りぅの風森

第90話

第90話 アルジェスとバハムート
前回のあらすじ

バハムートを殺すためにドラグレッサへと向かったとアルジェスと黒竜の大群
それらを食い止めるためにルイ達はすぐにドラグレッサへと移動した
しかし、そこに待っていたのは 物凄い数の亡骸、そして1匹の黒竜だった
黒竜はリュカの父親 ルイリヒトを殺そうとしていた

そして物語はここから始まる

「親父っ!!」
リュカは叫んだ
その声に気づいて黒竜はこちらに視線を変えた
すると黒竜はルイリヒトを手放した
「どうやら魔王は役に立たなかったようだな」
「何、ということはやはりお前が魔王を!」
「ふ、だとしたらどうする?」
鼻で笑ったアルジェス
するとリュカが突然攻撃を仕掛けた

竜の輝く閃光!
ドラグレア・ライト!

閃光が発しアルジェスを捕らえて爆発を引き起こす
「お、おぃ!」
「父さん!?」
ガリシィルと僕はリュカの方に視線を変えた

そして煙の中からアルジェスの声が聞こえてきた
「不意打ちとはやってくれるじゃねぇか」
「五月蠅い!今すぐ親父から離れろ!」
そういうとリュカは身構えた
「そう慌てるな、老いぼれにはもう用はない」
アルジェスの身体は無傷だった
そして、こちらへゆっくりと歩み寄って来た

『な、あの攻撃で無傷だと』

リュカの放った魔法は世間で言う禁断魔法の一つだったのだ
それなのにアルジェスはその魔法を食らっても傷一つ付いていなかったのだ

「俺はバハムートを殺しにやってきたのだ、貴様らごときの攻撃が効くものか」
「どういうことだ、リュカの魔法は確実にあいつを捕らえたはずだぜ?」
チョロが指を指した
「シィル、何か見えたか?」
「いや全くだ、だが、もしかすると・・・・」
「それより、久しぶりに会う奴がいるが、他種族と共に行動してるとはな、ラジェスよ」
「・・・・」
「ラジェス、どういうこと? 君はアルジェスのことを知っていたの?」
「いいことを教えてやろうか、そいつとは血のつながった兄弟なんだよ」
「な、なんだって!?」
「馬鹿な!ラジェスに兄弟はいないはずだぞ!」
「すまないガリシィル、ルイ、あいつは俺の兄貴なんだ・・・」
「なっ!?」
「もっとも、俺はお前みたいな出来損ないとは違うがな」
「黙れ!それ以上ラジェスの悪口を言うな!」
ヒョウがアルジェスの前に飛び出した
「やめろヒョウ!そいつの言う通り俺は出来損ないなんだ」
「・・・でもラジェス」
「俺とあいつとじゃ、戦力も桁違いだしな」
「そういうことだ、雑魚は雑魚らしく大人しくしているんだな」
アルジェスがそう言った時だった
ラジェスは背中に担いでいるドラグレアバスターを手に取りアルジェスに切り掛かったのだ

ガッ

「おいおい、兄に向かって何をするんだ?」
「俺はただ、これ以上の犠牲を出さないためにお前を倒さなければいけないのだ!」
「これが噂に聞く竜殺しの剣か、流石に生身の身体では防げない・・・・か」
アルジェスの腕からは血が流れ出ていた
それは大した傷ではないが確かに竜であることを証明した
「いくらお前がバハムートより強い力を手に入れていたとしても、所詮は竜だ!この剣に切れぬ竜はいない!」
「はっ、目障りだ!」アルジェスはラジェスを片手で払い除けると魔法を放った

「危ないっ!ラジェス!!」

暗黒の天空星
ダークスフィアスター!

