りぅの風森

第9話

完全版 DragonStory

第9話 決戦テルグレンと娘のお守り

オルフレンにたどり着くやいなや早々に軍との衝突したガリシィル達だったが
兵を率いたオズベンを倒し、いよいよ国王 テルグレンとの戦いが始まろうとしていた。
テルグレンは城に篭っているため、そこへガリシィル達は向かう
「ちっ、まだ魔封じの魔法は解けないか」
ガリシィルは先ほどのオズベンとの戦いでサイレンスの魔法を受けて
魔法を使うことを封じられてしまったのだ
とはいえ、彼はその程度でへこたれる様子はない。
「ガリシィルさん、相手はおそらく一人です、私達が魔法効果が切れるまで時間を稼ぎましょうか?」
「いやいい、まずは前に出る」
城の門を通り過ぎて 国王テルグレンが待ち構える王室の扉を勢い良く開けた
バァンッ!!
驚きを隠せないテルグレン
「なぜだ、なぜお前たちはこの国に攻めてきた!?」
「はっ、決まってるだろ、ただの憂さ晴らしだっ! いや、もっともな理由をつけるなら俺を殺そうとしたから反撃にきたかな」
ガリシィルはそういうと攻撃態勢に入る
その瞬間、四方から弓矢が飛んできた
「何っ!?」
「馬鹿め、一人でお前たちを相手にできるか、この城には罠を沢山仕掛けておいたぞ」
四方から飛んできた弓矢はガリシィルを掠める
「かわしたか、ならば・・・」
テルグレンは天井から吊るされた紐を引いた
その瞬間天井のシャンデリアが次々と落下した
「あぶねぇっ!」
カイ達はそれを避けるのに精一杯だ
「俺が行くっ」
走りだすイチピモ、追いかけるシャルル
次の瞬間 イチピモの姿が消えた
「イチピモ様ぁっ!?」
床が抜けたのだ、そう、これもテルグレンの罠 落とし穴だ。
だがイチピモは完全に落ちたわけではなかった、シャルルがイチピモの腕を掴んでる
「助かったぜシャルル」
「イチピモ様っ ご無事で・・・・何よりです・・・」
「ちっ、仕留めそこなかったか、まぁいいさ、しばらくそこで時間を潰していろ」
テルグレンは腰の剣を抜く
ついに自ら戦闘に挑むつもりだ
ガリシィルが走りだした
「来るか、銀髪の竜」
ギンッ! 剣と爪器がぶつかり合い 押し合いになった
「ちぃ、人間のくせになんて腕力だ」
「驚いたか、俺は豪腕な男なのだ」
ガリシィルの攻撃を弾くテルグレンは後ろへ飛ぶと左手をかざした
「魔法か!?」
「吹っ飛びな」
すかさず防御に入るガリシィル
テルグレンは巨大な火の玉を放った

メガファイヤーボールッ!

炎に飲み込まれてシヴァの横を通り抜けて吹っ飛ぶガリシィル
「ガリシィルさんっ!」
「嬢ちゃん、よそ見はイケナイな」
テルグレンがすかさずシヴァに攻撃を仕掛けた
完全なる不意打ち、シヴァの体に剣が突き刺さる!!
「シヴァっ!」驚くカイ
「がはぁっ」血を吐くシヴァ
「くっ、これでも喰らえ!」
マリーが魔法を唱えた

ストーンウォールッ!

散らばる瓦礫が1枚の壁となってテルグレンを押しつぶそうと襲いかかる
テルグレンはその壁に手をあてるとそれを止めた
「何っ!?」
「お前程度の魔力では私を潰せない、返すぞ」
そういうとその壁をそのままマリーの方へ押し返した
「うわぁぁぁ」
うろたえるマリーだったが、その前に体勢を立て直したガリシィルが割り込んだ
ドォンッ!
壁はガリシィルに当たると粉々に砕け地面に散らばる
「ガリシィルさん、どうして・・・」
「今死なれると俺が困るんだよ、バハムートを倒す戦力は欲しいからな」
「シィルっ、シヴァが危ない!」
「大丈夫だカイ、シヴァは急所を外している、気を失ってるだけだ」
「ほう、今の攻撃を生身で耐えたのか、やはり竜族は想像以上に頑丈だな」
「まさか人間であるお前に、ここまで苦戦するとは俺も想定外だ」
汗を流すガリシィル、見た目以上にダメージが深刻そうだ

