリシィルを突き飛ばすと瞬時にデュックの前に現れた
突き飛ばされたガリシィルは僕に受け止められて、堰をした
「くっ・・・ゴホッゴホッ」
「病人は大人しくしてるものよ」
「バハムート様、自らこちらに来られるとは光栄です」とデュック
「ふん、別にこの国がどうなろうと私には関係ないがねぇ、そこの坊主に感謝しな」
バハムートは僕を見て煙管を加えた

『え、なんで僕を見たんだ?』

「で、今はどういう現状であるかご存知ですか?」
「・・・・・」
バハムートは何も言わずギロリと視線をデュックに向けて
煙管を咥えながら話し始めた
「西の大陸のやつらがここの大陸を支配しようと企てているのでしょう?」
「流石に知っていましたか」
「西大陸の人間から情報提供があったのでねぇ」
バハムートの脳裏にアシュラに連れられたシャルルの姿が映し出される
「そうなんですか!、何か知ってることがあれば教えてください」
「そうね・・・・ディルタ!」
そう呼ばれてバハムートの横にオッドアイの黒竜が姿を現した
その黒竜をチョロは見たことがあった、そうアグライド遺跡へ偵察しに行った時に目を合わせた奴だ
「お前、あの時の・・・・・っ」
「・・・・なんだい、あんたたち知り合いかい?」
「少し前に目を合わせただけです、それよりバハムート様、何か?」
「そうだったわ、裏切り者だと思われる資料を出してくれるかしら?」
「それならこちらにありますが」
ディルタは異空間からなにやら用紙を出現させた
「やはり前四大天竜の座にいた十六夜という奴が怪しいと思われます、地位が降格されてからは姿が見えません」
ディルタはさらに裏切り者のリスト書に刻まれた人物たちをあげていく
「他に可能性があるのはフォルオシャン、バハムート様の御前で暴言を吐いたあのクズです」
「そうか、奴らがアルデシア大陸に行き来したか」
「どうしましょうか?」
「・・・・・確証がないからねぇ、とりあえず見よ」
「分かりましたバハムート様」
そういうとディルタは瞬間移動した、消える際にチョロと目が合ったが彼は何も言わなかった
「デュックとやら、この件に関してはおそらくその二人が手を貸してるとみたわ、とにかく今わかってるのはそれだけねぇ」
「そうですか、情報提供ありがとうございます」
「それじゃあ、私は国に帰らせてもらうわ」
そういうとバハムートはルイ達の目の前から姿を消した
「くそっ、バハムートめ、思いっきり俺を突き飛ばしやがって・・・・」
ガリシィルはゆっくり立ち上がった
「大丈夫かガリシィル?」
デュックが心配そうに言った
「心配するな、それよりこれからどうしろと?」
「これからアシュラのところに向かってくれ、ここよりシアルフィアの方が深刻なんだ」
「知っている、アシュラからの手紙を見たからな、行くぞお前ら」
そういうとガリシィルは僕達を連れて行こうとした
「待ってくれガリシィル、ルイはこっちに残っていてほしいんだ」
「なぜだ?」「えっ なんで僕だけ!?」
そういうとガリシィルは立ち止まった、僕も驚いた
「少しね、大事な用があるんだ」
「そうか、こんなバカでもお前の役に立つなら置いていこう」
「誰が馬鹿だって!! 聞こえてるぞっ・・・・まぁいいや、ガリシィル、サラと皆を頼むよ」
「分かっている、こいつらは俺が引き受けるからお前もしくじるなよ」
「分かってるよ」
「あっ、ルイさんこれ・・・・」
サラが僕に何かを渡した、サラが左手に装備していたミスリルの腕輪だ
「サラ?」
「お守り代わりに持っておいてください、私は右手にもありますから」
「うん分かった、ありがとう♪」
僕がそういうとガリシィル達を見送った
そのままミスリルの腕輪を左手にはめるとデュックの方にふり向いた
「ところで、どうしてまた僕を?」
「君にしか出来ないから残ってもらったんだよ」
デュックはそう言った
「ちょっとデュックッ!! 早く来てぇっ!!」
奥の方にある階段から誰かの声が聞こえてきた
