りぅの風森

第87話

第87話 ~怨霊集結体・メガイウィープス~

金を手にいるために手配書に書かれた魔物を退治しに町外れに出ていたアウル
見事に目的の魔物を倒すことは出来たが、その後 強力な魔物に遭遇し
深手を負って大ピンチに・・・・、そこに助けに来たのは獣人だった
強力な魔物と対等に戦う獣人、魔物に深手を負わせたがまだ決着はついていない

そして物語はここから始まる

アウルの体力は残りわずか、すでに瀕死の状態だ
アウルの目の前では獣人が魔物に止めを刺そうとしていた

「これで終わりだぁっ!!!」

スバァァッ!っと、すでに傷を負わせてある首を爪で切り裂いた
魔物の首は宙を舞い、地面に落ちた
ドシャっ・・・
しばらく魔物はその場でピクピクと痙攣していたが やがて動かなくなってしまった。
それを見たアウルは獣人に礼をする
「あ、ありがとう、おかげで助かったよ」
「どーいたしまして、ところで人間の君が こんなところで何してたんだ?」
獣人は握手していた手を離すと腕を広げた
「実は手配書の魔物を狩って 賞金を稼ごうと思ったんだ」
アウルは町からくすねて来た手配書を獣人に見せた
「なるほどね、この手配書の奴とは違うけど、この魔物も一応手配されている、君が倒したことにするといいよ」
「ぇ、いいのか? 俺は・・・・何もしてないんだぜ?」
「別に構わないよ、僕はたまたま君が襲われているのを見て、見過ごせなかっただけだから」
「ありがとう、俺の名はアウル、あんた、なんて名前なんだ?」
「僕はミラティっていうんだ、それじゃぁ僕はそろそろ行くよ」
「あぁ、本当にありがとなミラティ」
アウルはミラティに手を振って別れを告げた
ミラティは微笑んだままその場から離れていく
「さて、この魔物・・・・いくらぐらいになるんだろうか」
アウルはミラティが倒した魔物の亡骸を背負うと町に向かった

しばらくするとアウルはアースエイザの町に戻ってきた
彼が向かう先は手配魔物の換金所だ
換金所にたどり着くや否や、扉を蹴り破る

ドォンッ!!

「な、何事じゃ!!」
換金所にいる店主のおじいさんが慌てて飛び上がった
「あははは・・・すまん、何せ両手が塞がっていたのでつい」
アウルはそういうと広い机に魔物の亡骸をドサッと置いた
すでに亡骸は暑い日差しを浴びて異臭を放っている
「馬鹿者っ! 手配してる魔物をそのまま連れこんでくる奴がいるか!、生首だけで十分な証拠になるのだぞ」
「あぁ・・・そうだったのか、わりぃわりぃ」
「にしても本当にお主が倒したのかい? この傷跡、鋭い爪の様な傷だが」
じいさんは魔物の亡骸を鑑定しながら言った
「ぇ、・・・あぁ、そうだぜ?」

『やべぇ、ばれちまったか?』

「まぁいいじゃろう、これが賞金じゃ」
そういうと換金所の店主はアウルに金袋を渡した、中にはどっさりと金貨が入っている
「おぉ、ありがとよじいさん!」
大金をもらったアウルは喜んで換金所を後にした

『これで着替えと装備が整えられるぜ~♪』

その頃、僕達は

ラジェスの巨大な魔力によって放出した
竜殺しの剣(ドラグレアバスター)に封印されていた怨霊によって、町は絶望へと追いやられていた
悪霊と化した怨霊は不思議な力を持ち、生ある者を一瞬で跡形もなく消し去るのだ
怨霊を消し去るには 浄化させるか、あるいは怨霊を魔物に転移させその魔物を倒すという方法しかない
僕達は後者の方法で消すことに決めた
媒体にする魔物は闘技場用に飼われてる魔物を使うことにしたのだが・・・・・・

「どうする、地下街に行くには市場の方まで行かなきゃならないぜ?」とチョロ
「怨霊が降下し始めてる、行くなら今しかないぞ」
空を見上げてガリシィルが言った
「分かった、僕が地下街から魔物を連れてこよう、チョロ、案内してくれ!」
「ぇ、あぁ・・・わかった」
僕はチョロを引き連れて市場の方へと向かった
「で、レスクはどうするんだ?」
ライが呟く
「確か宿屋にいると言ったな、この町に宿屋はないと門番は言っていたが・・・・」
「人間用の宿屋はあるらしい」とラジェス
「なるほどなぁ、俺が連れてきてやるぜ」
ラグゥは頭を掻いて欠伸をしながら人間の住み家が並ぶ方へと向かった
「やる気あんのか?あいつは・・・・」とラッシュ
「さぁ、どうだろう」

