りぅの風森

第13話

完全版 DragonStory

第13話 -氷の精霊-
ガリシィル達の仲間にリュリカが加わり
彼らは竜族の住む山脈、ドラゴンズスピークを目指して旅を続けていた
ドラゴンズスピーク、周りは三日月型の大きな湖に囲まれており
山脈へ行くには飛んで行くか、湖のない場所から出向くしかない
彼らが今歩いてる場所はウェザータウンを北に行き、雷神の塔を通り過ぎた辺りだ
「ドラゴンズスピークはどのへんにあるんだい?」とカイ
「丁度ここから南に見えるあの辺の山脈だな」
ガリシィルは指をさした、人間の目でも見える距離だ
「じゃあ南に向かったほうがいいんじゃないか?」
「ハボナの言うとおりだぜ、さっきから西に進んでるみたいだがなにか理由があるのかよ」
ジェイドは歩き疲れた様子だ
「本来ならそうしてる、だがなドラゴンズスピークは三日月型の湖に囲まれているんだ」
「そうよ、だからこのまま南に行っても山脈にはたどり着けないわ、私達を除いてね」
リュリカはガリシィルと自分に指差して翼を広げた
「つまり、人間がそこに行くには湖の外周を回らなければならないということですか」
「ま、そんなところよ」
「まじかよ、目的地は目の前だっていうのに」
「イチピモ様、仕方ありません、私達は空をとぶことが出来ません」
「そりゃあ、そうだけどよ・・・・」
「それより皆さん休憩しませんか、港町からずっと歩いてますし」
マリーは皆の疲れを察して休憩することを提案する
するとガリシィルは首を横に振るった
「冗談じゃない、目的地に着くまでは休憩はなしだ」
「そんなこというなよシィル、皆疲れてるし少しぐらいいいだろう」
「わかっているさ、だがカイ、こんな場所で休憩なんて出来るか、この辺は魔物もいるんだぞ」
ガリシィルの言うとおりだった
北の大陸は過去に魔王が降臨していた影響で魔物の数が圧倒的に多った
魔王はすでに何者かによって倒されているが、今もなお魔物達は現存しており町の外は危険なのだ
とはいえ町にいても安全とは言い切れない、少し前に通りかかったウェザータウンは
魔物たちの襲撃にあいかなりの被害を出したという、今では結界として聖なる雨が年中振り続けているそうだ。
個人的に立ち寄ってみたかったが、雨が止むことのない町に行っても気分は晴れないし彼らはスルーしてきたところだ。
「でもガリシィル、カイの言うとおり俺達はかなり疲れているぜ、休息は取るべきだ」
「・・・・・チッ」
「もう少ししたら町があるわ、そこで休憩にしましょう」
リュリカは町で休息を取ることを提案した
「リュリカもう少しってどれくらいだ? 近いのか?」
ガリシィルは聞いた、ガリシィルはこの大陸のことを詳しくは知らない
「まぁ、あと30分ぐらいかかるかしら?」
「3、30分もかかるのかよっ!?」
「イチピモ様、我慢しましょう、外で休憩するよりは町中の方が良いでしょう」
「そうだな、皆、もう少し頑張ってくれ」
「うぅ、まだ歩くのかよ・・・」
「しっかりしなジェイド、女の私ですら我慢してるんだからね」
「あぁハボナはいいよな、俺より体力があって」
「お前が貧弱すぎるんだよ、いいから歩きな」
「ひぃ」
「ちなみにリュリカ、その町はなんて名だ?」
「ハユスサ、獣人の町よ」
それを聞いたカイは驚いた
「じゅ、獣人の町だって!? 僕達人間だけど入れるのか!?」
「確か入れたはずよ、もともと人の町だしね」
「どういうことだリュリカ?」
「さぁ、詳しくは知らないわよ、私あの町の人じゃないもの」
「それもそうか」
「それよりちょっと来てくれる?」
リュリカはガリシィルだけを誘うと二人だけになった
「どうしたリュリカ、俺だけに話でもあるのか?」
「あなた無理してない?」
「何を突然・・・・」
「あなたさっきから苦しそうな顔してるわよ、一番休憩したいんじゃないの?」
「うるせー、俺は平気だ」
「ま、ドラゴンズスピークに着いたら痛み止めがある薬屋を紹介するわ」
「・・・・・」
リュリカはガリシィルの様態を察していた
平然を装っているがガリシィルは実は結構やばい状態なのだ
それはこの旅を始める前から分かっていた
ラジェスに旅を止められた時から知っていた
「リュリカ、俺はこんなところで死ぬつもりはない安心しろ」
「でも・・・」
「お前との約束はドラゴンズスピークに着いたら果たすつもりだ」
「!?」
「・・・・ダメか?」
「それは旅が終わってからにしましょう、バハムートを倒すのが先よ」
「厳しいな」小声でつぶやくガリシィル
「あなたらしくないじゃない、それともここでリタイアするのかしら?」
「はっ、馬鹿なことを、さっきのは冗談だ忘れろ、人間達(カイ達)には俺のことは何も言うな分かったな!」
「・・・・そうね、あなたの深刻さは人間には分からないわ」

