りぅの風森

第48話

第48話 -ゴブリン兄弟と水の大精霊-

世界を救うためサンスリナ地方にいる大精霊達との契約をすることになった僕達
アスガールの洞窟にいた火の大精霊ヘルサラマンダーと無事に契約を終え
ガリシィルの指示で次に目指す場所は水の大精霊がいるアルフラウドの遺跡へと目指す

アスガールの洞窟から北東へ6時間ほど移動するとその遺跡は見えてくる

「ここがアルフラウドの遺跡か?」
そう言ったのはアウル
僕達の前には巨大な大理石で建てられた建物がある
だが、この建物は地下に続く通路を雨ざらしから守るために建てられたにすぎない
「そうだ」と、ガリシィルは言って建物の中へと入って行く
建物の中に入ると地下へと続く階段が堂々と目の前に飛び込んでくる
僕達はその階段を降り始めた
しばらくしてレスクが口を開く
「感じる…感じるぞっ! これは水の精霊と同じ気配だっ」
「当たり前だ、俺達は水の大精霊に会うためにここに来たんだからな」
しばらく階段を下りると
大きなフロアにたどり着く
床は水に満たされた空間だ、僕達の膝ぐらいの高さまで水に浸かっていた
この部屋の奥にはさらに地下へと続く階段があるが、鉄格子の扉が行く手を阻んでいる
「えっと・・・・奥の扉を開けないと先に進めないみたいだけど?」
「どうやらそうらしいな、とりあえず扉の状態を確認してみるとしよう」
そういうとガリシィルは鉄格子の扉の隙間にある棒を掴んで開けてみようと試みる
「どうだ? 開きそうか?」とライ
「ダメだな、やはり鍵が掛かってる」
すると少し離れたところでチョロが手を振ってこちらに合図しているのが見えた

「おーい、こっちに別の通路があるぜ」

チョロに言われて集まる僕達
確かに隠し通路がこの部屋にはあった
だけどその通路の途中から底がはっきりと目視できない
「危険だ、この通路は途中で底が深くなっている、それにこの感じ・・・・」
「どうしたのガリシィル?」
「水流が向こうに向かって強く流れている、もしかすると・・・・」
「どれ、私が見て来よう」
「正気かライ!?」とチョロ
「あぁ、こう見えて泳ぎは得意なんだ」
「よせ、大人の俺でもまともに泳げるかどうか・・・危険だぞ」
「心配はいらないさガリシィル、行ってくる」
そういうとライはその通路をゆっくりと前進した
底が見えなくなった位置に着いた瞬間、大きくライの体が床に向かって沈む
その様子を見て思わず声を上げる僕
「ライっ!」
「大丈夫だっ、ガリシィルのいう通りここから床の段差が違うみたいだ」
「流れはどうだ?、自由は効くか?」とガリシィル
「心配ない、が、一応心配だからロープをくれっ!」
「だそうだルイ」視線を僕に送るガリシィル
「ぇっ!? ロープ? そんなもの僕持ってないよ?」
「心配すんなってルイ、俺が持ってるぜ」
そういうとレスクがどこからか丈夫なロープを取り出しライに向かって投げる
一度それを受け取ったライだが、片方の端をレスクに投げ返した
「馬鹿、片端はそっちが持ってくれないと意味ないだろーーーっ」
「あぁわりぃ、そういうことね」
レスクはそのロープを握りしめる
そしてライは通路が続く奥へと泳いで進んだ
「ところでレスク、あのロープの長さで足りるかなぁ?」
「心配ないだろ、通路の横幅から考えると大きな部屋に続いてるってわけじゃなさそうだしな」