黒い球体が無数に現われ
それらが一斉にラジェスに襲いかかった

同時にサラがマジックシールドを張るが全然間に合わなかった

「うがぁぁぁ」

ラジェスはアルジェスの魔法を受けて激しく後ろに吹っ飛ばされた「な、なんて威力だ」
「これで分かっただろう、お前達とじゃ話にならない」

「やってみなきゃ、分からないよ!」
「よせルイ! あいつは間違いなくバハムートクラスの戦闘力だ」
「だけど、僕達が戦わないで誰が戦うんだよ!」

「私が戦うのよ」

そこへ現われたのはバハムートだった
「バ、バハムート!?」
「やはり私がお相手しないといけないみたいだわね」
「残念ながら、俺はお前を超えたんだよ、そしてドラグレア大陸を支配するのはこの俺だ」

「・・・そう」

「忘れもしないぜ、貴様の軍事行動のおかげで俺の任務がことごとく失敗したのをな」
「そんなこと、私の知ったことではないわ、第一あなたはただの殺し屋じゃない?」
「黙れバハムート! 俺はな、昔から貴様を殺したかったんだよ!」
アルジェスはそう言ってバハムートに襲いかかった
バハムートは微動だもせず煙管を咥えていた
「おぃバハムート!」「あなた達は下がってなさい」
するとバハムートは片手でアルジェスの攻撃を受け止めた
ガシィッ
「私を超えた? その程度の攻撃は効かないわ」
するとアルジェスはニヤリと笑った
「それはどうかな?」
バシュゥゥ

と、バハムートの頬から血渋きが出る
「……なに」
「だから言っただろう、俺はあんたを超えたと」
そしてアルジェスは手を掲げた
それと同時にバハムートが魔法を放つ

竜の輝く嵐!

凄まじい暴風が吹き荒れアルジェスと、その一帯を飲み込んだ
しかし、アルジェスはその魔法の中から無傷で出て来た
それを見たガリシィル達は目を疑った
「馬鹿なっ、バハムートの魔力でもノーダメージだというのか!?」
「ありえないわ」
バハムートは後ろに一歩下がった
「どうした、貴様の魔力もこの程度か?」
アルジェスの左手にはいつの間にか見知らぬ剣が握られていた
それを見たバハムートの表情が変わった
「………あなたまさか」
「この神剣はもともと俺の祖先の物だったんだぜ?」

「あ、あれは……」
そこへラジェスが気を取り戻した
サラが回復魔法を唱え続けている
「ラジェス、あの剣を知ってるのか?」
「あれは神剣・フラタニティス、13番目の聖戦器……」
「な、あれが!?」

「馬鹿な、その剣は私が破壊し、二度と力が出ない用に封印したはず」
「残念だったなバハムート、俺は錬金術も身に付けているんだ。なんなら他の聖戦器の複製でも作ってやろうか?」
「ふざけるな! 聖戦の遺産を簡単に製造するなんて、許されるものか!」
僕はアルジェスの前に出た
その後にレスク達が続く
「同感だな、過去の遺産はそのままにして置くべきだ」
「雷竜族の恨み、今ここで晴らす!」
「俺はルイに付いて行くぜ」
「俺もだ!記憶の標を見つけるまではね……」
「レスク、ライ、アウル、チョロ……」
「何をしてるの、あなた達では彼は倒せないのよ? 」
バハムートが言った
「そんなことは分かってるよ! でもバハムートあなただけでも倒せないなら、全員で戦うんだ!」
「私と共に……だと」
「ったく、仕方のない奴だ 俺達も行くぞ!」
ガリシィルがレイウェル達に言った
「・・・お前はダメだ」
「なんだと!?」
「そうですよガリシィルさん、まだ傷が癒えてないんですから!」
「……くっ、どうすれば」
「俺達の戦いを見ていろ、あいつはもともと私と同じただの黒竜だ」
傷が癒えたラジェスは再びドラグレアバスターを手に取ると立ち上がった
「行くぞ! 全員でアルジェスを倒すんだ!」