「どうかしたのか?」とカイ
「なんでもない、後30分頑張って行くぞ」
ガリシィル達はハユスサの町を目指した
ドラゴンズスピークのまでの道のりは近いようで遠い

一方、レスクはイフリートと無事に契約を終えて
サンポスの町へとやってきた
「火山を降りて町にやってきてもこの暑さか、砂漠地方は気が滅入るな」
「でもレスクはアルカティスの人なんでしょ? この暑さは慣れっこなんじゃ」
「リル、俺は確かにアルカティス育ちだが、アルカティスはオアシスに恵まれた土地だ、こことは気温も全然違う」
「そうなの? アルカティスも砂漠地方には変わりないと思うんだけどなぁ」
「そんなことより、武器屋に行くぞ」
「あれ、酒場じゃないの?」
「スノーキャッスルの情報は聞く必要はないからな、あそこは前々から精霊がいることは知ってる」
「どうして?」
「あそこは俺の親が貴族だった頃の屋敷だからな」
「えぇっ!?」
「とはいえ俺が生まれる前の話だ、この目で見たことはない。が・・・・じいさんが教えてくれた」
「レスクそれじゃあ、そこにいる精霊は君の」
「あぁ、かつて俺の親が契約していた精霊セルシウスがいる、今は契約が切れて野放しにされてるらしいがな」
「契約が切れてって・・・・」
「親が死んだことにより契約が切れたのか、親が契約を破棄したのか どっちかだ」
レスクはそういうと武器屋に入った
武器屋で仕入れるのはもちろんフレイル系の武器だ
とはいえイフリート戦のこともあってか、持ち手も金属である物は選ぶつもりはない
「おっさん、熱伝導の低い素材を使ったフレイルって置いてないか 例えばチタンフレイルとか」
「この辺じゃ鉄のフレイルか、良くてシルバーフレイルぐらいしかないよ、後は木製かでもよく壊れるからおすすめはしないよ」
「そうか、やはり砂漠地方の武器屋じゃいいものは買えそうにないな」
「まぁまつよ、チタンフレイルはないがうちには一級品の品がひとつあるんだよ」
「買うかどうかは物によるぞおっさん」
「ふふ、みたまえ、これがうちの最高品『スコルピオンテール』だよ」
フレイルに変わりはないが、サソリの尾をイメージして作られており
先端の刺には毒が仕込まれてる、その毒はグリズリーを一発で仕留めるほどの威力を持つ
「毒付きのフレイルか、悪くはないな」
「そうだろうそうだろう? 値段は5200Gだ どうだよ? 買わないかよ」
「いやいい、精霊相手に毒が通じるとは思えん」
「精霊ってあんた、精霊と戦うつもりかよ? 無理無理、精霊は人前に出やしない戦うことは愚か出会うことすらないよ」
「あぁ、人間には無縁な存在だったな、とにかくそれは買わないぞ」
「どうしてだ高いからか? なら3200Gにまけるよ」
「そういうわけじゃない、毒はどれくらいもつんだ?」
「そうだね、先端部分の球体にしか毒は入れれないよ、1発で出る量が3mlぐらいだとすると100回ぐらいは保つよ」
「切れたらどうすればいい」
「毒を取り扱う店に持っていけば補充してくれるよ、もちろんタダではやってくれんがよ」
「そうか、ならシルバーフレイルでいい」
「ほんとにシルバーでいいのかい、スコルピオンテール超おすすめだよ」
「値下げしてもらってありがたいが、あいにく3200Gも金はないんだ、1200Gのシルバーフレイルでいい」
「わかったよ、じゃあ2000Gでスコルピオンテール売るよ」
「シルバーフレイルでいいと言っているだろう、いいかげんにしろ」
「お客さん、そこをなんとか頼むよ」
「1200Gのシルバーフレイルだ」
「わかったよ1200Gでスコルピオンテール売るよ」
「買った、1200Gでスコルピオンテールを買おう」
「ありがとね、お客さんきっとこの武器は役に立つよ うちの最強武器あるよ」
「だといいがな」
レスクはそう言って 武器屋でスコルピオンテールを購入した
しかしこのスコルピオンテール、元の値段は5200G、それが1200Gで購入できたのはでかい