しばらくすると地響きが鳴り始める

「な、なんだ!?」驚く僕達
そこへ通路の奥へ進んでいたライが戻ってくる
「ライ、何があったんだ!?」
「いや、スイッチみたいなのがあったから押してみた・・・・それよりみんな気づいたかい?」
「・・・・水の流れが変わったみたいだな、他に異変は?」
レスクに言われて辺りを見渡す僕達
鉄格子の方から ガチャンッ という物音がした
「どうやら鍵が開いたみたいだな、何故だか分からないが」
「とにかく行ってみようぜ、水の流れも階段下に続いてるみたいだしな」とアウル
よく見ると階段のわきに水が流れて行っている
先ほどまでは流れが止まっており、完全に水没していた地下への階段も徐々に水上に現れる
僕達の膝まで浸かっていた水も気が付けばどんどん下がっていた
「よし、行こうみんなっ」
僕達はそのフロアを後にしてさらに地下へと進んでいく
すると今度は魔法陣が描かれた祭壇のような広場がある
祭壇の奥には下に続くハシゴがかけておりさらに下へ降りれるみたいだ
上から流れてくる水はそこへ滝のように落ちていっている
「なんだ、意外とすぐに魔方陣があるじゃないか、む・・・・」
魔法陣を見てレスクは首を傾げた
「どうしたんですかぁ?」とサラ
「すぐに契約できると思っていたが魔方陣が作動してないようだ」
「どうやら何かの仕掛けを解かないといけないようだな」
「となると・・・やはり下に降りないといけないってわけか」
チョロは水が流れ落ちていく方へ視線を向ける

と、その時だった
下から2匹のゴブリンがハシゴを登ってくる
「お前達、こんなところで何してるダブーッ!!」
「兄貴の言う通りだブーッ!」

「それはこっちのセリフだぜ」とアウル
「お前らどうやってやってきた、上から来たわけじゃなさそうだが?」
ライは光雷剣を鞘に入れた状態で持ち手を握るとゴブリン達に差し向ける
するとゴブリン達は口を開く
「俺達は誇り高きゴブリン兄弟、ゴブニキ」
「そして私は弟のゴブテイ、だブー」
「俺達はこの遺跡を守護するためにこの地に眠っていたんだブー」
「私達が目覚めたということは侵入者が来たという証・・・・お前達がその侵入者だブーね」
「だとしたらどうする?」睨むガリシィル
「まずは訳を聞こうかだブーッ!」
「では俺から簡単に説明する、世界が危険なんだ、そのためにここの大精霊と契約をしたい」
「・・・・・お前、神子族だブか?」
「見ての通りだ」
「事情は分かったブー、でもだだで精霊様に会わせるわけにはいかないだブー」
「なんだとっ」
「精霊様を呼び出すにはこの下の階にある石碑に俺達が持つ魔法の玉を2つ同時に埋めなきゃいけないだブ」
「では早くそいつをこっちに渡してもらうか」
「慌てないでだブーッ!」
「そうだブよっ!、欲しかったら私達を倒してみせるだブー」
「俺達はそれぞれ二手に分かれて下で待つダブー、お前達も二手に分かれるだブよーっ」
そういうとゴブリン兄弟はハシゴを降りて消えていった
後を追いかける僕達だが、足が止まる
右と左に分かれる通路があった。おそらく先ほどゴブリンが二手に分かれろって言ってたことだ

わずかな沈黙が続いてレスクが手を広げた
「どうするよ?」
「どうすると言われても、行くしかないだろう」とライ
「問題はパーティの組み分けだな、あいつらただのゴブリンとは何かが違うぞ」
「よし、ここは聖戦器を持つ俺とルイで二手に分かれるとして、ルイ、後はお前が組み分けを考えろ」
「えぇ!? ちょっと待って、今考えるからさ・・・・。」
ここにいるメンバーは僕とガリシィルそしてサラにレスク、アウルにライと後はチョロを入れて7人
となると分けるなら3対4ってところだろうか
支援が豊富にできるサラとそこそこの支援ができるレスク、二人は別々にして
問題は残る3人だよね・・・・。
バランスをとるにはチョロとアウルはセットにした方がいいかな
うーん・・・・・

「よし、レスクとライはガリシィルと左側を頼むよ、残りは僕についてきてっ!」
「分かった((ぜ)りましたー)」
僕は右側の通路を進むことにした
後に続くアウルとチョロそしてサラ

残ったライとレスクはガリシィルに視線を向ける
「よろしく頼むぜ、それより大丈夫なのか?」
「何がだ?」
「レスクはお前の容体を心配してるんだ」とライ
「・・・・お前達、気づいていたのか?」
「まぁ、なんとなくな、辛くなったら無理すんなよ、俺とライだけでもあの程度の魔物倒して見せるぜ」
「ふん、配するな、この旅を終えるまでは支障はきたさない」
「・・・・だといいのだが」
そうしてガリシィル達は左側の通路を進んだ