そして
バハムートの過去が蘇る

「我々は永遠の命を持つ竜、そしてお前はその一匹だ、名はバハムート」
「それが私の名前?」
「そうだバハムート、お前は我々と同じ永遠の命を持つ竜、そして世界を見守る存在……」
「世界を見守る?」
「そうだ、お前は聖戦竜に選ばれると共に世界の流れを見続けならない」
「どうして私なの?」
「我々はもともとこの世界とは異なる世界にいた、だからこの世界で生まれたお前が見守らなければならないのだ」
「………。」

「おぃ、バハムート!何をボサッとしてるんだ」
「なんでもないわ、ラハヴァ」
「さっきから、様子が変だぞ? さては拾い食いでもしたな?」
「馬鹿ね!そんなんじゃないわよ!」
「なぁ、バハムート、ラグナロクは死んじまったが、あれでよかったんだよな?」
「魔剣に魂を売ったんですもの仕方ないわ」
「おぃ、ラハヴァ、バハムート こんなところで何してるんだ?」「いや、ラグナロクの件でね」
「……あいつのことは忘れろよ、俺もフォル達だってあんな思いはしたくないさ」
「レアルの聖戦器も闇の剣でしょ、あなたは大丈夫なの?」
「それを言うならバハムート、お前は闇の魔法を授かったらしいじゃないか、お前こそ大丈夫なのか?」
「………私は」

そうして聖戦時代は終わった

それから数億年後ドラグレア大陸を巡って戦争は起きた
「どういうことだバハムート! 聖戦を終えた今、世界を見守るのがお前の真の役目ではないのか!」
「私は絶望したのよ、聖戦が終わり、我々竜族は平和に暮らせると思っていたのに それなのに世界を見てください、各地では土地を巡って戦争が起こっているのです だったら私が世界を統一すれば……」
「なんていうことだ、我々世界を見守る竜が、戦争に加わるなど……」
「別にいいじゃねぇか、バハムートがこの世界を見守るのを止めても、代わりはいるんだぜ?」
「お前が世界を見守る資格などない!」
「はん、バハムートも俺と同じ考えのはずだがな、世界は無にならなければならないと」「それは違うわ 私が世界を統一することによって世界は救われるの」
「………ふん、せいぜい頑張るんだな」
「………」

「何故だバハムート! お前はかつて聖戦時代に世界を救ったはずなのに」
「今に分かるわルイリヒト、私がドラグレアを統一すれば戦争は起こらないということがね」
「……分かった、お前を信じよう だが中立国は攻めてはならん、聖戦竜の子孫と戦うなんて、そんなことはしたくはないのだ」
「大変です、我々と同盟を組んでいた国が次々と破綻しています!」
「なっ……」
「これで分かったでしょうルイリヒト、同盟など所詮は仮の友好なんだと……」
「覚悟しろバハムート!」
「親に挑みに来るなんてあなたも馬鹿ね」
「五月蠅い、貴様のせいで大陸は目茶苦茶になったんだ!」

「私は何度でも蘇る、何度殺されても蘇る、私は神に遣える者……」

そして、記憶は終わった
今までの記憶を思い出してバハムートは目をあけた
「ルイ! サラ! 輝く新星を唱えなさい!」
「バハムート?」
「あなたの言う通りアルジェスは皆で倒すしかなさそうだわ」

「無駄だ!この俺を倒せるものは誰もいない!」
アルジェスはフラタニティスを手に僕達に襲いかかる
「させるかっ!」
するとそこに、ラクとライとリュカとラグゥとアウルとチョロが全員で攻撃を受け止めた
「何、貴様ら虫けらに!?」
「さぁ、ルイ! サラ!後は任せたぞ!」

『神に遣えしドラゴンよ、バハムートの血縁者の名において、禁断の領域を開放する、滅びよ……抗う者達よ……』

竜の輝く新星!
ドラグレア・ノヴァ!

キュィィィィンッ!
魔力が円を描いてその場で大爆発を引き起こした
ドガァァァァァァァァンッッッッッ

「やったのかっ!?」
「・・・・・まだだっ!」
ガリシィルが後ろで叫ぶと
煙の中からアルジェスが魔法を放ってきた
「何ッ!?」

戦慄の黒炎弾っ!