レスクは武器屋を後にした
「少し財布に余裕が出来たな、これなら道中の敵から手にれれる金を合わせればすぐに次の武器が買えるぜ」
「でもレスク100回分だよ!?、一回の戦闘でだいたい5回は殴ってるから20回も敵と出会うと毒がなくなっちゃうよ」
「20回も敵と遭遇するわけないだろ、それに毒が切れてもいい、精霊にはどうせ通用しない」
「それはそうだけど、あの武器屋の店主ちょっとうさんくさったよ、その武器ほんとに使えるの?」
「毒の効き目は期待しない方がいいな、でも材質は確かだ、このへんの武器屋じゃてにはいりそうにないぞ」
「それならいいけど」
「さて、そろそろ行くか、目指すはスノーキャッスルだ」
「ここから北東にある山脈にあるお屋敷だね、今ではあのへんは雪が振り続けてるらしいよ」
「砂漠地方にありながら雪場か、モロに精霊の影響が出てるな」
「そんな格好で大丈夫?」
「平気だ、この神子装束は暑さも寒さもある程度は防げるようになっている」
「へぇ」
「流石に暑すぎると死ぬし寒すぎると死ぬがな」
「だめじゃんっ!!」
「まぁ、火の精霊と契約したんだ 寒すぎればイフリートの力を借りよう」
「だから先に火の精霊と契約したのかい」
「ちなみに水の精霊を先に選んだのは回復魔法が使えないからだ、ついでにイフリートの対策も兼ねてた」
「でも結局ウンディーネの力を借りたのはイフリートと契約を終えてからだったね」
「まぁな、それと位置関係もある、たまたまアルカティスから近い順に来たらそうなった」
「よく出来てるなぁ・・・・」
「その辺は置いておこう、スノーキャッスルはこれから1時間ほど歩いた場所にある急ぐぞ」
レスクとリルはサンポスの町を後にした
その背後から誰かが後をつける
「やっと見つけたぞ神子族のレスク」
「しかし、良いのですかレディアル様、本部からはリルは放っておけとの指令でしたが」
レスクの後を追うのは
ハンター組織『リジェル』の幹部の一人レディアルだ、仲間の手下を2人連れている
「精霊と契約したあいつを我々に協力させれば何も心配はいらないはずだ、バハムート軍も恐れることはない」
「しかし、我々だけで本当にやるのですか? もう少し増援を待ったほうが」
「相手はまだ餓鬼だ、それにこちらには奥の手もある、奥の手は精霊の力なんて関係ない」
「それでは仲間に引きこむどころか殺してしまうのでは?」
「その時はその時だ、契約が切れた精霊を奥手に使う」
「まさか・・・・精霊までも取り込めるのですか!?」
「なんのために今まで実験を繰り返してきた、人工精霊を作ってまで・・・結果は得ている」
「し、しかし・・・・」
「本部はリルの事は放っておけと言ってるだけで、頂点に立つクリス様はリジェルの存在を知る者を消せと言った」
「レスクは俺達『リジェル』の存在を知っている、この意味が分かるか?」
「ではやはり・・・」
「そうさ、後々厄介になる前に消す・・・・リルもついでに処分だ」
「レディアル様、どうやらレスクは武器屋でスコルピオンテールを購入したもようです」
もう一人の手下が武器屋から出てきた
それを聞くとレディアルは頭を悩ませた
「スコルピオンテールだと・・・・毒を持った武器を手にしたのか、奥の手には効果はないが俺達には危険な代物だな」
「どうしますか?、予定通り仕掛けるのですか?」
「やつらはどこに向かっている」
「スノーキャッスルのようです」
「・・・・あそこは今や魔物の巣窟、そしてセルシウスの館と呼ばれているな」
「はい、どうやら彼はセルシウスと契約するつもりのようです」
「ならばそれまで待とうじゃないか、セルシウスと契約し終えたあと、我々が襲う」
「ですが、それではレスクは精霊の力をますます強めることになりますよ?」
「奥の手を使うのだ、精霊と契約したその瞬間に解き放つ」
「分かりました、その手はずで行きましょう」
レディアル達はレスクを追った

