りぅの風森

第100話

第100話 ヘルモミー王国の最後
フェリス達がアステェリアを追ってレークス王国へ向かうのだがその前に別のお話がある
ここは西大陸にあるカルニド
人竜戦争以降、ドラグリア大陸から移住してきた竜族も住む、
異種族であふれた国だ少し前に帝国と手を組むアルヴァランディの人間軍に占領され、民の多くは殺され生き延びた者は寝返ったり、他国へと落ち延びたそして、わずかな市民はまだ城の牢屋にいた

「・・・・・ティリナ、すまない、できればお前を助け出したいのだが」

牢屋の前で黒竜が話しかける彼は人竜戦争以降に移住し、カルニド王に雇われた傭兵だ、
名はソシルガ、帝国側が襲ってきた際に寝返ったことで命を保証されたが、
悲しい事に捕らわれた仲間の見張りをやらされていた。
「気を遣わなくていいわよソシルガ」
鉄格子の向こうで白竜はそういった彼女がティリナだ、
彼女も移民してきたカルニドの民で帝国軍に抵抗し捕らわれる事となって
今は牢にいるソシルガとは恋人関係でもあった、以前は白竜の村に住んでいたそうだ。
黒竜と白竜の仲は最悪のはずの二人がこの地にいたことから、
彼らは駆け落ちしてきたのだろう。
「だけど、俺は・・・・・傭兵でありながらこの国を守ることは出来なかった、それどころか裏切ってしまったんだ」
「何を言ってるの、別に誰も責めたりはしないわ、それに安心してちょうだい」
「何をする気だティリナ」
「私はこう見えても盗賊のスキルを持っているのよ」
そう言ってティリナは牢の鍵をいとも簡単に開けてしまった
牢の見張りはソシルガただ一人、帝国軍の連中も次の拠点へと移動を開始し、
この城にはもうほとんど勢力は残っていなかった
逃げるなら今しかないと そう思ったのだろう
「さ、みんな、逃げるわよ」
「正気か!? 軍のほとんどは出て行ったがまだ敵はこの城に残っているんだぞっ」
「みんなで逃げれば逃げ切れるわっ、貴方のためにわざと捕まったんだからねっ」「・・・・・・わかったよティリナ、帝国にはもうウンザリだし行こうっ」
ソシルガはティリナと共に牢屋に閉じ込められた民を全員解放し、城を出ようとした
しかし、そう簡単にいくものではない
その途中、見回りの巡回がやってくる
「おい、お前達何をしているっ!!」
「げっ、ほかの見張りだっ」
「どうせ見つかるんだから仕方ないわ、仲間を呼ばれる前に始末してちょうだいっ」
「無茶なことを言うなっ、戦えば騒ぎを嗅ぎつけてすぐに応援がきちまうよっ」
「そうか貴様はカルニドの兵士だったな、寝返ったと聞いたがまさかこのためか」
「くそ、ティリナ、俺が時間を稼ぐ、ほかのみんなを頼むぞっ」
「わかったわ」
「・・・・・悪いが退いてもらうぞ」

ミィルブレイズ

ソシルガの放った闇の魔法は見回りの兵を捕らえて壁際にふっとばす
「がっ・・・・やはり、皆殺しにすべき・・・・だった・・・・・か」
見回りの兵士を難なく倒したソシルガだが瞬く間に他の兵士達がやってくる
ソシルガが兵士を倒している間に牢屋を解放したティリナがソシルガの後ろに駆けつける
「ソシルガっ 、こっちは全部終わったわ、逃げるわよ」
「だめだティリナ、この様子じゃ正規のルートでは外まで逃げ切れないぞ」
「それでも行けるとこまで行くわよっ」
そうして兵士たちに追われながら ソシルガ達は城内を駆け回った
何人かは逃げ遅れ兵士たちに殺されてしまう、
逃げ回っている内にソシルガとティリナも外へ出れる一歩のところで囲まれてしまった
「げへへへ、もう逃がさないぜ」
「くそ、これまでか・・・・」
「あきらめないで、何か手があるはずよ」
すると突然どこかで爆発する音がなった
どごーーーーーんっ!!!
その場にいた兵士とソシルガ達は驚く
「な、なんだ今の音は?」

トルネード!!