各通路の奥ではゴブリン兄弟が腕を組み仁王立ちで待ち構えていた
彼らの後ろには魔法の玉を入れる石碑がある

-ルイサイド-

「上手くチームの組み分けが出来たみたいだブーね」
そう言ったのはゴブリン兄弟の兄、ゴブニキだ
どうやら僕達の相手はこのゴブニキのようだ
ゴブニキはどこからか巨大な斧を取り出し、肩に担ぐ
「魔法の玉は簡単には渡さないだブーー、準備はいいだブか?」
「いつでもいいさ、ねぇ?、みんなっ」
僕の問いにこくりと頷く、残りのメンバー達
「そうかい、では、行くだブーーーっ!!」
ゴブニキは斧を振りかぶり、僕に向かって襲い掛かる
ゴウッ と空気を断つ音がなる
僕はそれを簡単に回避する
「よし、反撃だーーっ!」
僕の掛け声に応じてチョロとアウルがゴブニキに向かって走り出した
「俺に合わせろチョロっ!」
「任せとけってーのっ」
二人の同時攻撃
X字にゴブニキを切り裂く
「ゴブゥッ!?」
後ろによろけるゴブニキ

「やったかっ!」とアウル

「ゴブ・・・・少しはやるみたいゴブね、ゴブも本気で行くだブっ!!」
腹を押さえながらゴブニキの体から闘気が溢れ出す
それは青白く輝いて見えた
「なんだこいつ・・・突然体から闘気が!?」
「チョロさん、アウルさん、気を付けてくださーいっ!!」
サラの呼びかけと同時に二人の体が宙を浮いた
「何!?」 驚く二人
次の瞬間、二人は僕の目の前まで吹っ飛ばされる
「うわぁぁ」「ぐわぁっ」 ドサァッ
「大丈夫かっ!?」と僕
「チョロ、今、何が起きた?」
「分からねぇ、奴は動いてはいなかった・・・・俺達の体が何かに当たって突然弾き飛ばされた」
「くっくっくっ、俺はただのゴブリンじゃないって言ったはずだブー」
闘気を身にまとったゴブニキは斧をこちらに向けた
「・・・・今度は僕が行くよ」
「ルイ、気を付けろ、奴は不思議な力を持っているぞ」
「分かってる、サラ、二人を頼むよ」
そう言ってサラに二人の回復を命じると僕はゴブニキの懐に瞬時に移動する
「な、早いだブっ!?」
「くらえっ!」
僕はその場で体を捻り尻尾で攻撃する
それは勢いよくゴブニキの横腹を捕らえた
チョロとアウルが攻撃を仕掛けた傷跡に重なる
「ごぷぅぅぅぅ!?」
ゴブニキはそのまま壁の方へと吹っ飛んだ

ドォォォンッ!

ちょうどその頃ガリシィル達は
僕達と同様にゴブリン兄弟のゴブテイと戦いを繰り広げていた
僕がゴブニキを壁に叩き付けた音がこちら側にも聞こえる
「何の音だ?」よそ見をするライ
「・・・・・ルイ達の方から聞こえてきたな、無事だといいが」
「心配するな、あのバカ者達が負けるとは思えん」

「お前達、他人の心配より自分たちの心配をしたらどうだブか?」
ゴブニキとは違ってゴブテイは刀を使うらしい
同様にどこから持ち出したというのか、刀をこちらに向けている
そしてやはりこのゴブテイも謎の闘気を放っていた
ゴブニキとは違い、赤い色の輝きをその体から放っている
そしてゴブテイは動き出す

ゴブリンエクスカリバーッ!

ガリシィル達に襲い掛かる無数の斬撃

それらを切り裂くガリシィルだが
一方でライは受け止め後方に下がる
「ちぃ、なんて威力だ、私では受け止めるのが精一杯だ」
「あぶねぇ! 女神の盾よっ」

シールドオブスタンスッ!

ライの前に飛び出しレスクは身構える、すると体が突如輝く
斬撃はレスクの体に当たるとドォンッと音を上げてかき消された
「すまないレスク、助かった」
「気にすんな、それより俺達も反撃しねぇとな」
その間にガリシィルはいち早く行動していた
ゴブテイの斬撃を切り裂きつつもガリシィルはそのまま距離を詰めて間合いに入っていたのだ
「なにゴブ!?」

爪連斬ッ!

爪による素早い連続攻撃
ゴブテイは剣でそれらを防ぐ

「ほう、やるな・・・・これはどうだっ」
ガリシィルは手を緩めない

幻影の爪痕ッ!!