それらはアルジェスの攻撃を防いでいたチョロ達に当たり
彼らは一気にガリシィルの後方へと吹っ飛んだ
「ぎゃぁぁぁっ!」
「ぐわぁぁっ!」
「がっ!」
「ちぃっ、なんて威力だ」
ラグゥだけがなんとか空中で体勢を立て直し地面に無事に着地した
「大丈夫ですか皆ッ!」
ヒョウが吹き飛ばされた皆の様態を見る

「弱い弱すぎる、貴様らの魔力では俺に傷つけることは皆無だ、何故ならバハムートの魔法ですら 俺には効かないのだからな」
アルジェスは左手に持つフラタニティスで塵を払いのけた
「馬鹿な、あれだけの禁断魔法を食らっても無傷なのか!?」
「そ、そんなぁ・・・」
するとラジェスが口を開いた
「あいつの魔法耐性はフラタニティスの効果で異常なまでに高くなってるんだ、魔法攻撃が通用するわけがない、元の魔法耐性が高いからな・・・・。」
「なるほど、そういうことね・・・・」
バハムートはアルジェスの持つフラタニティスを眺めた
「どうした、もう終わりか?」

アルジェスの強さに誰もが息をのんだ
このままではアルジェスの前に全滅するしかないのだ
「何かいい手はないのかレイっ!」
ガリシィルがレイウェルの方を見た
「あるにはあるが・・・・」
レイウェルはタバコを地面に捨てた
「どうすればいい、どうすれば・・・・」
「俺が奴の時を止め、その間にラジェスの持つドラグレアバスターで奴を切り刻むことだ」
「そうか、あいつも元は黒竜、あの剣ならあいつにダメージを与えられるな」
「だが問題がある、ドラグレアバスターの力の源である竜の怨念は魔王戦の前ですべて放出しきった、つまり今のドラグレアバスターはドラゴンキラーと大して威力は変わらない」
「・・・・・それじゃぁ」
「あぁ、あいつにはかすり傷程度しかダメージを与えられないということだ」
するとバハムートが話に割り込んできた
「あいつを倒す方法はまだあるわ」
「何?」
「リュカが覚えているあの禁断魔法を使うか、もしくはすべての聖戦器で奴を攻撃するか、後一つはあのフラタニティスを破壊すること」
「すべての聖戦器で攻撃は不可能だ、聖戦竜の血を引く者全員を呼ぶ暇なんてない、それにリュカにあの魔法を放たせるのはだめだ、間違いなく俺達も消し飛ぶ」
「だとするとフラタニティスを破壊するしかないか・・・・」
レイウェルはアルジェスを睨んだ
するとアルジェスは呆れた様子で口を開く
「作戦会議は終了か? どうせこの剣を破壊しよう企んでいるようだがそれは無理に終わるぞ」
「ど、どういう意味だっ!?」
「フラタニティスを破壊するほどの腕力を持った奴がお前らの中にいるのか?、せいぜいバハムート一人が限界だろう」
「た、確かに・・・・僕達の力じゃ」
「それはどうかな」
するとラグゥが僕の横に歩んだ
「俺は腕力に自信がある」
「そ、そうだ、君の力なら或いは・・・・」
「皆、ここは俺に任せてくれ」
ラグゥはアルジェスの前に立った
「獣人のお前がバハムートよりも腕力があるだと? ふざけているのか?」
「俺は獣人じゃない、金狼の竜だ」
するとラグゥの周りがいきなり光り始めた
そしてラグゥは姿を変えて竜になった
「な、・・・・・・・貴様は金狼竜銀狼竜の片割れかっ」
「あまりこの姿は好きではないんだがな、いくぞっ!」
するとラグゥはアルジェスに向かって走り出した
「加勢するぜっ!」
するとレイウェルが魔法を放った

静寂する世界っ!