何処からともなく風か吹き荒れ、通路の横から竜巻が通過する
ソシルガとティリナを追ってきた兵士がそれに巻き込まれる
「ぐわぁぁぁぁ」
「な、なんだ!?」
すると瞳を閉じた幼い白髪の竜がやってきてソシルガ達に声をかけた
「こっちです、早く来てくださいっ」
「なんだてめぇは、どこから入ってきやがった」
ソシルガ達の行く手を阻む兵士は突然の乱入者に驚きの声をあげた
「ソシルガ、今よっ!」
「よし、くらえっ」

シャドウクロス

十字架を描く黒い影が兵士を捕らえる
「ぐわぁぁぁっ」
「ありがとう、助かったよ」
「それより増援が来る前に逃げるのが先です、早く行きましょう」
「待ってくれ、お前は一体、何者なんだ?」
「そうよ、私達と同じカルニドの民ってわけでもなさそうだし」
「僕の名はウル、そう呼ばれている」
「ウル・・・・・?」
「前進、勇気、勇敢さなどの意味を持つ名前だわ」
「とにかく時間がありません、騒ぎを聞いた精鋭部隊が戻ってくる、このままでは・・・・・」
「精鋭部隊だって!?」
「ソシルガ?」
「そんな、ここを攻め落とした帝国軍が戻ってくるっていうのか」
「そうです・・・・ですから一刻も早くこの城から逃げ出さないと、しまった!?」
何かに気づいたウルは急いで城の外へと飛び出す
「ウル!? ちょっと待てよっ」急いで追いかけるソシルガとティリナ

城門の前にウルの姿が見えた
しかしウルの前には多くの兵が待ち構えている一人の人間が前に出た
「やれやれ、手のかかるガキだ、もう俺からは逃げられないぜウルっ」
「アンストールっ、やはりお前だったか」
アンストール、帝国側に仕える人間、カルニドを攻め落とした精鋭隊の一人だ
ウルを追ってきたことから、城の騒ぎに気付いて戻ってきたというわけではなさそうだ
「ウルッ!!」とソシルガ
ウルは振り返りソシルガ達に謝る
「・・・・すみません、貴方達を助けるつもりだったのですが、それもうまくいくかどうか」「あきらめないで、私たちも戦うわ」
「・・・・すみません」そういうとウルは一歩前にでる
「おとなしく死ぬ気になったか?」
「・・・・・アンストール、孤児院はどうなった?」
「孤児院? あぁ、お前がいたあの施設か、それなら今頃火の海だろうな」
「なんだって!?」
「お前がおとなしく死んでいれば、こんなことにはならなかっただろう」
「ティリナ、孤児院って?」
「どうやらウルは孤児院にいたみたいね、親のいない子供たちが集まる施設よ」
「・・・・・皆を殺したのか? 関係のない子供たちまで?」
「もちろんさ、ヴェルマ教の教えに従い暗黒神のいけにえが必要だった、帝国に逆らうと皆殺しは避けられないってわけさ」
「僕はお前達、ヴェルマ教団を許さない・・・・そのためにも叔父上に会わなきゃいけない、こんなところで死ぬわけにはいかないんだ」
「ガキは大人しく大人のいうことを聞けばいいんだよ、皆の者、こいつを殺せっ」
アンストールの後ろにいた大勢の兵がウルに襲い掛かる
「ソシルガ! ウルを助けるのよっ」
「分かってる、だがあの数じゃ俺達が協力してもきついと思うぜ」
そんなことを話していると多くの兵士が宙を舞った
ウルに攻撃を仕掛けたとたん何かの力が働き、それらを跳ね返す
アンストールが引き連れてきた兵士達は一瞬で地面にへばりついていた
「僕のことは心配しないでください、それよりも後ろに下がってっ」
「・・・・・馬鹿な、精鋭部隊の兵士達をたった一人で倒したというのか!?」
「アンストール、僕はこれ以上は戦いたくない、同じ命を持つ者として・・・・・・」
「調子にのるなよガキが、俺は一人になったからといって引き下がらないぜ」
「話しても無駄か・・・・・。仕方ない」
そういうとウルは翼を広げた
アンストールも剣を握りウルに攻撃を仕掛ける
「ウルっ!!」叫ぶソシルガ

ギィィンッ!!!!