「あ~・・・エリーの奴また何かやらかしたな、待って今行く」
「そういえば君はエリーと出来てたんだね」
僕は笑った
「五月蝿いなぁ、君だってさっきの女の仔といい感じじゃんっ」
「ぅっ・・・・」僕は顔を赤らめた
確かに否定はできない、サラは大好きだ
「とにかく、僕についてきて」
そういうとデュックは僕を引っ張って階段を下りて行った
「エリー、今度は何をしでかしたんだ」
「デュック!4秒遅刻よっ!!」
地下の部屋にいたエリーが怒っていた
「4秒ぐらいいいじゃないかっ!! それより何かあったのか」
「実は聖戦魔法の事なんだけど・・・・」
「何か分かったのかい?」
「いや、全然・・・・むしろお手上げよ、こんなに資料を漁っても何も見つからないんだもの」
机の上にはいくつもの書物が散乱していて、床にも沢山の本が転がっている
その様子に僕は苦笑いした
「・・・・なんだか竜成学院の図書館にいるみたいだ」
その声を聞いてエリーはようやく僕の存在に気付く
「あ、もしかしてルイ? ルイなの? うっわー全然変わってない」
「・・・・・うるさいなぁ、これでも成長したんだよ」
「髪が伸びたようにしか見えないけど、とにかく久しぶりねルイっ」
「うん、ところでなんで二人ともこんなところにいるんだ? ここはアルスティのお城だよね?」
「あ、ルイは知らないんだっけ?」とデュック
「だってデュックは最果ての鉱山にいるラジェスのもとで暮らしてたし、エリーも寮暮らしだったでしょ?」
「その件なんだけど、バハムートが世界征服をやめた際に僕はラジェスのもとを離れたんだ、エリーは僕が連れてきた」
「それでどうしてここに?」
「もう察しが悪いなぁ、僕この国の王子だったんだよ、今はこの身なりで国王やってるんだ」
「えぇっ、デュックがアルスティの国王!?」
「そうよルイ、それにデュックはあの聖戦竜シレヴィーユの子孫なのよ」
「なんだって!? そんなの初耳だよ」
「だって学園にいた頃は僕も聖戦竜の子孫だとは知らなかったからね。前に父上に聞かされたばかりだよ」
「父親って・・・・ラジェスじゃないよね?」
「彼は遠い親戚のおじさんさ、僕の父上は少し前までこの国を治めていた『ハヴァ』だよ、今はもう亡くなったけどね」
「なんか、その、ごめん・・・。」
僕はデュックから視線をそらした
「何、気にすることはないよ、僕を育ててくれたのはラジェスだしね」
「それで僕にしかできないことって?」
「実は僕と一緒に聖戦魔法を探してほしいんだ」
「どういことだいデュック」
「僕はシレヴィーユの子孫だってことは話したよね?、だけど聖戦魔法がどこにあるのか分からないんだ」
「デュック、聖戦魔法の魔導書はシレヴィーユの墓場にあるらしいわ」とエリー
「なんだエリー、やっぱり聖戦魔法について分かってたんじゃないかっ」
「けれどそれが何処にあるのか分からないの 雪国がある大陸としかこの書物には書かれてなかったの」
「なんだか分らないけど、ようするに聖戦魔法の魔導書を探せばいいんだよね?」
「何か分かるのルイ?」とエリー
「うーん、こういう時はお母さんに聞くしかないかも、案内するよ」
確か僕の母さんがいる国は雪国だった
バハムートの妹でもあるし、聖戦魔法のこと 何か知ってるかもしれない
そう思って僕は口にした
「その前に、旅の準備はした方がいいわよ、城下町で下準備して来たら? 私達はここで待ってるから用意ができたら言って」
「いやいいよ、僕は特に買い物する理由がないからね」
「え、どうして?」
「僕もみんなに黙ってたことがあるんだ、僕は聖戦竜ラハヴァの子孫なんだよ」
そういって僕は聖戦器スカイファルコンをデュック達に見せた
それを見たデュック達は驚いた
「す、すごい、ルイも聖戦竜の子孫だったんだねっ」
「うん、まぁーね、それじゃあ行こうか、エリー、デュック、僕の手につかまってっ」
「あ、ちょっと待てルイ、一国の王が無断で国を留守にするわけにはいかないよ」
するとデュックは兵を呼んでくる