するとアルジェスの動きがぴくりともしなくった
そう、レイウェルはアルジェスの時を止めたのだ
「そいつの魔法耐性は異常だ、俺の魔力でもせいぜい3分弱ぐらいしかそいつの時は止められない! それまでに何とかしろっ!」
「分かってる、3分あれば十分だっ!」
ラグゥはアルジェスの持つフラタニティスに攻撃を仕掛けた

「おりゃっ!」
ガッ・・・・

その直後にラグゥは動きを止めた
「どうしたんだラグゥ! 時間が無いんだぞっ!」
「この剣・・・砕けねぇぞっ!」
「な、なんだとっ!?」
「ならば私がやるわ」
バハムートはリワープし、アルジェスの間合いに現れた
まだアルジェスの時は止まっている
「物理攻撃はあまり好きじゃないんだがねぇ・・・・」

爪破霊牙弾っ!

バハムートが初めて見せた物理攻撃は目にも映らぬ速さでアルジェスを捕らえた
ガッ ドッ・・・・ドガッ・・・バギィッ

ピシィッ・・・
フラタニティスに皹がはいった

「後もう一撃っ!」
バハムートが最後の攻撃を仕掛けようとした時だった
アルジェスの時が戻ったのだ
「ぬぅっ! タイムストップとはせこい真似しやがってっ!」
アルジェスはバハムートの攻撃を間一髪で回避すると反撃した

竜爪・破斬牙っ!

アルジェスによる攻撃がバハムートに炸裂する
バハムートの下腹部を捕らえてそのまま上空に切り上げた
「ぐっ!?」
バハムートは後ろに飛んで回避するがかなりの傷を負った
「大丈夫かっ!」
「私は不死よ、死んでも蘇るわ・・・・」
「ふん、貴様が不死だということは前々から知っている、だがな、貴様が生き返る前に宇宙の狭間に封印するばこの世界には二度と戻れまい」
「・・・・まさか、お前」
レイウェルの頬に冷や汗が伝う
「言っただろう、俺はバハムートを殺すと・・・・そして俺はバハムート以上の力を手に入れたと」
「おのれぇぇぇっ! 貴様の好きにはさせんっ!」
さっきまで倒れていたライが起き上がりアルジェスに切りかかった

雷閃連牙斬っ!

バチバチバチィィィィィィィッ
キンッ キンッ キンッ
「なんだお前は 何故そこまでして俺を倒そうとする」
ライの攻撃を全て受けきったアルジェス
そして鍔迫り合いが始まった
ギィギギギギッ・・・・・
「貴様のせいで、貴様のせいで・・・・・私の同胞は・・・私の国は滅んだのだっ!」
「そうか、貴様は雷竜の生き残りか」
「そうだ、貴様がクリスを洗脳したせいで 私の国は滅んだのだっ!」
「ふん、俺はクリスを洗脳はしたが 雷竜族を滅ぼせとは命令はしてない それはあいつが勝手にやったことだ」
アルジェスはライとの鍔迫り合いに勝ち、クレアフィングを弾き飛ばした
そしてライの喉元に剣先を向けた
「お前の力じゃ俺には勝てない、分かっただろう?」
「くっ・・・・」
「ライっ!!」
「まぁ、お前も同胞の元に送ってやろう、死ねっ!!!」
アルシェスがライを切り殺そうとした時だ
何かがライの前に立ったのだ
スバァァンッ
あたりに血が飛び散る
「チョロっ!!!」
「・・・・大丈夫かライ」
「バカヤロウ、お前は何をしてるんだっ!」
「何言ってんだ俺の体力はお前より数千倍高いんだぜ・・・・。俺は大丈夫だ、早く離れろ」
チョロの胸からは夥しく血が流血している
ライはすぐさまクレアフィングを手に取った
「ほぅ、フラタニティスによる斬撃を受けてこれほど元気がいい奴は初めてだ」
「五月蝿い奴だな、俺はすぐには死なないんだよっ!!」
チョロはチヴァルクレセントを鞘から抜くと傷ついた体でアルジェスを払いのけた
正確にはアルジェスが後ろに飛んだだけだが
その場で膝を落とすチョロ
「チョロさんっ!」
「サラ、すぐに回復魔法を唱えるんだ、出来れば全範囲の・・・・」
「わ、分かりました やってみます」
「そろそろ諦めて逃げたらどうだ、俺はバハムートを殺せば貴様らの命なんて取る気は毛頭ないんだぜ?」
アルジェスはゆっくりとフラタニティスに付いた血を舐めた
「だが、お前がバハムートを倒せば ドラグレア大陸は・・・・」
「フッ、まぁ貴様らに生き地獄を味合わせることにはなるが それは我慢してもらおうか・・・・ん?」
その時だったアルジェスの頭上から隕石が落ちたのだ
ドォォォンッ!!!