ウルに刃が当たると金属音が鳴り響く
「馬鹿な、俺の攻撃が通らないだと!?」
よくみるとウルの周りに薄い膜のようなものが包み込んでいる
ウルは閉じていた瞳を開くとアンストールを吹き飛ばす

「くっ・・・・」

アンストールは3mほど後ろに吹き飛ばされるがうまく態勢を整えて立ち上がる
「無駄ですよ、僕に貴方の攻撃は通じません」
「嘗めるなぁぁぁぁぁっ」
再び走りこむアンストール剣を振りかぶり、ウルに襲い掛かる
その瞬間ウルは片手で剣を弾く、
アンストールの体が45度に傾いたそのまま横に弾き飛ばされ、地面を転がって動かなくなる「・・・・・馬鹿な、私が負けるはずが・・・・・・ぐふっ」
「さぁ、行きましょう」
「ウル、今のは一体」
「話している暇はありません、騒ぎを聞きつけてやがて他の部隊がくるでしょうから急いでください」
空を飛ぶウル、そのあとを追うソシルガとティリナ

しばらく南に進むと国境を超えてマルハーデスの領地に3匹は降り立つ
「ここまでくればもう大丈夫です」
「ありがとうウル、それでお前はこれからどうするんだ?」
「・・・・僕は叔父上を探しているんです」
「叔父上? 父親じゃなくて?」とティリナ
「僕には生まれつき特別な力があります、孤児院で育ちはしましたが、親の事は分かるのです」
「特別な力・・・・・か、そういえばさっきのは何んだ、お前を襲った兵士がひとりでに倒れたようだけど」
「あれは反撃の魔法です、僕に対する攻撃はすべて自身へと反射される、そういう仕組みなんだ」
「つまり無敵じゃない、貴方に敵う者はいないのね」
「いえ、 何もすべてを反射するというわけではありません」
「そうなのか?」
「それよりも二人とも僕についてきてくれますか?」
「それは構わないが、どうしてだ?」
「君たちは世界を救う運命を背負っている・・・・・それだけではダメですか?」
ウルに言われてティリナとソシルガは顔を合わせる
「少し待ってくれないか」
ソシルガはそう言ってティリナを連れてウルから少し離れる

「どう思うティリナ」
「そんなこと言われてもわからないわ・・・・・。彼は未来予知も出来るのかしら?」
「さぁな」
「・・・・まぁ、どのみち私達に帰る場所はないわ、少し彼に付き合ってあげましょうよ」「そうだな、このご時世だ、いくら俺達より強いからって子供を一人で行かせるわけにはいかない」
「決まりね、ウルのところに戻りましょう」