「というわけなんだ、僕たちはしばらくここ留守にする」
「しかしデュック様、今はそのようなことをしてる場合ではないでは?」
「分かってる、だけど聖戦魔法さえ手に入れば、今回の騒動も最小限に抑えらるかもしれないよ」
「・・・・・わかりました、気を付けてください陛下、留守の間も我々がこの国を守ります、エリー様もどうかご無事で」
「えぇ、わかってるわ」
「えっと・・・・今度こそ準備はいい?」
「あぁ、頼むよルイ」
そうして僕はデュックとエリーを引き連れて母さんのいるオルフランデ王国へと魔法で瞬間移動した

少し時が遡りシアルフィアへ向かったガリシィル達は・・・・・。

シアルフィアの城下町はすでに騒がしかった
「・・・かなり騒がしいな」
ライが耳を塞ぎながらガリシィルの後ろを歩く
「仕方ない、ここもかなり危険な状態だからな」
ガリシィルは軽く説明すると城の前で立ち止まった
門の前には赤い髪をした一見ガリシィルと同じ背丈の竜が立っている
「来たか、ガリシィル」
彼はガリシィルの知り合いらしい、もっとも2人は共に誓い合った親友だそうだ
「アシュラ、どうしたというんだ」
彼の名はアシュラというらしい、彼の腰には暗黒竜士レアルの聖戦器ミィルグラスがぶら提げられている
「・・・・・先ほどこの大陸の真西にあるアルスターが落城した」
「・・・・アルスターか、あそこは弱者が溜まってるからな、それで?」
「奴ら、アルデシア大陸の人間がこの大地ドラグリアを支配しようとしているのは聞いたか?」
「あぁ知っている、ここに来る前にアルスティに立ち寄ったからな」
「そうか、じゃぁまだアルスティは落ちてないのだな」
「そうだ それがどうした?」
「分かった、今夜、奴らに仕掛ける、お前らの力を借りるぞ」
「今夜じゃ、まにあわねぇよ今すぐ出向くべきだ、奴らの中にはあのバハムートに仕えていた奴が少なくても2人いるらしい」
それを聞いてアシュラは戸惑った
「やはり・・・・だとすると一人は十六夜か、ドラグレッサに立ち寄った際に姿を見かけなかった」
「どうするのだガリシィル、俺たちはどうしたらいいんだ?」
ガリシィルの後ろで会話が終わるのを待っているチョロが口を開いた
「そういえば後ろのにいるのはなんなんだ?」
アシュラが言った
「俺の今の連れだ・・・俺一人加勢するよりはマシだろう」
「そうだな、悪いが会話が続きそうだ、君たちは客室で待っていてくれないか」
そういうとアシュラはチョロ達に言った
「客室って・・・・何処だよ」
チョロが頭を掻いて言った
「それなら僕が案内しますよ」
そこに出てきたのはアシュラの息子であるシュラだった
彼の頭には王である証である冠を乗っけている、見た目はまだ若くルイ似た幼さを感じる
「誰だ?」
「僕はシュラ、よろしくお願いします」
そういうとシュラはチョロ達を客室に連れて行った
客室とは言ったものの、見た目は物凄く綺麗で大きなソファーが4つぐらい置いてあった
天井ではシャンデリアがキラキラと光っている
「流石・・・城の中だな」
そんな内装を見てラクが言った
「まぁ、ゆっくりしてってください、父さんの話はとても長いから多分1時間は待つことになります」
シュラはそういって部屋を出て行った
ガチャッ

「シュラ王子、こんな所にいてらしたのですか」
客室から出てきたシュラに声を掛けたのはシアルフィアに仕えるラシルだ
「あぁ、ラシル、今日は父さんの親友が着ているんだ」
「そうですか、それより王子、ここに一人でいては大変です、すぐに王室にお戻りください」
「そうだね、今戻ろうとしたところだよ、ラシルもついてきてくれ」
「王子がおっしゃられるなら従います」
そういうとラシルはシュラを王室まで付き添った