僕とチョロが向かった地下街は非難してきた人間や獣人で溢れていた
これじゃぁ、とてもじゃないが素早く移動出来ない
人込みを掻き分けて闘技場に向かう2匹
その途中チョロが人間に引き止められてしまった
「おぃ、まだ外では戦いが続いてるのか? お前らの仲間なんだろう?」
「チョロ!!」
「ルイ、闘技場はその先だ、俺のことはいいから行け!」
「おぃ、分かるように説明しろよ!!」
人込みに飲まれていくチョロ
その様子に構わずに僕はチョロに言われた通り闘技場を目指した

「あのぉ、すみません」
やっとのことで闘技場にたどり着いた僕は荒い呼吸しながら、闘技場の係員に話しかけた
「なんだね君は、今日の競技はもう終わったぞ」
「いや、・・・実は」

僕は一生懸命に事情を話した
約2分も掛かったがようやく 係員に事の重大さが伝わったようだ

「なるほど、それで魔物が1匹必要になったのか」
「はい、すみませんが貰ってよろしいでしょうか?」
「ただで渡すのはちょっと・・・・・、上の人に叱られてしまいます」
係員は困った様子でモジモジし始めた
「・・・・・じゃぁ、その上の人に取り次いでもらえますか?」
「あ、はい、分かりました」
すると係員はさっそうと関係者専用の通路を通ってどこかに消えてしまった
「ったく、時間がないっていうのに・・・・・」

一方レスクを呼びに宿屋に向かったラグゥはその宿屋を探していた

「確か以前に来た時はこっちら辺に宿屋があったはずなんだがなぁ、はぁ・・・・腹減った」
ラグゥの腹から虫の鳴き声が鳴り響いている
って、お前少し前になんか食い物食ってなかったか?
しばらくすると古い建物の前で足を止めた、その建物には看板があったが錆びれて何が書いてあるのか分からない
「あぁ、ここだな」
何の迷いもなく扉を開けて入るラグゥ
するとロビーの前で 腰にはバスタオルを巻いて、上半身裸のレスクが立っていた
髪が濡れているところを見るとシャワーでも浴びていたのだろうか
にしても何故そんな格好でロビーにいるんだろうか?
「・・・・やぁ、ラグゥ」
宿に入ってきたラグゥに気づいたレスクは
動じずに軽く挨拶をした
「そんな格好で何してんだ」
「あ、いや・・・・爆発音が聞こえたから出てみたら、すでに誰もいなくてな」
そう、レスクの言う通り この宿屋にいた人達は随分前に避難していたのだ
「ふむ、とにかくルイ達がお前を呼んでいた、早く着替えて来い」
「やれやれ、久々にゆっくり出来ると思ったんだがな」
レスクは小言を言いながら客部屋に戻っていった
以外にもレスクはすぐに着替えてきた
掛かった時間およそ3分だ
その速さにラグゥも少し驚いた
「は、速いな・・・・」
「まぁ、軽装だからな、急ぐんだろう? 早く案内してくれ」
「あぁ、わかった」
ラグゥは宿屋の扉を蹴り破り外に出た
レスクは動じず、何事もなかったかのように出てきた
「わざわざ蹴り破る必要あったのか?」
「なんとなくって奴だ、腹が減ったしな、とりあえずこっちだ」
「腹が減ったって 関係なくないか」
レスクは苦笑しながらラグゥの後ろをついて行いった
一方、ラジェス達は
「ヤバイ、怨霊が地面を漂い始めたぞ!!」
ラジェスがドラグレアバスターを引き抜いた
容姿はすっかり、元の黒竜に戻っている
「ったく、あいつは何をやってるんだ・・・・このままだと町が滅ぶぞ」
ガリシィルは胸を押さえながらルイとチョロが向かった方角を眺めている
するとサラが立ち上がった