一方でハユスサに到着したガリシィル達は休息をとっていた
獣人の町というのもあって宿屋はないが、休息する場所は十分にあった
彼らが今いるのは食事処、休憩がてら腹ごしらえをすることにしたのだ
とはいえ、そんな豪華な食事は出てこない
「あーあ、もっとこう幸のある食い物が食いたいなぁ、金はあるんだろ?」とジェイド
「文句を言うなよジェイド、この店じゃこれが限界だよ」
「兄さんはいいよな、食には困らないもんな、はぁ・・・これならスルリクで海鮮系の物を食って来ればよかったぜ」
「ところでガリシィルはどうしたんだ?」とイチピモ
「彼は食欲が湧かないそうですイチピモ様、今は店の外をうろついてるかと」
「まぁ、俺達と一緒に飯食う柄じゃないですしねー」とマリー
「だけどよ、俺が思うに痩せすぎだと思うな、竜族のくせにガリガリやすぎねーか ほんとに飯くってんのか?」
「わかりません、私達と一緒に行動をするのは移動する時と戦闘の時ぐらいですから」とシャルル
「確かに僕達と旅をしていた時も一度も一緒に食事したことないなぁ」
「でもカイさん、一度私見ましたよ、ガリシィルさんが食事してるの」
「本当かい?」
「えぇ、確かあれはケンタロスの群れに襲われた後でしたね」
「まさかケンタロスの肉を食ってたのか?」とイチピモ
「・・・・どうでしょうか、ガリシィルさんは私達人間と一緒ではないですからね」
「リュリカはどう思う?」
「私だって人間と一緒の物食べてるじゃない」
「ということはケンタロスの肉は食べない?」
「あー・・・・言われてみればそのへんの肉も食べれなくはないわね、焼けばたいてい美味しい物よ、ケンタロスは馬肉と対して変わらないわ」
「ってことは魔物の肉も食うのかよ、すごいな竜族は」
「物によるわよ、さすがにアンデット系はそうそう食べないわ、焼いても不味いというか大体腐ってるしね」
「ってことは食ったことあるんかい」
「それが原因で腹痛になったことは今でも忘れないわ」
「・・・・・お、おぉぅ」
そんな会話をしている間ガリシィルは外にいた
腹は減ってないというか食欲が無い
最後に食事したのはいつだろうか、船旅の最中に魚をつついたのを最後か
そんなことはどうでもいい、早くアカルディアの洞窟を目指さなければ
だが、俺の体はもつのか・・・・
船旅を終えてから最近体調が良い日は少ない、オルフランデの一件以降魔力が上がったせいか体に負担がかかっている気がする
リュリカには気づかれたが、他の奴らに気づかれるわけにはいかない
特に今日は発作が強い、今にも倒れそうだ・・・・・。
「くそ、バハムートの傷が痛む」
胸をおさえるガリシィル、口からは少量だが血を吐いた
そこへ食事を終えた皆がやってくる
「おーいガリシィル」最初に寄ってきたのはイチピモだ
「・・・・チッ」
地面に吐いた血をごまかすためにささっと土を掘りおこすと同時に鉱石を見つけてその場を凌ぐ
「そんなとこで何してんだ?」
「地面に鉱石が埋まってやがった、こいつを売ればさらに資金得られると思ってな」
「まじか、でも俺達資金には困ってないだろ?」
「もしかして竜は宝石が好きっていう噂は本当だったんですか?」とシヴァ
「・・・・あ、あぁ、そんなことより休憩を終えたみたいだな 早くドラゴンズスピークへ向うぞ」
「ガリシィルはせっかちだな、そう慌てなくたって食事ぐらい取ったらどうだ?」とイチピモ
「俺は腹が減ってないし十分だ、ドラゴンズスピークで間に合わせる、それに向こうのほうが美味いもん食えるぞ」
「な、なんだってー」
「まぁ、確かにこんなところよりは美味しいかしら」
リュリカは味を思い出しながら比べて言った
「もしかして、俺達食事をとって損しちまったのか」とジェイド
「また食えばいい、それにドラゴンズスピークに着くには夜になってるぞ」
「さ、山脈は見えてるのに夜に着くのですか」とマリー
「その予定だ、ドラゴンズスピークは山脈の中間地点にある、少しは登らないといけない」
「思っていた通りですね、だいたいそんな気はしていました」
「シャルル、分かっていたのか」
「これだけ西に進んだのに湖が見えない位置に来ていないのですから、もう少し進むとは思っていました」
「なぁに、西に進むのはあとすこしだ、1時間もすれば山脈の麓付近にはたどり着いてるだろう」
「それだといいんだが」
ガリシィル達はハユスサの町を後にした