しばらくしてガリシィルがアシュラと会話を終えてチョロ達のいる客室に入ってきた
ガリシィルは頭を掻いてこう言った
「ライ、ラク、お前らは今すぐに出れる準備をしろ、すぐに戦に参加する」
「え? お、俺たちは?」
チョロが言った
「お前たちはアシュラと行動を行ってもらう」
「なるほど、つまり後から追撃するということですかね」
アドウィンが立ち上がった
「まぁ、そんなところだな、だが・・・・サラはここに残ってもらう」
「え?・・・それはどうしてですかぁー?」
戸惑うサラ
その様子を見てガリシィルはこういった
「ここに残って怪我人の治療にあたってくれ、この国で回復魔法が使えのはアシュラの双子の弟リアンしかいないんだ」
「それならば仕方ないですね、頑張りますぅ~」

「さてどうしたものか・・・・」

ガリシィルが窓の外を覗いた
ガリシィルの脳裏には災厄の事態が映し出される
「・・・・・・・俺の体がもてばいいが」
そう呟くと彼は部屋を出て行った

ちょうどその頃 僕達はオルフランデ王国にいた
僕の前に幼い竜が王座に腰かけている、傍らにはガリシィルの兄シリュウの姿も見えた
「やっぱり来たのねルイ」
「母さん、久しぶりっ」
「そうね、何か月ぶりかしら・・・・・・」
「あれがルイのお母さん!?」
驚くデュックとエリー
無理もない、見た目は完全に幼い竜だ、ルイよりも幼く見える
「あら、初めて見るお友達ね」
「うん、デュックとエリーだよ、それより母さんに聞きたいことがあるんだ」
「それならここから南東にあるわよ」
「え? まだ僕何も言ってないよ」
「私には分かるのよ、探してるのはシレヴィーユの聖戦魔法でしょ?」
「ど、どうしてそれを!?」
「ルイ、ヒリュティス様は僕と同じように未来予知ができるんだよ」とシリュウ
「そうだったのかっ、ありがとう母さん」
「でも待ってルイ、途中、あなたの前にとてつもない敵が待ち受けているわ」
「ぇ・・・・・それってどういうこと?」
「分からないわ、私の未来予知でも完全に読めない・・・・・なんだか何か嫌な予感がするわ」
「心配ないよ母さん、僕はあれから聖戦器を手に入れたんだ、それに一度油断して痛い目にあってるから二度目も油断しないよ」
僕は黒竜に生贄にされそうになったことを思い出した
「でもルイ・・・」
「心配ないですよ、僕達もついていますから」とデュック
「・・・・・・そうね、貴方は無事に聖戦魔法は覚えれるみたいだし、子供もできるみたいね」
「ですって、よかったわねデュック」
「あ、あぁ」照れるデュック
「それじゃあ僕達急いでるからこれで失礼するね、また来るよ母さんっ」
「えぇ、気を付けてねルイ」
そうして僕達は母さんと別れた
目指すはシレヴィーユの墓だ
それはここから南東にあるという
たが、僕達を見送ったヒリュティスは怖い顔をしていた
「どうしたのですかヒリュティス様?」
「やっぱり心配だわ、シリュウ、ルイを、私の息子を助けに行ってくれるかしら」
「・・・・・・わかりました、こっそり後を付けておきます、それよりヒリュティス様はお一人で大丈夫ですか?」
「私の事は心配いらないわ、ここに人間たちが来る気配はしないもの」
「そうですか、ではやはり中央大陸の方で騒ぎが起きるようですね」
「いいから早く行って、ルイ以外にもあなたの弟にも影が見えるわ」
「なんだって・・・・ガリシィルにも!?」
普段は目をつむっているシリュウだが
ガリシィルの事を聞くと目を見開いた、彼はこう見えて弟思いなのである
「わかったよ、すぐに彼らの後を追うとしよう」
そういうとシリュウは僕たちの後をこっそりとつけるのであった