「ルイさんが来るまで、1体 1体 浄化しましょう! もう手は残されていません!」

「サラ・・・そうだな、俺達に出来ることはそれしかない」
「でも浄化させるには光魔法の・・・・あれがいるぞ」
ラジェスはガリシィルに言った
「大丈夫、俺とサラが使える」
「まてガリシィル! そんな状態で魔法を使ったら、ほんとに死ぬぞ!!」
レイウェルが激しく怒鳴りつけた
するとガリシィルは首を振った
「俺は死なない・・・・行くぞサラ!!」
レイウェルの手を払いのけると怨霊が漂う中に向かう
その後にサラが続く
「大丈夫です、ガリシィルさんに異変が生じたら私が止めさせます!!」

だが、その行動はすぐに終わった

「2人とも待って!! 媒体用の魔物は連れてきたよっ!」

僕とチョロが闘技場から魔物をどうにかして連れてきたのだ。チョロが魔物を背負っていた
魔物はルイの魔法で気絶していて、ぴくりとも動く気配はない
それを見たラジェスは指示を出す
「ルイ、すぐに作業に取り掛かるからその魔物を怨霊が漂う場所に投げてくれ」
「ぇ?投げる?そんな力、僕にはないよ・・・・。」
「ルイ、ここは俺に任せろ」
魔物を背負っているチョロがそういうと
魔物を片手で高々と持ち上げて、ボールを投げるかのように放り投げた
「とどけぇぇぇぇっ!」
投げ飛ばされた魔物は怨霊が漂い始めてる場所に落ちた
その瞬間に僕の魔法が切れて魔物は目を覚ます

グルルルルッッ

すると怨霊達は投げ込まれた魔物に集まり始めた
「よし、あの魔物が消滅する前に怨霊達を憑依させるぞ!!」
ラジェスは地面に突き刺していたドラグレアバスターを再び手に取って詠唱する
魔力が霧状に具現化し、ラジェスの持つ大剣を中心に取り巻き始めた

『闇に潜めし竜、冥界の源、天界の光、魔界の源、地上の光・・・・・』

ラジェスが詠唱している間にも魔物は怨霊の力によって徐々に消化されていく
「まだかラジェス!」
ガリシィルの問いに答えるかのように詠唱の速度を早めたラジェス

『さ迷える悪霊達よ、今一度一つとなってこの世に姿を現せっ!!!』
怨霊結合(ゴーストユニオン)!!

ドラグレアバスターから赤い光が放たれ
消えかかっていた魔物が黒い球体になると、怨霊達を次々と飲み込んだ
その場にいた怨霊だけでなく、上空にも漂っていたすべての怨霊を取り込み、黒い球体は徐々に巨大化し始めた
ルイ達は一旦その場から離れて徐々に大きくなっていく球体の様子を見ることにした
「なんやあれ、大きくなりすぎやろ?」とラッシュ
「怨霊が千匹分あるのだから仕方ない・・・・」
やがて大きさが直径15mに達すると、その球体は徐々に姿を変えて竜の形へと変えていく
黒い鱗で覆われて、およそ2mもある角を3本頭部に持ち、巨大な蝙蝠羽が4対、尾先には狐火のような青い炎が取り巻いている
「な、なんだあれは!?」
「竜達の怨霊が集まって出来た、怨霊集結体・メガイウィープスだ。別名はゴーストドラゴン」
するとそこにレスクとラグゥが駆けつけた

「またごっついのが出てきてるな、あれは倒しがいがあるぜ」
レスクはゴーストドラゴンの大きさを見て、テンションが上がり気味だ
「おぃ、なんだあれは?」
「怨霊を魔物に転移させたらあれになったんだよ。ラグゥ」
僕が説明した

ゴーストドラゴンはしばらくその場から動かずにいたが、僕達を見ると迷いもなく襲い掛かってきた
口から巨大な蒼い炎を吐き出したのだ
ゴォォォォァッ!!と音を立てて 建物ごと僕達を焼き尽くす
サラとレイウェルが魔法障壁を作り出してそれらを防いだ
「ありがとうサラ、レイウェル」
「あぁ、だがそうは長くもたないぞ」
「レイウェルさんの言うとおりです、せいぜい後2分しか防げません!」
魔法障壁はバリバリと音を立てて徐々に崩されてきている
「なんてブレス攻撃だ、まとも食らったら灰になるな」
「暢気なこと言ってる場合かよっ!!!」
「皆、行くぞっ!」
僕の掛け声と共に全員が戦闘に参加した
先頭を行くのはライだ、クレアフィングを片手に空を羽ばたく
チョロが次に続いて地面を駆け抜ける、同じくラクがチョロの横に並んで走っている
その後にラジェスとラッシュが上空を飛んだ
ラグゥが遅れてその後ろを地上から追いかける
僕とガリシィルが高い建物の上に行くと攻撃魔法の詠唱に入り
地上の方でサラが防御力を上げる