『くそ、まだ俺の魔法封じが解けないか、解ければこんなやつ・・・・・・』

「シャルル、早く俺を引き上げろっ 皆の加勢に回らなければっ」
「そうはいってもイチピモ様、魔導師な私の力ではイチピモ様を引き上げるのはなかなかきついのです、登ってください」
「くそぉ、シャルル絶対手を離すなよっ!」
落とし穴に時間を取られているイチピモとシャルル、彼らが戦闘に加わるのはずいぶん後になりそうだ
今動けるのはカイとマリー、そしてガリシィル、2人と1匹だけだった。
テルグレンにはまだ余裕の表情が窺える
「どうやらアズベンの特攻も役にはたったか」

『魔法を使ってこない様子だと魔法を封じられてるみたいだな、早いとこ銀髪の竜を始末しないと』

「カイ、マリー、実を言うと俺の体力はもう危ない、出来ればテルグレンを足止めしてほしいのだが出来るか?」
「シィル、まだ魔法が使えないのか!?」
「残念ながらな、お前がやつを止めてる隙に俺がイチピモを救出してくる そうすれば少しはマシな展開になるはずだ」
「分かった、マリー、俺の援護を頼むぞ」
前に走りだすカイ
マリーが縦に頷き援護に入る
「私の魔法ではあの方にダメージは与えらません、ですが補助程度には活躍させてもらいますよ」

アーマーブレスッ!

カイの防御力が上がる
「小細工な、その程度で俺の攻撃を防げるかっ」
テルグレンは突っ込んでくるカイに標的を変え剣を両手に振り下ろす

ガキィッン
「うぐぐぐ・・・・これが人間の出せる力なのかい・・・・」
カイは攻撃を受け止めたが方膝を落とす

「言っただろう、俺は豪腕な男だと」

カイがテルグレンの攻撃を受け止めたその隙にガリシィルはイチピモの落ちた落とし穴へと飛び込んだ
その様子に気づいたテルグレン
「しまった、あの二人を助けに行かせるためだったのかっ」
「はは、そうさっ! これで形勢は変わる」
「ちぃっ、ならお前から死ねっ!!」
テルグレンは左手を剣から離しカイに向けた
テルグレンの剣撃を受け止めた体勢に魔法を放つ気だ
「魔法っ!?」
「遅いっ!」

メガファイヤーボールッ!

巨大な火の玉がカイを直撃した
「カイさんっ!?、もう・・・駄目だッ!」
マリーは尻餅をついた

煙の中から薄っすら人影が映る
テルグレンか・・・
いや、シャルルだ
シャルルがテルグレンの魔法攻撃を防いだのだ
「馬鹿な、さっきまで落とし穴の方に居たはずだ、いつの間に・・・・」
「ガリシィルさん、お陰でイチピモ様が助かりました。礼を言います」
「流石疾風のシャルルと言われてるだけはある、瞬時にあそこまで移動するとはな、リワープの魔法を応用したのか」
「シィルが以前やってたあれかい?」
よろけながらもマリー達がいるとこまでこの隙を利用して避難してきたカイ
「あぁ、とはいえ俺はあんなに軽々と出来ないぜ、体に負担がかかるからな」
胸をおさえるガリシィル

「お前がシャルルか、噂には聞いているぞ」
「オルフレン国王テルグレン、私が相手です」

『ちっ、銀髪の竜の体力を回復させるつもりか』

「もう誘いには乗らんぞっ」
シャルルを無視してガリシィルの方に走りだすテルグレン
「私から逃げれるとでもっ!」
瞬時にテルグレンの目の前に現れるシャルル
そして魔法を放った

ウインドアロー

至近距離からの魔法、テルグレンにかわす術などない
「おぉぉぉぉおっ! 邪魔だぁぁぁぁっ」
「馬鹿な、止まるらずに突っ込んでくる!?」
テルグレンはシャルルの魔法攻撃を受けながら、剣を横に振るいシャルルを斬った
間一髪よけるシャルル、だがテルグレンの進行を阻止することはかなわなかった
「くたばれぇぇぇぇっ!」
「ガリシィル危ないっ!」
テルグレンの攻撃を防いだのはイチピモだ
「邪魔だぁぁぁ」

ドォォォォンッ!