「ウル、俺達はお前について行くぜ、その・・・・心配だからな」
「ありがとうございます、では僕と一緒にマルハーデス城についてきてください」
「マルハーデス城に!? いったいなぜっ」
「そこにはもう一人の仲間がいます、正確には仲間になってくれる方というべきでしょうか」「マルハーデスは人間の国だぞ、帝国側と手を組んでるって噂も聞いてる、そんなところに仲間になるやつがいるっていうのか」
「行けばわかります」
「・・・・・分かったよ、行こう」そして3匹はマルハーデス城へと向かった
ここはマルハーデス城
「ですから、この異常な事態は我々も放っておくわけにはいかないのです」
王様に報告するのはこの国では見慣れない氷竜
王様はうつむいて口を開く
「そうか・・・じゃが、わしにもわからんのじゃ、この国もようやく内乱が鎮まったところじゃしな」
「そうですか、すみません・・・・・・。」
氷竜は王様の前から去ろうとした
そこへウルたちが駆けつける
突然の訪問者に驚く王様と氷竜
「なんじゃお前たちは」
「心配いりません、用があるのは氷竜の方ですから」そういって4匹は王座の間を後にする「あなたたちは・・・・?」
「警戒しなくても大丈夫ですよ、デュー王子」
そういったのはウルだった
それを聞いて驚くソシルガとティリナ
「デュー王子? もしかしてアルスティのか!?」
「アルスティっていったら、隣の大陸にある国じゃない、どうしてそこの王子がこんなところに?」
そこにいた氷竜の名はデュー
ドラグリア大陸にあるアルスティ国の王子だ
デュックとエリーの一人息子である。デューはソシルガ達を見て首をかしげる
「・・・・どうやら敵ではなさそうだね」
「訳を聞かせてもらえるかしら」とティリナ
「実は最近、この大陸の国々のほとんどは戦争状態にあるんだ、この国もこの間まで内乱があったらしい」
「そりゃあ、このご時世だ、別に珍しくもないだろ」とソシルガ
「果たしてそうでしょうか、この大陸は数年前、
全国が一致団結してバハムートを倒そうとドラグリア大陸に攻めてきたんですよ?」
「でも結局バハムート軍に敗れたって話だろ、その時のことを人竜戦争なんて言われてるな」「その時に力を合わせていた国達が今になって突然互いに戦い合うなんて疑問に思いませんか?」
「・・・・・悪いがなんとも思わないな、昔と違ってこの大陸には竜がいる、人間だけの大陸だった昔とは違うからな」
「では貴方は私達竜族がこの大陸に移り住んだことが原因だと?」
「あぁ、・・・・俺の国が攻め落とされたのも竜族に恨みを持つ人間達によるものだった」「そうですか・・・・・。」
「待って二人とも、その話、ウルなら何か知ってるんじゃない?」とティリナ
「知ってるのかウル?」
「ソシルガさんの説もあるでしょうが・・・・・多分、帝国派と反対派による対立がこの大陸にも影響しているんだと思います」
「・・・・ウルだったかい?、一つ伺いたいことがあるんだ、帝国はその・・・・ヴェルマ教団と手を組んでいるのかい?」
「詳しいことは言えませんが間違いないでしょう、ユグリスの民は大半がヴェルマ信者ですからね」
「ではやはり宗教がらみということか・・・・」
「それによくない噂を聞きました」
「よくない噂って、 なんだよウル?」とソシルガ
「暗黒神竜が目覚めるとか、そんな話を聞きました」
「僕は暗黒神竜が何者かは知らない、だけど何か嫌な予感がする、帝国へ乗り込んで確認しなければ・・・・・悪いけどそろそろ失礼するよ」
ウル達を払いのけてその場を去ろうとするデュー
するとウルは怒鳴った
「デュー王子、止めたほうがいい!! あそこに一人で行くなんて死にに行く気ですかっ、この時期だし見張りも厳しいでしょう」
「ではどうすればいいっ、僕は父上に黙って国を出てきたんだ、何の収穫もなく国に帰ることは出来ないっ」
「よくここまで無事にいられたのが幸運だ、王子が一人で出ていくのも危険だし私達と行動を共にしませんか?」
「君たちと? なんのメリットがあるんだい?」
「私は帝国の事を知っています、詳しいことは今は言えませんが、いずれ話す機会もありますから損はさせません」
「分かったよ、そこまで言うなら君たちに付いて行くさ」
少し不機嫌な様子のデュー
「それでこの後はどうするんだ?」
「ソシルガさん、次はヘルモミー王国へ行きます」
「なんだって、あの国に何の用があるんだ」
「あの国は人竜戦争に唯一参加しなかった国なんです、その国で戦の兆しが見えるので」
「それなら早く行かなきゃな」
そうしてソシルガ達はヘルモミー王国へと向かった
ヘルモミー王国モミアゲを伸ばす風習がある人間の国で
一度バハムートによって滅ぼされかけた王国である
先王モフィリスの死後、息子のイチピモが2人の臣下と共に打倒バハムートの旅をしたという話は有名である
その後、国の復興を成し遂げ
人竜戦争の際はバハムートの実態を知っていたため加担しなかったのだった
またその戦争の兆候をバハムートに知らせたともいわれている
「大変ですイチピモ様」
王座に座るイチピモの前に家臣の一人、シャルルが現れる
その様子におどろくイチピモ
「シャルル!! お前、今までどこにいたんだっ、それに昔と姿が変わってないように見えるぞっ」
「私が昔のままなのは私が魔道に精通しているからです、それよりイチピモ様大変です」
「なんだ、いったいどうしたというのだ」
「そ、それが・・・・この大陸各地で戦争が起きているそうです」
「なんだと・・・それなら我が国にも侵略者が現れる頃だぞ」
「いえ、先の争乱で我々は加担しなかったため私達の背後にバハムートがいると噂されているのでそれは大丈夫かと」
「では、何におびえているのだ」
「洋介です、奴が生きていたんです」
「馬鹿な、そんなはずないだろ、洋介はあの雪山でガリシィルに倒されたはずだろ、お前も見ていたじゃないか」
「それは・・・・そうなんですが」
「大変だ、侵入者だぞっ!!!」
王座の間の外から兵士達の声が聞こえてくる
「邪魔だっ!!」
ドォンッ!!!と扉が開き、兵士達が王の前に吹っ飛ばされてくる
その様子に立ち上がるイチピモ
彼の左手にはゴットヘルモミーソードが握られていた
「何事だっ!!」
「久しいなイチピモ、しばらく見ないうちにずいぶんと老けたんじゃないか?」