しばらくすると僕達はそれらしき場所にやってくる

「何処にあるんだい?その神器は・・・・」
僕はあたりを見渡した、墓というよりは神殿のようだった
中には水晶が張り巡らされていて、自分の姿が幾度となく映っている
「さぁ?墓にあるとは分かっているのですが」
「あっ、エリー、こっちに十字架が立ててあるよ」
僕が黄色い十字架を見つけて言った
「それが墓みたいですね、しかし・・・墓を掘り起こしていいのでしょうか?」
エリーが首をかしげた
「いやエリー、こんな水晶でできた墓を掘り起こすのは無理等しいよ」とデュック
「ですよねぇ・・・・・」
「そうだエリー、君の竪琴で聖戦時代の名曲を弾いてみてくれないか?」
「え?デュックどうしてそんなことを?」
「そうだよデュック」
エリーと僕は疑問に思った、それもそのはず
急いでいるという時にいきなり竪琴で音楽を奏でろと言うのだから
「父さんが死ぬ前に一度聞いたことがあるんだ、とにかくエリーやってみて」
「・・・分かったわ」
そしてエリーはデュックが言ったように竪琴を奏で始めた
綺麗な音色が神殿を轟かせる
やがて音は水晶の振動により重複し始める
すると僕の持つスカイファルコンがかすかに光り始めた
「これは!?」
「ルイの聖戦器が反応している・・・・もしかすると僕達が探しているモノも同じ反応を示すかも」
「よし、じゃあこれと同じ反応している水晶を探すよ」
僕はそういうと辺りを撤退的に調べ始めた
エリーは休むことなく竪琴を奏で続け、デュックもまた辺りを探し始める
しばらくして僕は一つの光を発見する
それは水晶にしてはやや蒼っぽく、一目見たらわからない色をしていた
「これだよエリー、デュック」
僕がそういうとエリーは竪琴を奏でるのをやめた
デュックも僕のところへやってくる
「ここね、よし・・・・めんどいことはもうしないわ」
「まさかエリー、何をする気だっ」
「デュック、ルイ、離れててっ」
するとエリーは拳をその水晶当てると技を繰り出した

爆雷十連撃っ!!

数十回にわたる勢い余った打撃が水晶に打ち込まれてる
「お、おぃっ・・・手は大丈夫なのか!?」
「彼女はああ見えても格闘家なんだ、僕達よりも打撃に関しては天才的だよ」
「そ、そうなのかい? エリーが技を繰り出すのは初めて見たよ」
そんな僕の言葉には気にもせずさらに技を繰り出すエリー

蒼炎雷神撃っ!!

もの凄い速さで殴り込み、そして蹴りも入れ始めた
最後に思いっきり尻尾をぶつけてみせた

びきぃっ・・・・ピシッ・・・ピシッ

水晶に罅が入り今にも砕けそうだ
「・・・あとは頼むわ、今ので私の手の骨にも亀裂が入ったみたい」
エリーは地面に腰を下ろした
「素手で無茶するからだよ」
そういうと今度は僕が水晶に攻撃を仕掛ける
ただのパンチだ
スカイファルコンを装備して殴ったので亀裂の入った水晶は簡単に砕く事ができた
水晶を砕くとそこには箱があった
「この箱は?」
僕が箱を取り出すとエリーとデュックに見せた
「その中に神器が入ってるはずだよ」とデュック
ルイはすかさず箱を開ける、だがその中に入ってたのはただの本だ
「・・・これ本みたいだけど?」
「外見はね、シレヴィーユの子孫でなきゃただの本よ」とエリー
「だってさデュック、触ってみて」
ルイはデュックにその本を手渡しした
するとその直後デュックの体が輝いた
「な、なんだ!?」
その輝きは驚く間に消えてしまったがデュックは何かを感じたみたい
「・・・・間違いない、これがシレヴィーユの残した聖戦魔法の魔導書だよ」
「そうか、やったねデュックっ」
「あぁ、ありがとうルイ」
「それじゃあ無事に魔法書も手に入ったし、アルスティに帰りましょ」
「よーし、みんな掴まってて・・・」

リワープっ!!

僕は瞬間移動魔法を唱えてその場を後にした
その様子をこっそりと影から見届けたシリュウは辺りを見渡す

『どういうことだヒリュティス様の予言ではルイ達の前に敵が立ちはだかるのではなかったのか?』

「まさか・・・・」
シリュウはあることに気付く
ルイ達が向かったのはアルスティ王国、アルスティは中央大陸の国だ
「しまった、僕としたことが見落としていた。僕も急いで向かわなければ・・・・」

続く