激しい爆発が起こる
「イチピモさまぁぁぁっ!」
叫ぶシャルル
だかイチピモはダメージを受けていなかった
テルグレンは何者かに腕を掴まれて、天井を攻撃していた。
「そこまでだよ」
煙の中から優しい声が聞こえる
「その声は!?」驚くガリシィル

「何だ、何が起きたんだ!?」とイチピモ
やがてそこに現れたのは 銀髪の竜だった。
ガリシィルか、いや、ガリシィルではない
ガリシィルとは別の銀髪の竜がテルグレンの攻撃を防いだのだ
しかも、テルグレンの豪腕を軽々と掴み天井へと向けている
「き、貴様・・・・何者だ」
テルグレンの顔が強張った
その様子に笑顔な表情を見せるそいつはテルグレンの腕を振り払った
と、同時にテルグレンの腕が不自然に曲がった。
「がぁぁっ 腕がぁぁぁぁぁ」
テルグレンに背を向ける謎の竜
「ガリシィルを庇ってくれてありがとう」
そうイチピモに言って、ガリシィルの方にゆっくりと歩み寄ってくる
「もうオズベンの魔法は解けてるはずだよガリシィル、早く皆を回復させてあげるんだ」
そう言われてガリシィルは左手をグーとパーを交互に繰り返すと手を掲げだ

ヒールウインド

癒しの風が辺りにいる負傷者の傷を癒やした
「す、すごい皆の傷が全回復したぞ」とカイ

『やはり以前より魔力が上がっているな』確信したガリシィル

「がぁぁ・・・・貴様ぁ」
よろけるテルグレンは、折れてない腕でガリシィルとは別の銀髪の竜に攻撃を仕掛けた
しかしその竜は攻撃も見ずにひらりとかわす
「せっかく生かしておいたのに、死にたいのかい?」
その竜はテルグレンの方に振り向くと笑顔をやめて片目を見開いた
ガリシィルと同じ鋭い眼つき、赤い瞳がテルグレンをとらえた。
その瞬間、テルグレンが壁に吹き飛んだのだ
何をしたのか、その場に居た全員が理解できなくて驚きを隠せない
「な、何が起きた、いきなりテルグレンが吹っ飛んだぞ!?」とイチピモ
再び目を閉じると笑顔に戻る彼は口を開く
「ガリシィル・・・・・何も君がやらなくてもよかったのに」
シリュウの口ぶりからガリシィルがテルグレンを吹き飛ばしたらしい
壁に叩きつけられたテルグレンはそのまま絶命したようだ
「そんなことより、どうしてここに兄さんがいるんだ!?」
衝撃の事実、そこに現れたのはガリシィルの兄だった
名はシリュウ、ガリシィルと同じくバハムートの息子の長男だ
回りにいた全員が驚いた
「君がバハムートを止めるために動き出したことを知ってね、こうやって会いに来たのさ」
「兄さん、俺に力を貸してくれっ」
シリュウは首を横振るった
「どちらかと言うと僕は君を止めに来たんだよ、バハムートを倒すことは諦めた方がいい」
「なぜだっ!? バハムートは世界を征服しようとしているんだぞ!? 兄さんだってそれは望んでないはずだっ」