「お前は洋介!!」
そこに現れたのは死んだはずの洋介だった

シャルルと同様に姿は変わっていない様子、
しかし髪型は以前より長く左半分の素顔を隠している
「洋介、今更ここに何しに来たのですかっ!!」
「シャルル、元気そうだな、もう一人いただろ? マリーはどうした?」
「・・・・マリーなら死んだよ」
「そいつは災難だったな」
「それでここに何しに来た」
「分かってるだろ? ガリシィルの居場所を教えろ」
「・・・・・それを知ってどうする」
「決まってるだろ、あいつは俺の、俺だけの賞金首なんだっ、俺はあの日から奴を追いかけているんだっ」
洋介の脳裏には、かつてイチピモ達がガリシィルと共に寄った町アルヴィレッデの様子が思い描かれている
イチピモは右手で顔を覆う
「知らないのか?、ガリシィルはもう・・・・この世にはいない」
「ふざけたことをぬかすなっ」怒鳴る洋介
「でも確かに、俺はそう聞いた!!、邪竜と共に帝国の奴らが殺したと・・・・どうなんだシャルル」
シャルルの顔をうかがうイチピモ、
その様子からガリシィルが死んだという話はシャルルから聞いたらしい
イチピモと顔を合わせてシャルルは洋介の方に視線を向ける
「・・・・・洋介、イチピモ様は何も知りませんよ」
「そうか、なら用済みだな、お前達はここで死んでもらう」
そういうと洋介は手のひらをイチピモ達に向けた
シャルルは咄嗟にイチピモを庇う

ソウルブレイカー!!

突如黒い影が洋介の体から現れイチピモ達を襲った
その瞬間、シャルルは血を吐き床に倒れてしまう
同様にイチピモも膝をつく
「ごふっ・・・・な、なにをした・・・」とイチピモ
「あれ、おかしいな、俺の魔法を食らって生きているなんてな」
「陽介ぇぇぇぇ!!!」
イチピモは力を振り絞り立ち上がるとゴットヘルモミーソードで洋介に切りかかる

モミースラッシュ!!