「そんな攻撃・・・・ゴブゥゥッ!?」
ゴブテイはガリシィルの攻撃を再び防いだように見えた
だが、ガリシィルの攻撃はその防御をすり抜ける
ゴブテイの体が血を吹き出しながら宙へ舞う

「終わったな」

ガリシィルがそう口にした直後だ

「ブルーサンダーっ!」とライ

青い稲妻がガリシィルの後方から迸り、ゴブテイに直撃する

「逃がすかよ 神罰よ、落ちろ ホーリークロスッ!!」

さらにそこに巨大な十字架が落ちてくる

ドゴオォンッ!
大きな爆発音が鳴り響く
そして・・・・・。

「参ったゴブ」ドサッ

ゴブテイは魔法の玉を手放し、地面に倒れた

一方で僕達もゴブニキを倒していた
壁に叩き付けられたゴブニキにアウルとチョロの回復を終えたサラが魔法で追撃したのだ
そして僕は倒れたゴブニキの側に歩み寄り魔法の玉を手に入れる

「これが魔法の玉か」
「確か、それを石碑に入れるんでしたよね?」とサラ
「うん、ゴブリン達の話だとこれを石碑に入れれば上にあった魔法陣が起動するみたいだ」
「でも同時に入れなきゃいけないって言ってなかったか?」
「そうだぜルイ」
アウルの言葉に頷くチョロ
「・・・・・とりあえず入れてみよう」

ガコッ

僕は魔法の玉を石碑に入れてみた
何も起きなかったが、しばらくして大地が揺れ始める
「な、なんだ!?」驚く僕
「どうやらガリシィルさん達の方もゴブリンを倒したみたいですね」
サラはガリシィル達がいる方の壁を見つめて口を開く
しばらくするとチョロが僕の肩を掴んだ
「戻ってみようぜ、もしかしたら魔法陣も起動してるかもしれねーしよ」
「そうだね、いったん戻ろう」

僕達は来た道を戻った
そこでガリシィル達と合流する
「ルイっ!」
「ガリシィルっ!!」
互いに無事を確認し声を上げた
「どうやら無事に倒せたようだな」
「そっちもね、それよりさっきの揺れは一体何?」
「・・・・・俺に聞かれてもな、たぶん魔法陣が起動した合図だろう」
「とにかく魔法陣の所に行こうぜ」
レスクに言われて僕達は「あぁ」と相槌を打つのであった

再び魔法陣がある場所に戻ってきた僕達
初めて来た時とは特に変化はないのだが
魔法陣の上で火の玉のようなものがふわふわと浮いているのが見えた
「あれは?」
「あー・・・・精霊の御霊ってところか? ま、ここからは俺に任せておけ」
そういうとレスクはその火の玉に手を差し伸べる
「我呼びかけに応えよ、深海の王、ディヴァイア!」
その途端、火の玉から突如水が吹き出し、巨体な蛇みたいなものが僕達の目の前に姿を現す

「わが名はディヴァイア・・・・・神子族よ、何故、我の力を求めるか?」
「世界が危険にさらされている、世界を救うためにはお前の力、大精霊の力が必要なんだ」
「よかろう、我はお前に力を貸そう」
「ありがてぇディヴァイア」
「あれ? 今回は精霊とは戦わないの?」
「ん? そういやルイの言う通りだな、ディヴァイア、お前と契約するための試練はないのか?」
「試練ならもう終えている、私を呼び出せたということはあのゴブリン兄弟を倒したということだからな」
そういうとディヴァイアはどこかへ消えてしまった
どうやら契約はすんなり済んだみたいだ

「まさか、あれが試練だったのか・・・・・」考え込むレスク
「ゴブリンだと思えば強かったが、そこまで大したことはなかったな」とガリシィル
「そうかな?・・・・一時はどうなるかと思ったよ、アウルとチョロがやられそうになったし」
僕は二人の方へ視線を送る
「悪かった(な)!!」
「私もあの無数の斬撃攻撃をまとも食らっていたら無事ではすまなかった」俯くライ

「まぁ、なんだ?、過ぎたことだ、とにかく残すはあと1体、風の大精霊のところへ向かうぞ」
「それで次はどこに行くのガリシィル?」
「セルバードの遺跡だ、ここから南にずっと進んだところにある」
「なるほど、とりあえず外に出ようよ、ここジメジメしててちょっと気分が優れないからさ」
「そうだな」