「確かに母さんの行動には賛同しかねる、けど母さんを倒すのは無理なんだ」
「どういうことだ!?」
「レベルが違いすぎるんだ、君には未来が見えないのかっ」
「何を言ってるんだ、未来のことなんて知るかよ、それより聞いたぞ聖戦器を見つけたらしいじゃねーか」
「どこでそれを!?」
「噂で聞いたんだ、それがあればバハムートを止めれるはずだろ」
「・・・・君はどうしても母さんを止めるつもりなのか」
「そのつもりだ」
「分かった、アカルディアの洞窟を知っているかい?」
「いいや知らないな」
「そこに聖戦器ドラグレアイーグルが眠っている、それなら君にも扱えるはずだ」
「どういうことだ、俺はバハムートの息子だぞ、そいつはバハムートの聖戦器なのか?」
「君は父さんの存在を忘れているのか? アリュギオスの聖戦器だ」
「父さんだと?、俺が物心ついた頃にはもういなかった 知るかよ」
「・・・・君にはバハムートよりもアリュギオスの血が濃く流れている、だからアリュギオスの聖戦器が扱える」
「待て、その言い分だと兄さんには使えなかったのか?」
「僕はバハムート寄りな竜なんだ、だからそれは扱えないと分かっている」
「分かっているだと? 見つけたんじゃないのか、まるで手にしたことはない言い分だな」
「場所が分かっただけで、この目で見たわけではないんだよ、とにかくアカルディアの洞窟に向かうんだ」
「それはどこにあるんだ?」
「北の大陸さ、ここから南東の方角にデナピンという港街がある、そこから北の大地向かう船に乗っていけばいい」
「ずいぶん遠回りだな、北のボーネリアから行ったほうが速いんじゃないか?」
「そっちのルートはバハムートの手下が支配する都市が多い、そんな危険な道はいかない方がいい」
「それもそうだな、それで兄さんは一緒に来てくれないのか?」
「僕は母さんとは戦わないし母さんに協力する気もないからね、それに僕は今、別な用事があるんだそろそろ失礼するよ」
「待ってくれ兄さんっ」
「あ、そうだガリシィル、あまり無茶しちゃいけないよ体に障るだろうしね」
そういうとシリュウは姿を消した
胸をおさえるガリシィル
「シィル、今のは?」
「俺の兄貴だ、俺達の仲間にはならないらしいが、いいことを聞いた、これから北の大陸へ向かうぞ」
「では彼の言うとおり、デナピンから?」とシャルル
「そうだな、まずはそこに向かうとしよう」
「ちょっとまってくれよ、この国はどうなっちまうんだ? 国王も死んだみたいだし」
「イチピモ様、仕方ありませんよ、相手が先に仕掛けてきたんですから」
「放っておけ、そのうち新しい王が出来るだろう、とはいえ国民には酷いことをしてしまったな、さっさとずらかろう」