その後、洋介の肩から血が噴き出すが
イチピモの腹には大きな穴が開いていた
洋介の刀がイチピモの体を貫いたのだ
その時、王座の間に駆けつける4匹の竜

「モミー国王っ!!!」

そう叫んだのはウルだった
その様子に振り返る洋介
ソシルガ達を見るとイチピモの体を貫く刀を引き抜き
がっかりした様子で口を開く
「なんだ、ガリシィルじゃないのか・・・・・ガキ共が俺に何か用か?」
「モミー国王から離れろっ!!」
「あぁ、お前達も俺の邪魔をするなら容赦はしないぞ」
「いいからどけよっ!! 俺はこう見えてもガキじゃねぇぞっ!!」
そういうのはソシルガ
黒竜の彼は124歳で、よく知るガリシィル達の倍以上は生きてる、
まぁそれでも竜族の中では若い方さ
ラジェスなんかその5,6倍は生きてるわけだからね、
正確な年齢は誰も知らないけどさ
「そいつは失礼したな、何せ俺は人間だ、お前たちの生態はよく知らんのでね」
「ソシルガさん、彼をこの場で倒してください、彼を生かすと後の世界平和に影響を及ぼします」
ウルはそう言った
「何か見えたのか?」
「どういうことだい」とデュー
「彼には不思議な力があるのよ、もしかしたら未来を予知したのかも」とティリナ「・・・・・そうか、そういうことなら、僕も協力するよ」
デューは頭を掻くと、ソシルガの隣に並ぶ
「デュー王子?」
「ここは僕が、君は後ろに下がってて」
「で、でも王子一人で大丈夫なのかっ」
「いいから、じゃないと巻き込んでしまうよ」
そういうとデューは洋介の方へ一人で近づいた
「おいおい嘗められたもんだな、お前ひとりで俺を倒せるとでも思っているのか?」
洋介は横たわるイチピモから離れて
刀についた血を振り払いながらデューをにらみつける
「あぁそうだよ」
彼の体から蒸気のような白い靄が漂った
そのとたん、辺りの空気がひんやりとしはじめデューの足元からはパキパキと音が鳴り始める「な、なんだ、急に寒くなってきたぞ」とソシルガ
「皆さん、僕のそばに寄ってください」ウルは魔法の幕を広げた
そのとたん洋介はデューに向かって走り出したデューは身動きひとつとらない
「危ないデュー王子っ!!」叫ぶソシルガ
一瞬だった襲い掛かった洋介はあっという間に氷河に閉ざされ
デューの目の前で氷の彫像みたく立ち尽くしていた

「勝負は僕の勝ち、もう聞こえてないだろうけどね」

デューはそういうとウル達の方へ戻ってくる
「や、奴は死んだのか?」とソシルガ
「あぁ、体の芯まで凍ってるよ、あのまま倒したら粉々さ」
「それよりモミー国王の手当をしなきゃっ まだ生きてるわよ」
「ティリナさん、残念だけど・・・・あの傷ではもう助けられないんじゃないかな」とデュー「ウル、貴方なら助けられるでしょ、なんだって不思議な力があるんですもの」
「・・・・・できる限りの事はやってみます」
ウルはそういうと今にも死にそうなイチピモの体に手を触れる
ウルの掌からまばゆい光があふれるが、傷がふさがる気配はない
するとイチピモは口を開く
「もうよい、俺はまもなく死ぬだろう、それより俺の頼みを聞いてくれ」
「モミー国王っ」
「ガリシィルに伝えてくれ・・・・暗黒神竜が彼の地で蘇ると・・・・・彼は・・・・まだ、生きているはずだ」
「その方はどこにいるんですか、僕は、その方に会わなきゃいけないんですっ」
手を強く握るウル
「・・・・・」動かなくなるイチピモ
その様子にウルの肩をつかむソシルガ
「そいつはもう死んだよウル」
「くそ、肝心の居場所が聞けなかった・・・・・どうすれば」
「それよりガリシィルって誰なのよ」
「聞いたことがあるな、かつてバハムートが世界征服をしようとしてた頃、バハムートを止めるために立ち向かったって、確か通り名は」

「銀髪の竜」

そういったのはデューだった
「知っているのかデュー、その通り名はお前が生まれる前の事だぞ」
「あぁ、その方はきっと父上の親友だよ」
「これで、次の行き先が決まりましたね」立ち上がるウル
デューはため息をついた
「はぁ・・・・、僕はこのまま帰るわけにはいかない」
「それなら心配いりません、僕が帝国の情報を知っていると言ったはずです、アルスティに行けば知っていることをすべてをお話しましょう」
「・・・・・分かったよ。」
そうしてソシルガ達はアルスティへと向かった
王を失ったヘルモミー王国は後に隣国マルハーデスの領地となり、そして滅亡した。
ガリシィルと共にバハムートと戦った人間はこの時点で残り4人となった
そのうちの生存の確認が取れるのはハルス王国の王、シヴァ王ただ一人である。

続く