その頃、ドラグーン王国にバハムートが帰国していた。
西大陸へ自ら出向き、人間達の国をいくつも滅ぼし、そして征服したのだ
多くの兵が不死の女王を出迎える。
「バハムート様、西大陸の侵略お疲れ様でした」
「ふん、私の手にかかれば容易いものよ」
「それでも随分と時間がかかりましたね」
「人間にしては随分抵抗が激しかったからねぇ、でもこれで世界征服計画は間もなく最終段階にはいる」
「これで残るは北の大陸と例の4国を残すのみですか・・・・」
「そうだ、すでにいくつかの部隊を北へ向かわせてあるこれ以上私が出向く必要はない。ところで・・・」
「なんでしょうか」
「息子はまだ始末できていないようだが?」
「は、はい、オルフレン王国を制圧しその後はデナピンから北大陸へと向かったということです」
「北大陸か・・・やはり人間では役不足だったか」
「随分と強い息子さんですね、どうしますか?」
「北の大陸にはラディオンやガルバード達を向かわせている、放っておいても構わないが・・・・念のためだ」
「ではやはり何か手を打つのですね?」
「北の大陸にはすでに私の支配下となった国がある、ガレスティアスに伝えろ、ガリシィルを見つけ次第殺せと」
「ガレスティオスというとレライド王国の王ですね、分かりました早急に伝えます」
「頼んだわ、私はこれより大竜王神殿へ向う、十六夜、これからの指揮は貴方が取りなさい」
バハムートが指揮を譲ったのはなんと イチピモの同期である十六夜だった
十六夜はあれ(第2話)からバハムートの味方になるため、あの手この手を使い そしてバハムートの下僕となったのだ。
今では唯一バハムート軍の中にいる人間では 最高幹部に匹敵する実力を持つ
というのもバハムートの魔法によって莫大な力を得たのだとか・・・・・。
「本当によろしいのですか?私は新参者・・・・指揮を譲るのであれば他をあたったほうが良いのでは?」
「ガリシィルと共に行動している人間にお前の知り合いがいると聞く、万が一合間見ることがあればお前も楽しみであろう?」
「イチピモ達のことか、今ではどうでもいい存在だ。それに俺と合間見ることはないだろう」
「そうかしら、まぁいいわ、ルイリヒト、城のことは貴方にも任せるわ」
「バハムートよ城のことは分かったが、大竜王神殿に何しに行くのじゃ」
「神の力を開放させる、それで世界は私の思うがままになる」
「では例の4国はどうするのじゃ?」
「放っておいても問題ないわ、その他小国も私が力を開放すれば全てが終わる」
「・・・そうか。十六夜よレライド王国に伝令を頼む。わしがこの城に残ろう、お前はラディオン達と合流するのだ」
「最前線で指揮をとれと?」
「バハムートの頼みじゃ 断れまい」
「・・・・・それもそうだな、では失礼する」
十六夜は一足先にその場を後にした、彼はレライド王国へ急いで向う
バハムートもまもなくしてドラグーン王国を出て行く
彼女が向かった場所は大竜王神殿
この場所で彼女は神の力を開放しようとする
そう、この場所で・・・・ガリシィル達の最後の戦いが繰り広げられるのだ。
だがその話は まだ先である。
そしてレスクはスノーキャッスルにたどり着いていた
アルカティス地方の北東にある山奥に巨大なお屋敷がそびえ立つ
そこがスノーキャッスル、麓の町ではセルシウスの館などと呼ばれている。
その名称に合うように大雪に埋もれ壁や床はかなり凍りついている。
このお屋敷はもともとレスクの親が所有していたものだった
「これが親の遺産か・・・・人が暮らせるような環境じゃないな」
レスクはそのお屋敷を外から眺めて言った
それもそのはず、常に雪がふってるだけでなく凍りついた屋敷だ
「これがセルシウスの仕業なの?」とリル
「だろうな、なんでこんなことをしたのかだいたい検討はつく、とりあえず中に入ろう」
レスクはそういうと屋敷の外門をくぐり雪のつもる中庭を歩んでお屋敷の扉を開けた
扉を開けると凍りついた床が見える
「部屋の中も凍ってやがる、リル、気をつけろ滑るぞ」
「それより部屋の明かりはどうするの?」
屋敷の中は真っ暗だった、電気が通っている様子はない
するとレスクはイフリートを呼び出した
レスクの前にイフリートが姿を現す
「イフリート、お前の力で明かりを灯してくれ」
「我に電気を付ける能力はないぞレスク」
「違うそうじゃない、火の玉を呼び出してくれ、ランタン代わりになってもらう」
「・・・・そういうことか、分かった」
イフリートは姿を消し火の玉をレスクの傍らにおいた
「よし、これで少しは視界もマシになるだろう」
「それでセルシウスはどこにいるか分かるの?」
「さぁな?、だから屋敷の部屋を一つ一つ探す」
「えぇっ」
レスクは屋敷の隅々を散策してセルシウスを探すつもりだった
しかし、そんな計画とは裏腹に向こうから接触してきた
突然レスクの耳に声が聞こえる