こうしてガリシィル達はオルフレン王国を滅亡させ、逃げるようにその場を去った

一方、ドラファールでは

「ルイ、ルイじゃないか、帰ってきてたのか」
僕が村案内をサラにしている最中だった
一人の人間が声をかけてきた、その存在に僕も見覚えがある。
この村の村長をしている人間の『ファール』だ。
「あれ、ここは人間の村なんですかぁ?」尋ねるサラ
「いいや、ここはちゃんと竜族も住んでる村だよ、ちなみに彼はこの村の村長さんさ」
そう、ドラファールは世界でも数少ない人と竜が共存する村なのだ。
ちなみに今の村長は人間がやっている。
「・・・・メスと一緒にいるとは一体誰に似たのやらとんだマセガキだな」視線をそらす村長のファール
「そんな関係じゃないよっ!! そんなことより僕に何か用ですか?」
「そうだった、実は最近空き地に怪しい人間がいると村人から聞いてな、竜族のお前さんに確認してきて欲しいんだ」
「どうして僕なのさ!? 竜族は他にもいっぱいいるじゃないかっ」
「・・・・いや、どうも他の竜族は顔が怖くてな、頼みたくても頼めないだよ」
どうやら村長には僕以外の竜族の顔が怖いから頼めないと そう言ってるらしい。
確かに、他の竜族と違って僕の顔は言うほど怖くはない まだ幼いから当然だけど。
にしても子供の僕にそんな頼み事とは どういう神経しているんだか
まぁ、一般的な人間のステータスと比べれば竜族の子供でも十分に勝る能力はあるけど・・・・・。
そんなことを考えてはいたが結局村長の頼みを聞くことにした。
「分かったよ僕が見てくる、その代わり少しの間この子を見ててくれる?」
僕はガリィフィスから面倒を見るように頼まれていたサラを村長に押し付けようとした
というのもこれから怪しい人間がいるかもしれないというところに一緒に連れて行くわけにはいかなかった
何かあってからでは困るからだ。しかしそれはサラの口から断念することになった
「私のことなら心配いりませんよぉ、一緒に付いていきますぅ」
「えぇっでも何かあったらガリィフィスさんに怒られてしまうよ」
「お父様はそんなこと気にしませんよぉー、それに私、少しなら魔法が使えるんですよぉ」
そういうサラ、僕も魔法が使えるから別に不思議ではないが
なんというか色々心配だ、見た感じ戦闘なんてしたこともなさそうだし
それにサラが戦う姿なんて想像ができなかった、会って間もないだからだろうか
第一印象ですべてを決めつけている僕がなんだかもどかしい
「・・・・分かったよ、でも無理はしないでね」
しぶしぶサラを連れて行くことにした僕
村長はサラを預けられそうになって少し戸惑っていたが、これで安心したようだ
「どうやら決まったみたいだね、私は家で待っているから 空き地の様子を見てきたら報告しにきてくれ」
そういうと村長はその場を去っていった。
僕たちはこれから村の北側にある空き地に向かうことにする
まずは武器と防具屋の横を通って酒場が見えたらそこを左に曲がってまっすぐいけば目的の空き地だ
それは歩いてものの10分もしないうちについた。
数十年後にこの一帯はお城が建つほどの変化を遂げるが今はまだ何もなくただの平地
とはいえ手入れはさほどされていないため、草木が生い茂っている。
少し奥に行けば未開拓の森になっていた。
「・・・こんなところに怪しい人間なんているのかな?」
空き地の辺りを見渡す僕、人間が隠れる場所なんてありそうにない
その結果、視界には人がまったく映らなかった。
「やっぱり何もないじゃないか、村長さんのところに戻ろう」
と僕が口にした時だった、サラが空き地の奥にある森のほうに指を指している
「あのぉ、アレは何でしょうぅ?」
「どうしたのサラ、何か見つけた?」
僕がサラの指差す方向に視線を向けた、それは森のほうを指している
「サラ、僕達は空き地を見てこいって言われたんだよ、森の方まで行く必要ないよ」
「でもあそこに人影がありますよぉ」
言われて初めて気づいた、よく目を凝らして森の方に視線を向けると
何やら人影が2つ見えた、最初は森に住む動物だと思ったが
それにしてはあまりにも不適合だったのだ、それに森の方で人がいるなんて何か怪しい・・・・。
「・・・・・う、なんだか嫌な予感がするよ、念の為に聞くけどサラ、君は戦闘経験あるかい?」
「はい、お父様とたまに稽古しますよぉ」
「稽古!? そういう意味じゃなくて、実際に野生の魔物とかそういうのとは?」
「全然ないですよぉ、でも大丈夫ですよぉー」
「あぁ、やっぱり」
僕の予想は当たっていた、サラに実戦経験はないらしい