『プロテクション』

レイウェルが耐性を上げる

『レジスタン』

ヒョウが移動速度を上げる

『ウインドシルフ』を唱え

レスクはそれらに遅れて召還魔法を唱え始めた
するとゴーストドラゴンは地上を走って向かってくるチョロとラク向けて 再びあの蒼い炎を吐いてきた
チョロとラクはそれを華麗に回避すると攻撃を仕掛けた
「当たってたまるかってのー、頼むぜラク!」
「任せろチョロっ!」
チョロはラクの持つ槍の上に飛び乗り、ラクは渾身の力を出してチョロを吹き飛ばすように槍を振るった
勢いよくゴーストドラゴンに向かって吹っ飛ぶチョロ
その状態から、チヴァルクレセントを鞘から抜いて 高速で前転した

旋空裂斬!

空中で前転しながらゴーストドラゴンの胸元を切りつけそのまま上空へ舞い上がるチョロ
その直後にラクが放った『投竜爆砕弾』がゴーストドラゴンを襲った
闘気が龍の頭部に似た形を取りチョロの攻撃した箇所に勢いよく直撃した

ドドォーーーーンッ! ドォーンッ! ドォーンッ!

闘気は爆撃音を鳴らしてゴーストドラゴンを貫通したかのように突き抜けていった
グルルルッ グォォォォッ
叫びをあげるゴーストドラゴン、しかしあまりダメージを受けていないようだ
すぐさま反撃をしかけてきたのだ
15mもの巨体から繰り出される物理攻撃、ただの尻尾ビンタだ
速度はなく、簡単に回避することが出来たチョロとラク
だが巨大な尻尾は建物を破壊し、その破片がチョロ達を襲った

「うわぁっ!?」

防御に入るチョロとラク
そこへライが上空から魔法を放った

雷雨(サンダーレイン)っ!

無数の雷が降り注ぎ、破片をすべて木っ端微塵にした
「死にたいのか、あまり無茶はするなっ!」
「わりぃ、助かった」
チョロが礼を言っているとゴーストドラゴンはライ向かって蒼い炎を吐いた
ゴォォォォッ!
「ちっ、この程度の炎・・・・」
ライは雷撃を身にまといダメージを軽減させる
雷撃の身体(スパークボディ)だ。
すると後からきていたラジェスが攻撃を仕掛けた

霊衝破っ!

ドラグレアバスターから放たれる霊気の衝撃破だ
それはゴーストドラゴンの頭に直撃し、ライへのブレス攻撃を中断させた
「大丈夫か?」
「あぁ、なんとかな」

ソニックテイルっ!

ゴーストドラゴンが怯んでる隙にラッシュが追撃をしかけた
空中で身体をひねって尻尾から衝撃破を繰り出す

ドォッ・・・・

しかし、その攻撃は掠り傷をつけることしか出来なかった
「ちっ、なんて硬い奴や」

その間に後方で魔法の詠唱をしていたルイとガリシィルが同時に詠唱を終えた
「珍しいね、君が詠唱するなんて」
「ふんっ、まだ痛みが引いてねぇんだから仕方ないだろう」
「・・・・休んでればいいのに」
「なんか言ったか?」
「いや、なんでもないよ、行くよガリシィルっ!」
「ふんっ、まぁいい」

疾風の鎌鼬っ!!  氷雪の砂嵐っ!!

僕の放った風の魔法とガリシィルの放った氷の魔法は互いに混ざり合い
ゴーストドラゴンを捕らえてその身体をズタズタに引き裂くと傷口から氷柱が飛び出した
そこへラグゥが追撃を加える

獅子の爪跡っ!