「あそぼう、私と遊ぼう」

かすかにそう聞こえた
「な、なに今の?」不安がるリル
「なんの冗談だ、どこにいるセルシウスっ」
大声で叫ぶレスク
すると館が突然明かりを灯した
3つ隣の部屋からピアノの音が鳴り響く

「私はここ、ここだよ」

「・・・・レスク、これって」
「飛んだ茶番だな、行くぞピアノが鳴り響く部屋にっ イフリートもういいぞ」
明かりがついたのでイフリートの火の玉を消すレスク
音がする部屋を目指して走りだす、後にリルが続いた
バァンッ
勢い良く扉を開けるレスク
するとピアノが一人でに動いていた
「セルシウス、姿を見せて俺と契約しろ」
ピアノの音が突然止まった、しかしセルシウスは姿を見せない

「お願い私と遊んでっ」

突然ピアノがダーンッと鳴り響いた
その瞬間窓を突き破ってシルバーファングが入り込んでくる
「ッチ、めんどくせぇ」
グルルル・・・・・
シルバーファングは唸りレスクを睨んでいる
「リル、セルシウスが近くにいるはずだ見つけ出せ、こいつは俺が片付ける」
「そんなこと言われても困るよっ」
ワゥゥゥッ
飛びかかるシルバーファング
レスクは合わせるように飛び膝蹴りを繰り出す
「はぁぁっ」
シルバーファングの顔面にそれは決まった、窓の方に転げるシルバーファング
キャイィィッン
そのまま窓の外へ飛び出して逃げていった

「酷い、私のお友達に傷つけるなんて」
「セルシウス、いいかげんにしろ」
「いいわ、この子たちの相手をして勝てたら 姿を見せてあげる」
すると今度は壁を突き破って、スケルトンとゴーストが沢山出てきた
後退りするリル
「く、臭いっ」
「なんて数だ、ちぃ」
フレイルを振り回すレスク
手当たり次第にスケルトンに攻撃して辺りを散らかす

ダンシングヴァイパー!

スケルトンは次々に粉々になっていくが
しかしゴーストには当たらない
「レスク、ゴーストには物理攻撃は効かないみたいだよ」
「んなことは分かってる、まずは邪魔でうっとうしいスケルトン共を片付けてるんだっ」
するとゴーストが怨念を発し始めた
レスク達の足元に魔法陣が浮き上がる
「魔法かっ!?」
地面から影の刃が突き出した
シャドウエッジの魔法だ、レスクは華麗にそれを避ける
「あぶねぇな」
スケルトンをすべて片付けたレスク、いよいよゴースト達の相手をする
するとリルが身を震え始めた