僕としては村長に報告しに戻って、一人で再度ここに戻って再確認したいところだけど
多分言うこと聞かないだろうなぁって
そう思って、仕方なくサラを連れたまま 人影が映った森の方に足を忍ばせた
木の影からその人影の正体を探ろうとした時だった
サラが木枝に躓いて転んだのだ、ドシンっと音を立てて
その人影に逆に気付かれてしまう、僕は頭に手をやった「あぁ・・・」
「だ、誰だっ!」
一人は全身をローブで身を隠し、もう一人はいかにも悪そうな人相をした男が斧を片手に持っていた
「サラはここでじっとしてて、ぼくが出て行くよ、あっ、絶対出てきちゃダメだよっ」
「はぁい」
「お前たちこそ、ココでなにをしてるんだっ」
木陰から飛び出した僕
「竜族だと?、ドラファールの住民か? ここ(森)で何をしてようが俺達の勝手だろうが、帰れ帰れ」と斧を持った奴
「そういうわけにもいかないよ、この森だってドラファールの敷地内だぞ!?」
するとローブで身を隠した一人が斧を持つ男の肩を掴んだ
「争い事はごめんだぞ、今奴にかまっている時間はないのだからな。ここは大人しくこちらがひこう」
「見ろこいつまだガキの竜だ、俺達は何だ?ハンターだぞ、追い返そうぜ」
「何を言ってる、宝はもう回収した後だ、もうこの村に用はないんだぞ? それにまだこいつは気づいてない、事を荒立たせるな」
なにやら揉めてる二人
「なんだ? 仲間割れかな?」
すると木陰の方からサラがローブで身を隠した人の持ち物に指をさした
「あの袋なんでしょう?」と僕だけに聞こえるように小声で呟く
「まだ分からない、とにかくここに居た理由を聞かないと・・・・・おいっ」
僕が声を上げた時だった
斧を持った男が急に襲い掛かってきたのだ
斧で僕に斬りかかろうとしたが僕はそれをうまく回避した。
「気づいたのか、俺達がこの村の金品を盗んでいたことにっ」
その様子にローブで身を包んだ男が舌打ちをした
「馬鹿が、早まりやがって」
どうやらこいつは僕に襲いかかる様子はなかったみたいだ
とにかく金品を盗んでいたことを自白したおかげで
こちらも見逃すわけにはいかなくなった
「とりあえず盗んだものを返せ」
「誰が返すかよ、お前を殺してこのままトンズラこかせてもらうぜ」
斧を持った男は斧をやたらと振り回し僕に襲いかかってくる
なんだこいつ、脳筋なのか、攻撃が単調すぎて当たる気がしない
一方で僕はローブで身をまとった男のほうが気になっていた
斧で攻撃してくるこいつとは違って、まだ攻撃に参加する気配が感じられない。
それに素顔も隠していて不気味に思える
ローブで身を包んだ男はただ傍観してるだけだった。
すきをついて逃げる気配もない。
とにかく斧を持った男をなんとかしないといけないと感じた僕は
ただひたすら攻撃を避けるのではなく反撃を開始した
攻撃を回避すると同時に尻尾で男の脇腹を叩いた
「ぐぼぉっ」
斧を持った男は攻撃をやめて地面に足をついた
どうやらなかなかに効いたらしい
脳筋のくせにやわなやつだ、僕は竜族の中でも力は劣っている方だというのにただ一発入れただけでこのザマである。
その様子にローブで身を包んだ男は手に持っていた金品をこちらに放り投げた
「盗んだ物は返す、それ以上はやめろ」
「何を・・している・・・・俺はまだ負けて・・・」
「お前もだ、これ以上醜態を晒すな、何がハンターだ、ガキ一人の攻撃で地面に足を付けるハンターがいるか」
「ぐう、ロプティウス様になんて・・・言うのだ・・・」
「ロプティウス?」
「馬鹿がっ、その名を人前で口に出すなっ!!」
突然ローブに身を隠した男が怒鳴りだした、さっきまでの対応とはまるで違う
「どういうことだ、ロプティウスとは何者だっ」
僕がローブに身を包んだ男に言うとそいつは頭に手をやった
「その名を知ったからにはタダではすまんぞ、死んで貰う」
突然ローブの下からナイフが飛んできた、それは僕の頬をかすめる
「うわぁ!?」
そこへ地面に足をついていた斧を持った男が僕に攻撃をしかけた
「隙を見せたなっ、しねぇっ!」
完全なる不意打ち、さっきまで地面に足をついていたとは思えない素早い行動だ
演技だったのか!? 僕はその攻撃を避ける間もなく頭に食らった
「がぁっ」大量の血を吹き出し地面に倒れる僕
物影から見ていたサラが驚いて飛び出そうとしたが
僕が手で合図して それを止めた 頭に食らって大量の血を流したが
あの攻撃で死ぬほどのダメージは受けていない
僕はそのまま死んだように地面に倒れる
「ふっははは、ドタマをかち割ってやったぜ、見ろ死んだぞ こりゃっ」