下腹部から切りつけると上に飛び跳ね抉る様に掻っ捌いた
その瞬間に15mもの巨体が宙へ少しだけ浮いた
すばやく地面に着地するとラグゥは、バックステップでゴーストドラゴンとの距離をとった
「あの巨体を少しでも宙に浮かせるなんてやるなぁ、ラグゥ」
「いやルイの魔法が下から吹き上げていたから、丁度ああなっただけだ」
ラグゥはそういって身構えた
ゴーストドラゴンはギロリと視線をラグゥに向けて反撃してきた
ラグゥの足元から魔方陣が浮き出る
「なにっ、魔法も使いやがるのかっ!?」
ラグゥは咄嗟に横へ飛ぶが、魔法陣から火柱が吹き上がった

グルルルルッ グォゥッ!

ゴーストドラゴンの唸りと共に地面から炎が吹き上がる
ボッ、ゴォォォォォッ
「ぐぉっ・・・・貴様っ!!」
ラグゥは火達磨になり地面を転がったが、すぐに起き上がり気合で炎をかき消した
なんて奴だ、普通、気合で炎なんて消せないだろ・・・・・。
その間に後ろの方にいたルイとガリシィルがゴーストドラゴンの目の前に立っていた
それに気づいたチョロが声を上げる
「何をする気だあいつら!?」

『出でよ、冥界の覇王・バルガイオン!!!』

するとレスクが冥界の魔物を召還した
その魔物はゴーストドラゴンに向かって、黒い火炎玉を無数に降らせた
ドドドドドッドォォォォンッ!!!
それと同時にルイが走り出した
「くらぇっ!」
スカイファルコンでゴーストドラゴンの身体を3回ほど斬りつけると風が吹き荒れる

ウインドスライスっ!!

ヒュゴォォォォッ ズバババッ
風がゴーストドラゴンの身体を引き裂き、天へと上っていった
その後、ガリシィルがゴーストドラゴンの頭の上に飛び乗ると鋭い爪で攻撃を仕掛けた

崩魔斬裂光!!

頭部からジグザグに斬りながら地面へ降り、最後に腹部に向かって突きを入れた
その瞬間に傷口から光の粒がいくつも発し、それらはゴーストドラゴンに襲い掛かった

キィィィィ ドドドドドッッッッッ

その間にラグゥが魔法の詠唱をしていた

『黄泉よりも暗黒の者、血に飢えし獣、時の流れに埋もれし偉大なる汝の名において、我ここに誓わん
我等の前に立ち塞がりし全ての邪魔者に・・・・・』

「ラグゥの奴、ルイ達を巻き込む気か!!!」
気づいたレイウェルが素早く詠唱する

レスキュート!!!

ゴーストドラゴンの近くにいたルイとガリシィルを強制的に自分の横にワープさせるレイウェル

「チョロ!ラク!お前達も速く逃げるんだー!!!」
「ぇ?なんだって?」
遠くてレイウェルの声が聞こえていないチョロとラク
するとライが2匹を引っ張った
「馬鹿、ラグゥの魔法に巻き込まれたいのか?」
「あぁ、そういうことか」

「なんや、わしらも逃げた方がええんかな?」
「ラッシュ、お前は逃げた方がいいが、俺はあいつの止めを刺す必要がある」
そういってラジェスはドラグレアバスターを両手で握ると魔力を開放をする
再び本当の姿に変えたラジェス、今回は流石にドラグレアバスターから怨霊が漏れることはなかったが
大剣から怨霊の叫びが聞こえてきた

ヒョォォォォ

そして、レイウェルに無理やりワープさせられたルイとガリシィルは
いきなりのことで頭から落ちた
僕が先に落ち、ガリシィルの下敷きとなる
「うぎゃぁっ!」
「あ、わりぃ・・・・」
背中の上に落ちたガリシィルは頭を掻きながらゆっくりと降りた
「ルイさん、大丈夫ですぅ?」
レイウェルの傍にいたサラがすぐに僕の様態を見にやってきた
僕は気絶していてぐったりしている
その様子を見てガリシィルは
「ま、俺の体重は軽いから大丈夫だろう」
「えぇ、そういう問題なのっ!?」
ヒョウは目を丸くして言った

『・・・・破壊と絶望を与えよっ』

そして、ここでラグゥが詠唱を終えた

「燃え滓になってしまえぇぇぇぇぇぇぇっ!! ド・ラグ・レア・スレェェェェェェェェェェェイブっっっ!!」

キュィィィンンッ!