「な、なんだ!? 一体誰が!?」
「馬鹿馬鹿しい、黒竜が何を偉そうに言ってるのよっ!」
ドラグレッサ城の入り口で1匹の竜が立っていた
その竜は、あれ・・・・・・
どこかで見たような気がするぞ!

「り、リュリカっ!?」
叫んだのはガリシィルだった
そう、そこへ駆けつけたのはガリシィルの妻 リュリカだ
彼女は聖戦竜・フレアの子孫で ファラフレイムインフェルノ の魔法を受け継ぐ者なのだ
リュリカはゆっくりとガリシィルの元に歩み寄ると怒りのオーラを出した
「アンタ馬鹿? そんな体でのうのうと歩き回って、挙句の果てには足手まといになってるじゃないっ!」
「ちょ、まっ・・・・まてっ! 話せば分かるっ!」
「五月蝿いわよ馬鹿っ!」
リュリカの回し蹴りがガリシィルを捕らえた
「がはぁっ」
ガリシィルは3メートルほど吹っ飛んで2回ほど前転した
「ったく・・・それより黒竜相手に何を手こずってるのよ」
「・・・・リュリカよく見ろ、あいつがアルジェスだ」
ガリシィルは吐血しながらゆっくりと立ち上がった
「へぇ、あいつが?」
「リュリカ、あいつはフラタニティスで魔法耐性が異常に高いんだよっ!」
「あらルイ、久しぶりねぇ、フラタニティス? 何それは?」

「いやいや、知らないのかよっ!?」
その場にいた全員がツッコんだ

「ふざけた女だ・・・・貴様も殺してほしいのか?」
そこへ隕石を食らったアルジェスが瓦礫を退けて出てきた
「リュリカ、あいつは13聖戦竜のラグナロクの子孫なのよ」
バハムートが言った
しかしリュリカは首をかしげている
「13聖戦竜?12聖戦竜の間違いではなくて?」
「・・・・・・そうか、こいつの家系では真実を語られていないんだ、俺もこの間までは知らなかったが」
「どういうことよ馬鹿、そこんところ説明しなさいよ!」
「つまりだな、あいつも聖戦竜の子孫だってことだ、あの剣は魔法耐性を上げる能力がある」
「なるほどね、とりあえずアンタは私が持ってきた薬でも飲みなさい、それで治るはずよ」
リュリカは道具袋からなにやら怪しい錠剤を取り出しガリシィルに投げつけた
「はぁ・・・・何もお前が持ってこなくても・・・・ぐはぁっ!」
「なに、そんなに私が嫌いなわけ?」
リュリカに蹴りを入れられたガリシィル
「・・・・いや別に」

『なるほどガリシィルが家出したくなるのも無理もないね・・・・』

「バハムート、そろそろ終わりにしないか? 正直言ってお前達に勝ち目はないのだから」
アルジェスはリュリカ達を無視してバハムートに剣を向けた
「・・・・断るわ」
「ふん、ならば全員死ぬがいいっ!」

暗黒の竜破斬っ!

「させるかっ!」

無効化する月(インヴァリデイトムーン)!!
アルジェスの魔法は何事も無かったように掻き消えた

「な、俺の魔法が消えた!?」
そこに現れたのは一体・・・・

続く。