「・・・・・演技だったとはいえ頭の名前を容易くしゃべるな、他に聞かれていたらどうする気だ」
「問題ないだろ、この村ももうじきに俺達ハンターによって滅ぶんだからな」
「なん・・・だって・・・・」
僕はまだ死んでなどいなかった、ただ、倒れただけだ。
「ち、生きていたのか」
斧を持った男が倒れている僕に視線を向けた
まさに止めだと言わんばかりに斧を振り上げる
僕は頭をおさえながらも魔法を唱える
その瞬間辺りに強風が吹いた
「うわぁぁっ」
斧を持った男は宙に舞う
ロープで身を隠した男は吹き飛ばされまいと地面にしゃがんだ
「お前、何をした!?」
「そんなことよりハンターによって村が滅ぶとはどういうことだっ」
「がはっ・・・・言葉通りだ、ここはもうじき俺達の組織が・・・・襲いに来る・・んだぜ」
宙を舞い地面に落ちた斧を持った男が言った
「そんなっ!?」
「ふっは・・・ふははっはっはっ、俺と共にしねぇぇぇぇっ」
そして斧を持った男が最後の力を振り絞った

ロマンティック★ボンバァァァァァァァァァァァァァァァァァ

それはただの自爆だった
完全捨て身の攻撃、まだ外は明るいというのに花火が上がった
辺りに物凄い煙が覆う

「敵と一緒に自爆か、あいつらしい死に方だ」
ロープで身にまとった男は斧を持った男の最期を見届けるとゆっくりと立ち上がり
煙に乗じてその場を去ってしまった。
僕の近くで自爆した男は確かに死んだが、僕はそれでも死んでなどいなかった。
「これは・・・・一体」
すると煙の中からサラがよっこり出てくる
「シールドの魔法ですよぉ、こっそり私がかけておきました」
「ありがとう、お陰で助かったよ・・・いや、多分、生身でも死ななかったとは思うけど」
男の自爆はそんなに大した威力ではなかった。
煙が多く出たが、ただ謎の花火が上がっただけだ。
爆心地は死んだ男の場所、その場だけだった
「それで、もう一人はどこに?」
「もういないみたいですよぉ」
「逃げられたか・・・・、って、そんなことより大変だよ、この村がハンターに襲われちゃう!! 早く村長に伝えなきゃっ」

「その必要はない」

煙の中から声がした
聞き覚えのある声にサラがそれに気づいた
「あ、お父様」
そう、そこに現れたのはガリィフィスだ
どうやら用事を済ませて戻ってきたらしい
「ガリィフィスさんっ、その必要はないってどういうこと!?」
「その襲ってくるハンターと思しき人物達は先ほど私がすべて片付けてきた、この村の上空に差し掛かった時に武装した人間達がここを目指しているのを見つけてな」
「そうなんですか? すみません助かります」
「にしてもなんだ、リュカの息子だから安心していたのだが、やけにボロボロじゃないか」
「これはその・・・油断して」
「まぁいいさ、サラを気遣って戦闘に参加させなかったのは観心したぞ、とはいえ少しは私の娘も信用してほしかったよ」
「お父様ぁ、でもお陰で私は傷ひとつついてませんよぉ」
「そうだな、じゃあルイよ、私の娘の婿になってはくれないだろうか?」
「ふぁっ!? いきなり何言ってるんですかっ 」
「そうですよぉ父様ぁ」
「はっはっはっ冗談さ、そうだルイ、リュカがあの家を好きに使えと言っていたぞ、しばらくは帰らないらしい」
「そうですか・・・」
「では私達はそろそろ帰るとするよ、娘の面倒を見てくれてありがとう、ほらサラも一言言え」
「ルイさん今日は遊んでくれてありがとうですぅ」
「ふぁ!?」
突然の発言に僕は驚いた
サラと遊んだ記憶はない、
村案内をして挙句にハンターとの戦いに巻き込みそうになっただけだ。
「ほう、遊んだのか?」サラに聞くガリィフィス
「はぁい、最後に花火を見ましたぁ♪」
おそらく斧を持っていたハンターが自爆したことを言ってるんだろうけど
ちょっとまって欲しい、それはおかしい
「ぇっ? えぇ!!」
「そうかそうか、それはよかったな! それじゃあまた会おうルイ、さらばだ」
そういうとガリィフィスとサラは光となって天空へと一目散に消えていった
おそらくリワープで帰ったのだろう
「はぁ、一体なんだったんだあの親子は・・・・・」
ガリィフィス親子と別れた僕はため息をつきながら、村長の家へと向かう

そして

「ファールさん、空き地見てきましたよ」
「おぉ、ルイよ、先ほど爆発音が聞こえたが 何があったんだ?」
「別に何も、ただハンターが空き巣の金品を盗んでいたみたいなので退治してきたよ、2人いて1人には逃げれちゃったけど」
「そうか、まぁ仕方ない、次からは戸締まりをちゃんとするよう村人にも言い聞かせるよ」
「もういいですか?、僕なんだか疲れちゃって・・・・」
「すまないな、そういえばガリィフィスという竜族がお前を探していたぞ?」
「あぁ、それなら先ほど会いました、僕と一緒にいた女の子の父親ですよ」
「ほう、とにかく頼み事を聞いてくれてありがとう、帰ってゆっくり休むといい」
「そうするよ、じゃあね村長さん」
僕はハンターがこの村に攻めてくることは告げなかった
ガリィフィスがすでに手をうったようなので、心配いらないと思っていたのだ・・・・・。
そう、その時は
続く