ラグゥが放った魔法はゴーストドラゴンを捕らえると、円を描いて大爆発した

ゴゴゴゴゴ・・・・・ドゴォガァァァァァンッッッ! ドガガガガガっっっっ

もはやラグゥは町のことなんか考えていなかった
町の約半分は一瞬で塵と化し、辛うじて市場の方だけが無傷で残っていた
だが、そんなラグゥの魔法にも耐えて、ゴーストドラゴンは生きていた

グルル・・・ルル・・ルルルル・・・

「はぁ・・・・はぁ・・・・、今ので俺のマナは尽きた、後は頼んだぞ・・・・がはっ」

ラグゥは大の字になって 仰向けにぶっ倒れた
それと同時に獣人の姿がケモ竜に戻ってしまう
「ラグゥっ! 今すぐに俺のマナを分け与えてやる!」
すぐさま駆けつけたレスクはラグゥの手を握って、マナを分け与える
「万策尽きたか!?」
一方で距離を取っているレイウェル達
するとガリシィルがラジェスの姿を見て腰を下ろした
「お、おいシェル!」
「大丈夫だ、疲れただけだ・・・それにラジェスが止めを刺すだろう」

当のラジェスはゴーストドラゴンの目の前で巨大な翼を広げて羽ばたいていた
「もう十分暴れただろう、そろそろ天国へ行ってもらうぞっ!」
グルルルル
ゴーストドラゴンは唸り声を上げて、傷だらけの身体でラジェスに向かって突進した
しかし、あまり巨体だ、速いわけではない、ラジェスはすぐにそれを回避した
「まぁ、今の俺に物理攻撃は全く効かないが・・・・・遊びは終わりだ」
するとラジェスは自らゴーストドラゴンに突撃した
その瞬間にドラグレアバスターが 青白く輝く

ヒョオォォォォ ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛っ

ドラグレアバスターからは今も尚封印されている竜達の怨霊の泣き声が漏れ出す
ラジェスは渾身の力を振り絞り、一瞬でゴーストドラコンを切り刻んだ
ラジェスによって切り刻まれた身体から黒い粒子が現れる
「漆黒に漂う竜達の霊魂よっ、われらに抗う者を永遠の闇に封じ込めよ・・・・・」

冥王・竜縛殺っ!!!

ゴーストドラゴンの周りに漂っていた黒い粒子が体内へと入り込みその巨大な図体を縮小していく
やがてはゴーストドラゴンはビー玉のような大きさになり、砕け散った
その直後に黒く光る物体が現れ、ラジェスの持つドラグレアバスターの中へと吸い込まれていった
「・・・・これでは また大量放出しかねない、幾分か消費させるか」
ドラグレアバスターの呪いを和らげるために装備していた『ドラゴニックスグローブ』を外して
素手でドラグレアバスターを握り締めた
その瞬間にドラグレアバスターはラジェスのマナを大量に吸収し始める
「ぐっ、俺のマナを生贄に封印された怨霊を浄化せよっ!!」

竜念・浄滅衝!!!

ラジェスは青空向かって攻撃した
もちろん標的の無い攻撃は虚しく終わるが、上空に向かって凄まじい衝撃破が放たれた
それは大量のマナを帯びた竜達の怨霊の塊で、もし標的がいて直撃さえすれば跡形もなく消し去るほどの威力を持つ
技を放ったラジェスは地面に膝を突いた、今の攻撃で自分のマナを大半使ったのだ
ドラゴニックスグローブを装備せずにドラグレアバスターを使うと通常の10倍はマナを消費するのである
ラジェスはドラグレアバスターを手放すと急いでドラゴニックスグローブを装備した
そして再びドラグレアバスターを手に取ると鞘に収めて、ホッと一息を着いた
「大丈夫かラジェス!!」
少し離れたところでレイウェル達が声を掛ける
ラジェスは本当の姿から再び黒竜に戻ると、大きく手を振った
「あぁ、大丈夫だぞ」

そうして僕達は見事、ドラグレアバスターから溢れ出た怨霊達を倒すことが出来たのであった
これで一安心かと思った矢先、ライがとっても重大なことに気がつく
「・・・・町が滅茶苦茶だが、町は大丈夫なのか?」
「それにルイさんも気絶したままですよぅ」
「ルイはともかく、町の方が・・・・」

すると大の字で倒れていたラグゥが呟いた

「ぁ、そういえば町のこと考えてなかったわ」
「・・・・・おいっ」

続く