そうして僕達はアルフラウドの遺跡を後にした
外に出ると日が暮れていて夜になっていた

「流石に今から向かうなんてことはしないよな?」とアウル
しばらく黙り込むガリシィルだが、皆の視線を感じたのかため息をつく
「はぁ、向かうのは翌朝にする、それでいいな?」
「やったぜっ」ガッツポーズをとるアウル

そうして僕達は一晩をそこで過ごすこととなった

皆が寝静まった頃
僕は一人、離れた場所で密かに修行していた
というのも聖戦竜ラハヴァから授かった聖戦器『スカイファルコン』をうまく使いこなせていないからである
確かに他の武器とは比べて重さがなく、直接攻撃する分には何の問題もないのだけれど
この武器の特殊能力は身体向上の他に遠隔斬撃を可能にできる事だ
僕は腕を振るって遠くの岩を破壊してみせる
ドガァァンと音を立てて、岩が粉々になった、
しかし、狙った場所とは全くの別の場所である
「・・・・・これならまだ魔法の方がマシだよ」
僕は指先から風の矢を放ち、今度は狙い通りの場所を破壊して見せた

何がいけないんだ?
と悩んでいると後ろから何者かの気配を感じる
「誰だ!?」

「力み過ぎだ」

そう口にしたのはガリシィルだ
「ガリシィル!? なんでこんなところに・・・・」
「お前が一人でどこに行くのかと思ってな、ついてきてみれば今更修行か?」
「・・・・・仕方ないだろ、このままじゃ仲間に迷惑をかけるかもしれないんだ」
「お前の斬撃がノーコンになったのは十中八九武器のせいだ、以前装備していた武器でやってみろ」
そう言われて僕は以前装備していたイーグルファルコンとウィザードイーグルを取り出す
だけどこの二つの武器は遠隔斬撃ができる能力があるわけではない
この武器でどうやって飛ぶ斬撃を放つというのだ?
いや、確かに僕はこの武器でも遠隔攻撃をやっていたはずだ

そう、あれはまだドラファールにいた頃
しょっちゅう山賊が町に襲いに来ていたあの頃だ

「くらえっ!」

山賊に向かって風の斬撃を放つ自分の姿を思い浮かべる

「・・・・。」
僕は何も言わず腕を振るった
ドォンッ
今度は狙い通りの場所に斬撃が届く
「確かに、そうみたいだね」
「今の装備と同じ感覚で攻撃しているからダメなんだ、お前は武器の性能がなくても遠隔斬撃出来るからな それが裏目になっている」
「つまりどう言う事?」
「もう少し力を抜けってことだ、俺は戻るぞ朝までには戻って来いよ?」
「・・・・・待ってよガリシィル」
「何だルイ、特に難しいことじゃないだろ?」
「違うよ、ちょっと僕の相手をしてくれないかい」
「なんだと!?」
「ノーコンになってる原因は分かったよ、でも問題は動くまとに当てれるかどうかなんだ」
「それで俺が的になれと? 冗談だろ」
「君は僕と同じく聖戦器がある、君なら僕の攻撃を食らっても平気だろ?」
「・・・・・お前、俺はこう見えても病人なんだぞ」
そう言われて僕はハッとする
「そっか、そうだった・・・・・平然としてるからつい ごめん」

「それなら私が代わりを受けよう」突然 二人の背後から声が聞こえてくる

「え?」
「なんだ、お前も起きてたのか? ライ」
そう、僕達の所に現れたのはライだ
右手には光雷剣が握られている
「いや、目が覚めたらお前達がいなかったからな、探していたらなんとやらだ」
「そうか、じゃ、この馬鹿の相手をしてやってくれ 俺は戻る」
ガリシィルはライの肩を叩いて、その場から離れて行ってしまった

「・・・・いいのかい?」
「私も修行したいと思っていたところだ、昨日のゴブリンとの戦いでまだ自分が弱いと気づいたからな」
ライの脳裏ではゴブリンの攻撃を受け止めるので精いっぱいだった様子が浮かぶ
「分かった、ありがとうライ」
「ふんっ、では始めるか」

二匹の修行は朝方まで続いた
僕は精密さを磨き、ライも同様に反射神経や力を向上させた かもしれない
その成果は次の戦いに結果として出るのだろうか

僕達は朝を迎え、皆とセルバードの遺跡を目指す 続く