「耳を塞いでレスクっ」
言われたとおりに耳を押さえるレスク
その瞬間リルが高音の雄叫びを発した、部屋全体に響き渡る虎砲というか狐咆なのか?
ゴースト達が音波でブレはじめた、怯んでいる
「やっぱり音は効くんだ♪」
「何をしたんだ?」
「ディザリングハウル、今のでゴースト達の動きを止めたんだ、やるなら今だよ」
「よし、任せろ」
手を掲げるリスク

ホーリーバーストッ!!

レスクの手から光が発しゴースト達を一瞬で消し去る
光と共に爆発を引き起こし、その部屋はぐちゃぐちゃにになった
壁も吹き飛ばし、外からは吹雪が入り込んでくる
「少々やり過ぎたか、まぁいい今は無人だからな、さて・・・・」
レスクは武器をしまうと辺りを見回した
セルシウスはまだ姿を見せない
「約束だぞ、姿を見せてもらおうか」
するとレスクの前に小さな少女が現れた
「・・・・・。」
「お前がセルシウスか、手間をかけさせるな俺と契約しろ」
「あなたは今何をしたのか分かっているのかしら?」
「お前が仕掛けた魔物を倒したそれだけだ」
「あの子達はお前の両親に仕えていた者達だ」
「なんだって、あのスケルトンとゴースト達が!?」
驚くリル
「それなのに全てを消し去ってくれたな」
「知るか俺には関係ない、そんなことよりどうせならなぜお前がここにいる理由の方が知りたいぜ」
「私は突然契約を切られたのだ、それも不正な契約破棄だ」
「ということは親が正式に契約を破棄したわけではないのか」
「そうだ、そしてその原因は私は知らない」
やはり両親は何者かに消されたということか
セルシウスがこの場所から移動しないのは最後にここで召喚されたから・・・
いやでも契約が切れれば元の場所に移動できるはず
「でも契約が切れたならここから出れただろう」
「私は命令に従ってここにいたのだ、そして先ほど、その命令は達成された」
「まさか・・・」
「そうだレスク、お前がここへ来るまで待ち続けることが お前の両親の最後の命令だ」
「そうだったのか、なら契約を求める俺に応えてくれるよなっ」
「それとこれとは話が別だ、お前にその資格があるのか私とは戦ってもらうよ」
すると少女は急に大きくなっていく
一気に成人女性ぐらいまで成長し、幼い顔つきが見違えるほど冷たくなった
「やっぱりか、そうなるだろうとは思ってたぜ、行くぞ」

レスクは戦闘態勢に入った

続く